CSRが社内浸透しない根本的課題と対処法

CSRが社内浸透しない

CSRコミュニケーションやステークホルダー・エンゲージメントにおいて、よく話題に上がる課題の一つで「社内浸透」があります。

従業員が数人の会社でも数万人の会社でも、規模の差こそあれ同じ課題を持っています。なぜCSRの理念や活動は社内で浸透しにくいのか。

様々な要因がありますが、根本的には「CSR活動に合理性を感じないから」でしょう。では、なぜ合理性を感じることができないのでしょうか。

完全に持論ではありますが、CSRにおける社内浸透(インターナル・コミュニケーション)についてまとめます。

3つの課題

1、CSRの目的および目標が曖昧
目的・目標がない、もしくは非常に曖昧な場合は、実行の意味も薄れ取り組みの優先順位が下がる。従業員自身のインセンティブを喚起できない。曖昧な指標は管理(マネジメント)することが非常に難しい。

2、情報共有ができていない
企業として様々なCSR関連ツールが存在するものの、従業員ひとりひとりの業務実態とCSRの関係性を明示しておらず、当事者意識が育たないため共通言語として浸透していかない。

3、動機がない
CSRを広げる土壌となる従業員ひとりひとり(社長含む)に対して、CSRが日々の活動のインセンティブならず逆に業務の負荷となることも多く「なぜ私がCSRをしなければならないのか」を理解できないことがある。半強制となるCSR関連イベントの参加や、情報ツールの配布は「やらされ感」で行われており、浸透を逆に妨げる(拒否反応を生む)可能性もある。

対策

会社組織とは、無作為に集められた“赤の他人”の集まりではなく、同じ目標・目的を共有し企業理念の実践をするための仲間であり共同体です。CSRだろうがなんだろうがこの仕組みが変わることはありません。

世の中の企業には、CSRミッションに共感し入社する人もいるだろうけど、ほとんどの場合はそうではないため、後からCSRではこうだから理解してね!と言われても、自分に実施するメリットがなく強制もされないので、特に関与しないというひとが大半でしょう。

CSRの社内浸透で重要なのはまず「土壌」を整えることです。組織にミッション(目的)やモチベーション(意欲)の源泉がない場合、新しい仕組み(制度やテクノロジーなど)を導入したところで、手段が目的化するだけであり何の意味もありません。「CSRが社内に浸透しません」と担当者の方が感じる場合、その課題の背景にはこのような文脈があることがほとんどです。

極端な話、従業員満足がただでさえ低い組織に、追加でボランティア活動による休日出勤を強制したところで、ソーシャルマインドは生まれません。逆に従業員満足度がより低下する可能性のほうが高いでしょう。土壌をある程度整えてから、例えばワークライフバランス等の新しい制度を導入するのが理想です。

では土壌はどうやったら変わるのか。これは簡単です。経営トップが“本気”でメッセージを従業員に送り続ければいいのです。「残業ゼロをがんばって目指しましょう」ではなく「1年後までに“残業時間を今の半分以下にする”を達成する。そのための投資も積極的に行う。」などです。

「今年は売上を落としてでも制度の浸透を最優先する」くらいの強いメッセージが必要です。実際に労働環境が劣悪であるとメディア報道等で世間一般の方の認知もある大手企業は、仕事を断ってでも残業改善を進める企業もいくつもあります。上場企業であっても外部から叩かれて初めてCSRに目がいくということも多いです。

CSR施策はボトムアップが重要という方もいると思いますが、ボトムアップだけでは組織の土壌を変えることはできません。ボトムアップがきっかけの場合はあるかもしれませんが、最終的にトップが動かなければなりません。

成功のヒント

オーナーシップ

社内浸透で成功していると思われる企業には共通点があります。サンプル数が少ないのですべてはいいませんが、これらの傾向からわかるのは「誰かがリーダーシップを発揮し社内浸透を進めている」ことです。

リーダーシップを発揮するのは、社長かもしれないし、CSR担当者かもしれないし、まったく関係ない部門の方かもしれません。心の底から本気で社内にCSRを広げたいと思っている熱意が仕組み・土壌を変えていくのです。

社内浸透には「オーナーシップ(当事者意識)」が重要です。人間の基本的な行動心理は非常に簡単で「メリットがあればやる」ということです。生理現象などを含めて人間は感情的な動物でもあり、必ずしも論理的ではない判断もしますが、実際のメリットはなくても“自分がメリットがあると感じる”だけでも動くことが証明されています。

モチベーション

CSR活動の実施メリットがあればやると前述しましたが、まさに「モチベーション」の設計も重要なポイントの一つといえるでしょう。

例えば、CSR活動が従業員の「出世」と「給料」につながっているとすれば多くの人はやりますよね?また、やって楽しいCSR活動もモチベーションあがりますよね。

従業員のモチベーションを上げたければ、その従業員が“情熱を持てるもの”に支援をする必要があります。こちらの活動に興味をもってもらいたいなら、まず組織が従業員にメリットを提示しなければなりません。

CSR活動を社員主軸で行いたいのであれば、従業員にメリットがある前提でなけれならない。会社サイドのメリットを従業員に押し付けてはならないということです。

このあたりの原理原則がわかっているようでわかっていない方が非常に多いです。CSRの社内浸透の話になると「情報ツール」の話題になりがちですが、それはただの手段の話であり極論どうでもいいことです。顕在化した課題に対処療法をするだけではなく、根本的な原因を取り除かなければいつまでも課題は解決されません。

ちなみに、インターナルコミュニケーションでよく使われる「イントラネット」ですが、工場や店舗の勤務社員はみんなが見られるわけではないということも多いようです。こういう時に冊子版のCSR報告書が役に立つということを耳にするようになりました。社内への情報は「言い過ぎてしまう」ことが多いので、ある程度情報を絞らないと知ってほしい社内の情報が伝わらないこともあるので注意しましょう。

まとめ

CSRの社内浸透は、CSR関連部門だけで完結できるものではありません。人事・総務・広報などの部門とどこまで連携できるかも大きなポイントです。

まさにステークホルダー・エンゲージメントの一つのポイントはこの「ステークホルダーに当事者意識を感じてもらう」ことなのだと最近気づきました。

CSRの支援をさせていただく立場として強く感じるのは、CSR担当者の壁は社外よりも社内に感じている場合が多いことです。CSRだけでなくビジネスは現場がすべてです。

実は、この「現場感のあるCSR」について書籍を執筆中でして、今後、書籍原稿ではボツのネタなどをこのブログに掲載していこうと思います。

CSRの社内浸透は、従業員を対象としたステークホルダー・エンゲージメントです。2〜3年くらいの時間をみて、今から積極的な施策を企画してみてください。

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