CSRのあり方

私は今までも「CSRは経営そのもの」とか「本業でのCSR強化を」という趣旨の記事を書いてきました。

しかし、それは理想論であり、しかもCSR担当者の業務範囲外のことも多く、その実現はかなりの難易度でした。そもそも多くのCSR活動は、その企業のミッション/ビジョン/バリューから始まった内発的なものではなく、社会やステークホルダーからのプレッシャーで始まるものにすぎません。要は“後付け”なのです。

では、CSR評価が高い企業の仕組みはどうなっているのか。千差万別だと思いますが、大きく2つに分けられると思っていて、「社長がCSRに理解がありトップダウンでもCSR推進が行われている」と「社長がCSRをよく理解していないが、現場に権限委譲をしていてボトムアップ活動が進んでいる」があります。CSR評価の高い企業には優秀なスタッフがいるものです。

サンプル数が少ないのですべてとはいいませんが、これらの傾向からわかるのは、「誰かがリーダーシップを発揮してCSRを進めている」ことです。社長メッセージやトップメッセージという開示項目だけを、ステークホルダーは鵜呑みにしてはいけません。リーダーシップを見極めたいです。

さて、本記事では、いくつかの視点から「CSR活動における社長の役割/ポジション」について考えをまとめます。

CSRのリテラシー

では社長がCSRのリテラシーを高めてリーダーシップをもって指揮すればいいじゃん、となりますがそんな簡単な課題ではありません。

大手企業・上場企業の社長(もしくは会長)は基本的に忙しい方ばかりです。「定期的なCSRのお勉強」をする時間はないでしょう。また、CSR部門上がりの社長って多分日本にいないと思うので、どこのトップもリテラシーレベルでいえばそんなにかわらないかもしれません。

「リテラシーがない」ことが恐ろしいのは、リテラシーが無い人は“無いことに気付く術がない”ということでもあります。いわば裸の王様です。

CSR/ESGの「リスクと機会」の両側面を知っている企業担当者は当然対応を進めますが、経営層にグローバルレベルのビジネスリテラシーがないことも多く、その重要性に気付かない(知らない)ということになります。今更ESG対応が急務って言っているところどうなの。何年も前からESGは大きな課題だって言われてたのに。

現実的にCSR活動を進めるには、CSRの知識より“社内営業力”のうほうが重要だとも思います。CSR活動の根本的な課題って“社外の壁”より“社内の壁”であることのほうが多いですから。このあたりも現場レベルのリテラシーになるのかもしれません。

社長の視点

CSRなんかしなくてもいい。口には出さないけどそう思っている会社の代表は多いです。上場企業でさえ1,000社以上がCSRに対応していないか、少なくともまったく関連情報が開示されていません。

これって「天動説と地動説」みたいです。CSRを理解していない経営者は「社会」と「企業」をこのように考えているのでしょう。

社会は自社(企業)のまわりを動いているにすぎない。追求すべきは自社のメリットである。

と。そのため社会課題に対してはあまり関心もたない。自社とは「関係のないこと」だからです。しかし実際は、社会全体は当然ながら社会を中心にし、企業などがそのまわりを動いていることを知っています。社会が破綻すると企業は生きていけませんが、特定企業が破綻しても社会は存続することができます。

この「天が動いているのか、それとも、地面が動いているのか」は、大きな視点の差があります。まさにコペルニクス的発想の転換です。これができる経営者は当然、社会と企業の正しい関係性を理解し、適切な関係性を築こうとします。関係性の摩擦によっておこる余計なリスクは避けたいですから。

どんなに実行戦略が正しくても、実行されなければ失敗に終わります。トップが「自分が正しいと思うことを、ステークホルダーも正しいと思うとは限らない」という事実をきちんと理解する必要があります。相手(ステークホルダー)から見ればどうなのか、と常に視点をズラしてみることです。そのためにCSRというステークホルダー視点の概念が存在すると考えるべきでしょう。

まとめ

CSRって、結局誰のためにやっているかというと「自分たちのため」だと思います。

ステークホルダーとのエンゲージメントや社会課題解決は、最終的に社会ためでもあり、その社会で存在意義を保つため(自分たちの保身のため)でもあるのです。

このあたりのロジックは『「いままでのCSR」と「これからのCSR」の違い』という記事で紹介しているので確認してみてください。CSR担当者は社長を“裸の王様”にしてはいけません。上場企業の社長は早く自分が“裸の王様”であることに気付きましょう。

ということでオチはありませんが今回はこのへんで。

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