CSR/ESG報告におけるストーリーテリングの4つのポイント

CSRにおけるストーリーテリング

昨今、改めて「ストーリーテリング」に注目が集まっています。

何年も前から色々な人がCSRカテゴリのレポーティングでもストーリーテリングが重要と言っていました。一時期、CSR報告書の制作会社の方などを中心に議論が盛り上がったように思いますが、身内感といいますが、ごくごく一部で導入されただけで、ほとんどでは検討すらされていないようです。CSR報告書の制作会社側から企業への提案がそもそも少ないのも要因の一つかもしれません。

私がCSRにおけるストーリーテリングのポイントとしては「ゴールからスタートする」という点であると考えています。SDGsでいえば「アウトサイドイン」ですね。簡単にいえば、ゴールを決めて現状からの道のりを考える方法です。CSRにとって「ゴール」はゴールでもありスタートでもあるのです。

このあたりを含めて、本記事ではストーリーテリングについて具体的な手法についてまとめます。ちなみに本記事でいうストーリーテリングとは、CSR・CSV・ESG・サステナビリティなどの領域におけるストーリーテリングです。マーケティング領域のものとは趣旨がやや異なるので注意してください。

1、ストーリーテリングとは

ストーリーテリングとは、伝えたいコンセプトや事実をストーリー(物語、読み物)として伝えることで、聞き手に内容を強く印象づける手法のことを指します。あなたも、昔話、都市伝説、語呂合わせ、など、今でも覚えているものがあると思います。図形や写真のように物事をイメージ化できると、読者により強い印象を与えられます。

最近では、国際的なレポーティング・ガイドラインやイニシアティブの枠組みへの対応が求められる一方、それらを意識しすぎてしまい企業の独自性が出せなくなってしまった企業が増えています。こういう時だからこそ、自社のサステナビリティ活動の意義や効果をステークホルダーに伝え共感を得るために、読み手の関心を惹きつけるストーリーテリングの手法が有効なのです。

伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる印象的な体験談やエピソードなどの物語を引用することによって、ステークホルダーに強く印象付けエンゲージメントを高めようという作戦です。

なぜ体験談が必要なのか。それはステークホルダーに自社をどのように語ってもらいたいか、が深く関わるからです。自己紹介は誰でもできますが、たとえば、自分のことを友人から別の友人に“良く紹介してもらう”のは難しいです。自分で自分を褒め称えるより、友人に褒め称えてもらうほうが信頼性は高くなる(口コミ効果)のは誰もが感覚的にわかることでしょう。しかしCSRの情報開示についてはほとんどの企業がこの法則を実践できていないのです。

そのため報告書などでは活動紹介ではなく読み物というか、読み手視点でCSRを理解しやすいストーリーに落とし込まれているかが、良い報告書のひとつの評価ポイントになるのです。この時に大事なのが、自らの言葉で“社会および経済価値の観点から読み応えのあるオリジナルなストーリー”として語っていくことです。

ストーリーは他の情報による代替は不可能であり、どの存在価値は上限なしの“言い値”まで高められる。つまり比較して優位性を示すというよりは、絶対的な価値を持つ、ともいえるかもしれません。

2、注力ポイント

ではストーリーテリングにおけるテクニック的な側面を5つのポイントにまとめます。

(1)論理と感情
論理的な文章(定量的)と情熱的な文章(定性的)をバランスよく混ぜる。特にビジョンを語る「トップメッセージ」では意識したいポイントです。

(2)過去・現在・未来
時間軸をまとめることでコンテクストの理解が深まります。CSR/ESG評価機関などは、成長性や戦略性をみたいので、時間軸の中の実績と目標はチェックすることが多いみたいです。これを表にするのではなくコンテンツ化しよう、と。

(3)比較軸
現状と何かを比較することで理解がしやすくなります。一番わかりやすいのが「目標と現状の比較」です。SDGsのような目指すべきゴールがあって、今はどこまでできているからこういう手法でゴールを目指します、と。

(4)例えてイメージを強化する
例え話、名言の引用、昔話、寓話、おとぎ話、などの手法を利用しましょう。物語があれば根拠がほとんどなくでも人は信じてしまいます(ポジティブな側面を強調しやすい)。人が素直に企業の主張を受け入れるための「例え話」は情報伝達において非常に有効です。

(5)主語を相手にする
ストーリーテリングには主語となる“主人公”がいます。自社ではなく主人公(CSRではステークホルダー)が主役になる書き方が手法の一つです。

3、フィクション的発想

ストーリーテリングは、フィクションとリアルの境界線をなるべく曖昧に感じさせるようなコンテンツがいいコンテンツと言えるのではないかと思うのです。

リアルなドラマであれファンタジーの世界であれ、共感を得るには「実際に存在していそう」という感覚を与える必要があります。当然開示において“嘘”はいけませんが、創業者の創業物語など、少し誇張するくらいのほうが良いイメージを提供できます。

そしてCSR関連レポートで語られるストーリーは、そのほとんどが「企業側のストーリー」(企業が主語)についてのものです。どれだけ襟を正して、高い技術で、素晴らしいものを作ったか、なんて話になります。でもステークホルダー側からすると「だから何?」となってしまう可能性があります。だからこそ「ステークホルダー側のストーリー」のストーリー展開を意識しないとエンゲージメントには届かないのです。企業が語る“独り言”ではなく「私たちにとってあなた(企業)はどんな存在か」という視点です。

その手法として具体的な事例としては「ウェブマガジン(オウンドメディア)」が挙げられます。通常のCSR活動の活動報告形式のレポーティングではなく、読み物としての側面を強く出して、とにかく、まず読んでもらえる、興味を持ってもえる記事作りをします。企業広告としての記事広告を作るイメージです。コンテンツの流れとしては「ビジョン・提供価値 → そこにむかうためのストーリー → 実現する商品・サービス」というイメージです。

4、オリジナリティ

情報・テクノロジー・デザインはすぐにコピーされてしまう時代です。また、多くの業界ではビジネスモデルが飽和し、他社との差別化は困難となっています。そんな時代であってもストーリー性だけはオリジナルな存在価値が揺るがない“最後の企業価値”であります。沿革・社風がまったく同じ企業など世の中に一つたりとも存在しませんので、そこはコピーできないのです。

なんで私が講演などでいつも「ストーリーが大事」というかは上記の通りです。どの業界でもいいですけど、今の時代は業界トップの商品と2番目の商品にテクニカルな大差ないわけです(当事者は差異を主張するだろうが、第三者には差が“わからない”ことが多い)。

ですのでストーリーテリングをすることで、同業他社とは違うオリジナリティのあるレポーティングができるようになるのです。

まとめ

どうもストーリーテリングというと、マーケティング・広告・コミュニケーションなどの領域の話で終始してしまいがちです。

しかし、今後のCSR/サステナビリティに重要なのは「オリジナリティのあるストーリーが生み出す社会的・経済的価値」です。これを人によっては「価値創造プロセス」や「CSRブランディング」といったりします。価値創造プロセスってまさにストーリーテリングに近いフレームワークなんですよ。

ですので、今後の情報開示は、よりステークホルダーに寄った視点が必要になります。ただでさえ、CSR/サステナビリティ領域は前提知識がかなり必要なので、「CSRというワードを使わずしてCSRを説明する」というようなテクニックが必要になるわけです。

あと私だけが重要と言っているだけでなく、評価の高い統合報告書などでは“読み物”的なコンテンツが増えており、数字の羅列や活動紹介ではない企業の社会的側面を、読者に提供できている企業の評価が相対的に高くなっている事実もあります。文章のテクニックとしてのストーリーテリングではなく、本質的な「オリジナリティのあるストーリー」を戦略策定および情報開示に活かせる企業から、ステークホルダーとのエンゲージメントも進むでしょう。

本記事自体がストーリーテリングできているかわかりませんが(自分のことは棚に上げてますが)、重要なポイントなので頭の片隅においておきましょう。

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