CSR/サステナビリティ・ブランディングの信頼の課題

サステナビリティブランディング

サステナビリティブランディング

サステナビリティ推進において、そのビジネス成果の一つとして「ブランディング」を目標に行うこともあります。もちろん、サステナビリティ文脈でのブランディングで成功している先行企業もあるのも事実ですが、多くの企業においては難しい(というか無理に近い)かなとも感じています。

CSR/CSV/ESG/SDGs/サステナビリティ/ソーシャル全般など、どのようなカテゴリでも企業活動である以上、ブランディングからは離れられません。特に非財務系の話は最終成果がブランディング(広義の企業価値向上)とすることも多いくらいです、がしかし…。

現実的には様々な課題があると思いますが、本記事ではいくつか特徴的な課題をまとめたいと思います。

ブランドへの信頼

昨今ブランドが、社会問題に対するコミットメントの意思を示すケースが増えているが、これに対して消費者が懐疑的になっていることを示す結果も出ているという。ハットン氏は「いくつかのブランドでは売上を伸ばすために社会的意義を掲げているものの、行動が伴わないために信頼を失っている」と指摘。さらにこうしたブランドの動きを「(グリーン・ウォッシングをもじり)“トラスト・ウォッシング”である」とし、変革をもたらす行動をしなければならないと訴えた。
8割が「ブランドへの信頼が購買決定要因」と回答 エデルマンが最新調査結果を発表

これは関係者でなくても実感する人が多いと思います。もともとの会社の成り立ちからソーシャルな組織(パタゴニアなど)は、生まれ持った“ブランド”があるわけですが、日本企業の場合は設立の古い老舗企業も多く、ソーシャルベンチャーを除き「“生まれ持ったブランド”という後付けブランディング」がほとんどです。散々、環境負荷も労務問題も起こしておいて、今更社会のためにといわれてもねぇ…なんて会社いくらでもありますから。

で、特に顕著なのはアパレル/ファッション系などしょうか。報道を見るかぎり「サステナビリティ」がバズワードになっています。日本も世界も、です。それは喜ばしいのですが、問題が「本当に実践できているか」ということ。そもそも、特にCSR的なブランディングの話では「従業員がブランドを“実践”できるか」がポイントになります。従業員がブランドを体現できないのに、ステークホルダーがブランドを理解・共感することはできません。「戦略としてのサステナビリティ・ブランディング」よりも「実践としてのサステナビリティ・ブランディング」をしないと社会的インパクトは生まれません。

経済合理性とブランディング

ちなみに残念なお知らせですが、CSRやサステナビリティ分野におけるブランディング施策は、必ずしも経済合理性を伴わないものがあります。

つまり、CSRにおけるブランディングとは「サステナビリティを最優先する経営をします」という宣言と実行により、事業や組織のブランド化が行えるので、極論、主要事業がサステナブルではない場合(必要悪と呼ばれるギャンブル・タバコなど)は、その事業を損切りしなければならないのです。そうなると(実施する企業はないと思いますが)売上的には大ダメージです。ですので、本当の意味でサステナブルなビジネスをしようとする企業は現実にはなく、どこかで折り合いをつけて社会性の高いブランドを徐々に作り上げていくことになります。

ブランドの信念を示すもっともわかりやすい軸は、目先の利益を求めない姿勢を社内外に見せ続けること部分です。つまり、直接の販売促進効果のないCSR推進する中長期施策に投資を続ける、ある種の狂ったように信念を貫く姿勢こそがブランドへの尊敬を得る最短距離なのです。

私が思うブランディングとは「何をしないのか」のコミットメント(約束)とオペレーション(実践)の総和です。「環境負荷の高いビジネスはやらない。やっているのであれば中長期で廃止する。」と言える企業に「環境配慮ができる企業というブランド」が付与されるというか。情報開示のテクニックでなんとかしようとも、見透かされれる程度に一般消費者は賢いです。しかし、商品・サービスが「(社会に対して)事実としていいこと」と「いいと知覚認識されていること」には大きな隔たりがあるため、「グリーンウォッシュ」という表面上だけの取り組みがなくならないのでしょう。

とはいえ、ブランディングそのものの価値として、市場競争力を高められることもあります。あらゆるモノやサービスがあふれる中、自社のプロダクトを選んでもらうためには「他より優れた価値(優位性)」もしくは「他とは異なる価値(差異性)」を認識してもらう必要があります。この対応する方法論として、エデルマンの調査にもあったように、社会性訴求の取り組み(主にブランディング)が行われるようになった、と。これは広告/マーケティング界隈の方が詳しいことと思います。

ブランドの戦略

アリババ創業者のジャック・マー氏は引退(2019年)のスピーチで「21世紀は“善良であること”が最大の力になる」「よい会社は善良であるかどうかで決まる」と語っています。これは私も同じ思いです。企業が「善良である」ことは「信頼される企業」になる第一歩であり競争優位につながります。有名企業の不祥事が毎月のようにある昨今、善良であることを続けることがどれだけ大変なことか。

ですので、善良であり続けるのは難しいため継続して実践できる企業は「善良であること」自体がブランドになるということ。過去何年も、不祥事等を起こしていないブランドは信頼にたるものであると。これこそがCSR/サステナビリティ要素を取り入れたブランディングです。その善良であることの具体的な活動がCSR/サステナビリティ推進であると。

そもそも、個性やオリジナリティは努力で生み出せるものではありません。本来的にすでに備わっているものだからです。しかし、努力によって個性をさらに際立たせることはできます。これは、企業でいえばブランディングというテクニックになります。当然、これらのブランディングの成果は対外的なステークホルダーだけではなく、社内の従業員へのインターナルブランディングとしての効果も期待出きます。

課題は「善良である」ための組織能力はどうやって向上させるのか、でしょうか。この答えは明確で企業文化を洗練させることです。模倣困難性は「商品・サービス < 文化」の順に難しくなります。独自性のある企業文化があれば、商品・サービスも独自性のあるものになる可能性は非常に高い。そして、何年もかけて作り上げた企業文化は、他者は当然真似することはできない、と。

ステークホルダー視点のブランド

CSRは、組織のミッションやパーパスなどを軸として、バラバラになりがちな部品達をひとつに束ねる仕事でもあります。能力の高いCSR担当者は例外なく関連部門と粘り強く交渉して企業としてのブランド、別の言い方では“らしさ”とでもいいますか、ここにこだわって仕事してます。根回しは他の部門ががやるものと思っている人はまだまだビギナーです。財務指標で行動をしないCSR部門だからできる社内の役回りがあるのです。

社内は特にですが、大きな話をし過ぎると他人事になるし身近な話ばかりだとつまらないと避けられがちです。ここらが、どうしても大きな話になりがちなCSRにある課題です。バランスが難しいです。最終的には、企業がどんなCSR活動をしてもいいけど、「そのブランドは組織と社会/ステークホルダーにポジティブな変化をもたらすものなのか」でブランド価値が決まります。ブランディングは顧客だけが対象になるわけではありません。

CSRはあくまでも、社会やステークホルダーが主語になるものです。「社会のサステナビリティに企業としてどのように貢献できるのか」がCSR活動のビジネス成果となります。CSRでもサステナビリティでもいいから、そのブランドがステークホルダーにどんな価値提供をできるのかを示してください。逆に価値提供できていないのであれば、そのブランドは失敗であり、すぐに方向性を修正しなければなりません。

CSRやサステナビリティ分野でのブランディングの話は、広告会社やブランディング支援企業がいうものとは、やや趣が異なる場合があります。表現が難しいですが、この分野でのブランドとは「どこまで経済合理性を捨てられるか」で決まるというか、異常なまでの信念が商品・サービスになるというか、「損して得とれ」を地でいく考え方なのかもと、最近は思っています。

これが突き抜けると「Don’t Buy This Jacket(このジャケットは買わないで)」という広告をニューヨークタイムズ紙に出したパタゴニアのように、強力なブランドを築けます。自社の損失がステークホルダーの利益になることもあります。当然、ステークホルダーは、自分の利益になるブランドを贔屓します。目先の利益ではなく、中長期の視点で自社の利益を考えられるか。これはなかなかできるものではありません。だからできる企業からブランドになっていくのかと。

ブランドって目的意識がありますよね。「そのブランドが人生/生活をよくしてくれると消費者が感じる度合い」というか。だから、企業のパーパス(存在意義・存在目的)と個人の意思が合致すると強いと。

まとめ

CSR/サステナビリティとブランディングの話は、書籍にもなっているし、情報メディアのタイトルになってもいますが、これを実践するのは相当ハードルが高いです。覚悟もないのに実施すべきではない、とすら言えるでしょう。だから継続している企業には、他の企業は追いつけません。

ブランドがCSRに、CSRがブランドに、何かしらの価値をつけられれば、それが独自性となり、経済合理性のある取り組みとなるでしょう。CSR活動の主語はあくまでも「社会/ステークホルダー」です。決して自社ではありません。ここさえ勘違いしなければ、時間がかかろうともブランドを作り上げることができるでしょう。未来を変えるには「緊急ではないが重要なこと」を行うしかないのです。

私は以前からCSRは「信頼される企業になるため」に行うべきと言っています。ここでいう信頼を作り上げるものこそがブランディングの役割でもあります。以下の記事でも、CSR分野のブランディングについてまとめています。参考にしてみてください。

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