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日本企業におけるCSR活動の課題・問題点の3事例

CSRの課題

SDGs、GRIスタンダード、ESG投資の登場と盛り上がりにより、日本でもCSR活動そのものがより注目されるようになりました。

しかし、当然、社会的な概念の浸透と、企業のCSR活動実務には大きな“壁”が存在します。CSR活動なんてそんな簡単に進まないんです。

というわけで本記事では、私がこの10年近くのCSR支援の中で感じてきた「CSR活動の課題・問題点」についてまとめます。

今回挙げる課題は、主に大企業のものですが、本質的な課題なので中小企業の現状にも当てまります。CSRの今後の特徴もだいたいご理解いただけると思います。

初期フェーズの3大課題

1、経営層の理解が得られない(なんとなくの指示はあっても理解はない)
2、従業員の理解が得られない(社内の温度差)
3、効果測定ができない(そもそも明確なKGI/KPIがない)

これらはCSR活動が「どんな価値を生み出しているのか」が見えていないから起きている問題とも言えますので、根本的な解決方法としては「CSR活動による各ステークホルダーへの価値創出を見える化する」という根本原因への対応があります。

このレベルの進捗度から脱却するには「CSR報告書を作る」という方法があります。本来は逆なのですが、報告書を作る過程で様々なCSRの重要性に気付き、次年度から「報告書のコンテンツをつくるために、CSR活動をする」ということが起きます。

CSR報告書を作っていてもこのフェーズという企業も実は多いのですが、そういう時は社内にノウハウやリソースがないことを認め、支援(コンサルティングなど)を受けるのも検討すべきでしょう。

参考記事
SDGsへの企業対応事例増加による、CSRの3つの課題
CSR担当者が“必ず”悩んでいる3つの課題

効果測定の3つの課題

1、評価項目と経営指標との関係性が明確ではない

たとえば「CO2排出10%減」を達成すると、どの経営指標にどんなポジティブな影響があるのか考えられていない。コスト削減に貢献するなら、そのコスト削減によってどの経営指標に貢献できるのかを明記しなければなりません。

2、定量評価だけで満足している

現代社会において、CSR活動の効果測定のフレームワークも広がっており、理論上では測定できない事象はありません。しかし、そこで得た指標が、社会的および経済的インパクトに貢献しえない場合もあります。効果測定に集中しすぎて、社会的背景などの調査・分析がおろそかになることが原因とも言われています。何でも測ればいいってものではありません。

3、インパクト評価の範囲が不明瞭である

CSR活動がどのような社会的価値および経済的価値を生み出したかは、価値創出の瞬間を計測すればわかります。しかしCSR活動は軸(時間・範囲)がとても広く、明確に測定できないことがあります。測定には「バタフライエフェクト」ではなく「物理的なセグメント」の評価も重要となります。

CSR活動の定量評価の意義

さきほど「効果測定」が課題としましたが、この課題はかなり課題の根が深いので、もう少し掘り下げてまとめました。とにかくやっかいな効果測定(社会的インパクト評価)。特にやっかいなのは“社会的な文脈”が成果に大きく影響しうるという点です。CSR活動は自社だけで完結できないだけに、なかなかネット広告のような測定はできません。

またCSR活動における成果を測定(定量評価)できたとしても、本当にその数字が社会の役に立っているかを証明するエビデンスが必要です。そしてのその成果が経営のKGI(ゴール)指標と連動しているかも問題です。経営戦略からはずれたCSR活動はまったく意味がありません。このコンテクスト、必然性、経営戦略の整合性、などなど、多くの視点が効果測定には必要となりますので、第三者の評価視点が必要となるわけです。

参考記事
CSRの目標管理(KGI/KPI)の考え方について
CSRの評価を可視化する「社会的インパクト評価」

大手企業の3大課題

1、方針が策定されていてもリソース(人・予算)がない
2、他部門(現場)との優先順位の差がある
3、基本的な対応済みだが経営戦略に反映していない

時価総額上位500社程度の大手企業となると、CSR元年と言われた2000年代前半ころから10年以上かけて、一通りのCSR活動をし終わっています。

それでも、社内外からのプレッシャーによりCSR/ESG評価機関の調査に答えてる必要があるし、一段上の評価をされたいし、でも上記の3つの課題は数年がかりでの対応になりそうだし、でも成果を求められるし、とはいえそんなにリソースはないし…。という担当者の方の声は非常に多いです。

ESG投資の流れもあり、CSRの情報開示へのプレッシャーは今後も強くなり、企業評価にも大きな影響を与えるでしょう。だから多くの大企業のCSR担当者は、自社の評価向上を目指し、日夜努力をしていると。しかし、現実的には、超大手になれば競合も同様に努力し続けるため、なかなか評価はあがりません。「CSRで差別化を!」という有識者の方もいらっしゃいますが、同業との厳密な差別化はもはやCSRだけではできません。

上記の3つの課題は、正直、CSRの担当者レベルで解決できる問題ではありません。最終決裁者の了解、他部門の説得、などを行う必要があります。

支援側としてはなんとも言えないですが、担当者が、上記の顕在化した担当者サイドの課題の根本的原因に気付いていない可能性があります。まずは他部門の方とのダイアログが必要ですが、ただでさえ通常業務で忙しいのに、そんなことしてられるかと…。

とまぁ、このくだりは愚痴っぽくなってしまいましたが、課題としては“あるある”だけど、解決方法はほぼ“なしなし”です。さて、どうしましょうか?

参考記事
欧米と日本のCSR格差問題–保守的な日本企業が多いだけでは?
CSR経営戦略の根本的課題-トップ理解と進言者のなさ

まとめ

本記事では、大きく3つの枠にCSR活動実務における課題をまとめました。

今回紹介した課題・問題点は、表層的なものであって、実は原因は見えないところにあったりします。CSRが社内浸透しないからといって、社内報だけ充実させても問題は解決しない、というような話です。

ちなみに、今回ピックアップした課題の解決方法がないわけではありません。まとめられたらどこかのタイミングで紹介したいと思います。

私は特に、CSR推進度でいえば初期〜中期フェーズの企業様の支援をしています。今後も今回挙げたような課題と対峙することになると思いますが、私自身もより“正解に近い答え”を導きだせるよう、日々精進してまいります。



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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]