CSR/サステナビリティが社内浸透しない5つの理由

CSRと社内浸透

CSR/サステナビリティ領域でよく上がる課題は「社内浸透」です。高いCSR評価を獲得している先進企業でも、従業員の認知はかなり低いという企業も多いです。(社名は言えませんが表向きの評価が高くても社内的には全然ダメな所が多いです)

あと、今でいえばSDGsの社内浸透/インターナルコミュニケーションも活発ですね。社内のCSR教育も活発な企業は増えており、私でいえば、上場企業で、会長・社長を含めた役員会等でCSRの外部講師をさせていただくことが年数件あります。経営層も学ぼうとしている企業が増えているのは、支援側を含めて色々な方とお話して実感しています。

とはいえ、10年前から変わらないCSRの大きな課題である社内浸透。今考えている組織運営論を含めて、課題と解決策のヒントをまとめます。

1、従業員との関係性

そもそも、多くのCSRは、従業員自身のメリットがありません。だから進んで自ら学ぼうとしないし、推進しようともしない。上司も自分の成果にもならないし、無理して進めようともしない。

CSRを推進することが従業員のやりがいや喜びにつながっているのか、従業員が人の役に立っているという生きがいを生み出せているのか、なんて視点で施策を考えればいいのに、CSR推進部門の独りよがりにより、多くの企業では社内浸透していきません。

もっといえば、組織として企業は従業員に信頼されていますでしょうか。従業員に信頼してほしければそうなるよう働きかける必要があります。従業員に“さえ”信頼してもらえない会社が、その他のステークホルダーに信頼してもらえるとは思えません。この場合の信頼獲得はそこまで難しい話ではありません。「自分の会社は良い会社だ」と思ってもらえるよう誠実な事業活動を日々続ければいいのです。

CSRのオペレーションレベルでいえば「組織変革スキル」が重要です。組織を変えられない人間にもっと広大な社会を変える(良くする)ことなんてできません。CSRを本気で進めるにはまず社内の体制を変えなければいけません。具体的にどうするのかは、以下でまとめます。

ちなみに、現在進行形でCSR経営の調査研究していて来年に書籍を出版予定なのですが、この従業員主体のCSRは、今後のCSRの最重要テーマになります。かなり面白いフレームワークもできつつあるので、楽しみにしていてください。

2、社内浸透の課題

もう一度、社内浸透における課題を整理します。社内浸透における従業員サイドの課題(行動阻害要因)です。

1、行動することについて腹落ちしていない
2、行動内容が具体的でない
3、優先順位付けと行動時間の確保ができていない
4、面倒なので現状維持を選んでいる

この10年の経験でいうと、だいたい上記のような話でまとめられます。その改善策は以下のとおりです。

1、問題提起と必要性の説明
2、企業理念とCSR活動の整合性の確認
3、取り組みのメリットとデメリットの提示

社内浸透をしたいのであればその土壌作りにリソースを使わなければなりません。ここをさぼり、すごく当たり前なことをさっきから書いているのですが、この当たり前の前提や方法を飛ばしてCSRそのものを無理やり従業員にやらせようとするので、社内浸透しないのです。

CSR関係の社内表彰というか、社内でのアワードやイベントをする会社もありますが、これらも条件が整えば、相当意義のある社内浸透になります。日本企業でも成果が出始めています。ヒントは「企業理念の浸透」です。

3、組織の運営方針

CSRとは合理的なプロセスだけではなく“力技”といいますか社内のキーパーソンを地道に説得するプロセスも重要です。社外のステークホルダーより社内のステークホルダーのほうが影響力が大きい場合が多いからです。社長などはまさにキーパーソンですよね。社長が熱心に進めれば、否応なしに形の上では社内浸透しますし。

また社内浸透には、社内を説得できるだけのCSR活動の大義名分が必要になります。なぜならCSR活動は企業のすべてを変化させうる組織および事業改革であり、従業員が実践の必要性を実感できなければ部門の利害を超えて活動することはできません。例えば、今でこそIR部門はESG投資の浸透でCSR活動のサポートをしてくれると思いますが、5年前では、CSR推進しても株価が上がるわけないし、我々が行う意味はない、という所も多かったです。

ビジネスルールだけグローバルスタンダードのCSRに対応させて日々の具体的な事業活動は何も変えない。それでは何も変わりませんよ。結局、任された仕事すれば問題ないとなってしまいます。ルールの押し付けは思考停止状態を生み、CSRの形骸化を進めてしまう可能性が高いです。

グローバルルールの何が問題かというと、ローカルのために作られたルールではなく方向性がブレることがある点です。ある程度グローバルスタンダードに自社を合わせていくのはとても大切なことですが、それがすべてとなると必ず当てはまらないことが噴出し問題となります。

コンプライアンスやコーポレートガバナンスに力を入れている企業でも大型不祥事が起こるのと同じ仕組みともいえます。CSRという「グローバルスタンダード」と「現場のルール」というダブルスタンダードが存在することになれば、皆「現場のルール」を基準とするでしょう。それではCSRは組織に浸透しません。

多くの従業員は、他のステークホルダーの利益よりも自身の利益を優先しています。なぜなら他人のためにがんばっても評価されないし、逆に上司に怒られるくらいです。まず自分のすべき仕事をしろと。従業員のインセンティブ設計は本当に重要なのです。

4、主導する組織体制

ではCSRの社内浸透にはどの組織が担当すべきなのでしょうか。私は必ずしもCSR関連部門でなくても良いと思っています。CSR部門があると、CSR推進はCSR部門が考え実行することになり、他の部署の連携が取りにくいという課題があるからです。

2010年代に入り、日本企業でもCSR部門が増えましたが、最近の傾向として「サステナビリティ推進部」「ESG推進部」という名称の部門が増えてきています。一時期トレンドになるのかと思われた「CSV推進部」「SDGs推進部」という名称は、ごく一部の企業事例のみとなっています。

CSRはマネジメントにおける概念であり業務カテゴリではありません。組織や成果のあり方を考えるであろう「サステナビリティ推進部」や、IRも含めてESG全般を進める「ESG推進部」は、部署と業務が連動していて目的が明確といえば明確ではあります。(ただし前提知識のない人には難解であることは変わりない)

で、私がコミュニケーションさせていただく担当者の部門でいえば、圧倒的に増えているのが「経営企画部門」です。当然、専任がいないために経営企画部門で一旦CSR活動を担当しているということもあるでしょう。他には「広報/コーポレートコミュニケーション」が次に多いでしょうか。中小・中堅企業を含めれば「委員会形式」も多いです。

どのような組織でCSRの社内浸透をしてもいいですが、できる限りトップに近くて予算もある程度動かせる部門が主導するのが理想です。そう考えると、社長室とか経営企画とかそういう部門になるのでしょうか。

5、意思決定プロセス

現場の意思決定の仕組みにも問題があります。これは一般論で、日本企業特有の課題の1つとも言われますが、ひとつひとつの施策に対して複数人の上司・他部門担当者のハンコをもらう稟議式の決定方法です。現場担当者に意思決定の権限ないため(別に予算だけの話ではなく)PDCAが上司の関与なしにまわらないのです。

そして、ここの問題が「現場を知らない“上の人”が意思決定をしている」点です。これが大変なのです。身も蓋もないですが、施策なんてやってみないと最終的にどうなるかわかりません。できる限り失敗しないようにしますが、ほとんどの施策は多かれ少なかれ失敗するものです。

そのため「成功がほぼ約束されたプロジェクト」などCSRにはほぼないため、多くの企業ではCSRのような短期では業績に極めて貢献しにくいプロジェクトが進まないのです。上司から「それ今期でどれくらい成果でるの?」「実施のメリットと利益貢献はどれくらい?」「それ予算かかるの?」「CSRってなんでやらないといけないんだっけ?」みたいな質問があるのは、気持ちとしては理解できるのですが、もう答えるのが堪えます。

ちなみに、素人が集まったCSR関連テーマのワークショップやディスカッションからはほぼ何も産まれません。インプットとアウトプットはどちらもスキルのボトルネックに成り得るけど、大体アウトプットの方がボトルネックです。そこに勉強してインプット増やしてもボトルネックは解消しない。社内浸透は知識のインプットがある程度すすんだら、従業員に何かのアウトプットをしてもらう仕組みを作ることが重要。意見を交わすのではなく、具体的な活動をしてもらうのです。

まとめ

おおまかに、CSRの社内浸透における課題を5つにまとめました。あなたが読んモヤモヤしているならば、私が明確に答えを書いてないからでしょう。お仕事や勉強会でご一緒することがあればお伝えしていきます。

人事部門には対応できない組織とCSRの課題は本当にたくさんあります。ただ言えるのは、組織体系とCSR活動は深く結びついており、組織が変わればCSRも変わりますし、CSRが浸透すれば組織の課題も変わるし解決できる課題もでてくる、ということです。

CSRをどうまわすか(戦略構築→PDCA実践→成果創出)に最近は注目が集まりがちですが、CSR推進の主役である現場の従業員へCSRをどのように浸透させるかを、本来は先に行わなければなりません。多くの企業はこの順番が逆なので、社外評価と現場の実践レベルの乖離が起きているわけです。

CSRの社内浸透は、何十年も前からあるCSRの大きな課題です。社内浸透の取り組みの方法論がケーススタディで語られるのみで、結果として従業員の9割にCSRが浸透しました、なんて話は聞いたことがないし事実上不可能だと思います。

先行事例に踊らされず、課題を明確にし、それこそ10年先を見据えて、地道に活動していきましょう。

関連記事
CSRが社内浸透しない根本的課題と対処法
CSR/ESG担当者に必要なノウハウとスキル
CSR活動におけるKGI/KPIはなぜ決まらないのか


csr

このエントリーをはてなブックマークに追加