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SDGsへの企業対応事例増加による、CSRの3つの課題

SDGs対応の企業の課題

SDGsがビジネスセクターで盛り上がって、社会系のメディアやレポートなどで「SDGsの企業対応事例」などがちょくちょく出るようになっています。私にも「SDGsに対応する良い企業事例があったら教えてください」というご質問が増えてきました。

SDGs対照表など、CSR報告書(CSR関連レポート)や統合報告書などでの情報開示が増えていますが、急激なガイドラインの浸透は歪みを生みやすいものです。先日、外務省で「ジャパンSDGsアワード」の公募もはじまりましたし、政府側の盛り上がりもすごいです。

そこで今回は、企業のSDGsに関する課題についてまとめたいと思います。

1、川上と川下の課題

社会課題によって不利益を得ている人をサポートすることはとても重要ですが、その対処療法だけでは社会課題解決にはなりません。よく例えにあげられるのは「貧困」です。世界の途上国の話ではなく、日本でも「子どもの貧困問題」が大きな話題になっています。

子どもが貧困で満足のいく食事や教育が受けられない。だからそれをサポートする。とても素晴らしいことですが、これだけでは問題は解決しません。子どもが貧困状態ということは、ほとんどの場合、親が貧困なのです。ですので“子どもに対して”の支援も重要ですが、根本的に課題を解決するには“親の貧困状態を中長期にわたって改善する”という施策を実施しなければなりません。

私が尊敬する先輩起業家の、病児保育NPOのフローレンスの駒崎さんは、これを「川上(課題の根本的課題、予防的アプローチ)」と「川下(顕在化した課題、セーフティネット的アプローチ)」と表現しています。どちらが正しいではなく、本気で社会課題を解決したいなら両方にアプローチしなければならないと。

この考えでいけば、特に企業ではリスクマネジメントの一環として、この予防的アプローチのCSRが重要になってきます。課題が一度顕在化すると、ダウンサイドリスクが他のリスクと合わさり、より大きなリスクになり得るからです。ビジネスセクター(企業)から見ると、社会(川上)と目の前のステークホルダー(川下)ともいえるかもしれません。

2、マクロとミクロの課題

多くの企業では、SDGsというとても大きな「川上」に対してのアプローチですよ、と言っておきながら、していることは「川下」へのアプローチだったりします。

地球規模の話(マクロ)と、自社の取り組み(ミクロ)と、話を切り分けて考えなければ、適切なインパクトを測定することもできません。アフリカやアジアの貧困国でアクションをすれば、マクロなインパクトが生まれるというわけではありません。

日本の時価総額トップ100社であっても、自分たちのビジネスだけをSDGsと照らし合わせたところで、社会の景色なんて変わりません。究極的にいえば「業界を動かす」というか、自分たちのアクションがアクセレーターとなり、競合を含めた他社を動かしてこと社会を変えられます。

仮に御社が毎年500兆円を出せるならSDGsのマクロ対応ができ、世界のほぼすべての課題解決に貢献できます。つまりSDGsが達成できるのです。でもこれは100%不可能なので、だからこそ、社会の中で自分たちの存在を改めて定義し(マテリアリティとバウンダリの特定)、マクロな視点は持ちつつも、どれだけ日本へのローカライズを進められるのか、がSDGsを本気で達成しようとする意気込みなのでは、と。

「SDGsのローカライズ化」は、何も私がここで初めて言ったわけでもなく、様々な場所で言われていることですが、なぜかSDGs対応になると、できもしないマクロ対応の開示だけになります。

ローカライズし対応して課題の改善もしくは解決に動けるからこそ、SDGs対応が企業価値創出につながり、様々な事業メリットに貢献(経済価値創出)にとなるのです。「言っていることと、やっていることが違う」は、特に嫌われるパターンですのでお気をつけください。

3、ステークホルダーの課題

SDGsは、「川上と川下」「マクロとミクロ」などの課題もあるのですが、一番の課題は「ステークホルダーがどう思うか」です。企業はたくさんのステークホルダーがいてこそ存在できます。特定のステークホルダーのみを重視した経営は決してよろしくありません。

例えば、SDGs対応がどうかなんて、現状では、投資家や評価機関以外のステークホルダーには直接関係ないことです。企業の「SDGs対応」は、国内ステークホルダーにとってほとんどメリットになりませんから当然ですね。

たとえば、顧客としては「そんな他人様のお世話するくらいなら商品を1円でも安くしてよ」です。本来は、社会課題が自社を通じて、顧客にどのように影響が出るから今対応しなければなりません、と説明しなければならないはずなのですが。

「投資家」「取引先」「従業員」「顧客」「地域社会」というステークホルダーは、それぞれ、御社のSDGs対応に何を求めていますか?それに対して、どんな行動をとり、どんな情報開示をしていますか?この答えを明確にできない時点でアウトだということに気づいてください。

例えば、従業員からすれば、課題の大きさは、世界の貧困を救う前に「自社の長時間労働問題」「サービス残業」「パワハラ」などの撲滅が先ではないでしょうか。目の前の1人を救えずして、世界は救えません。

自社の目の前の課題と、社会の課題を同時に解決する。だからこそ企業価値の創出に貢献できるです。だからこそSDGsに対応することが必要であるというロジックを、より明確にしていきましょう。CSR(SDGs)は企業価値に貢献してナンボです。

まとめ

SDGsに対しては、政府や機関投資家の大プッシュもあり、超急激に日本社会に浸透し始めています。

私はまだまだSDGsに対しては、CSR実務としてどこまでできるか完璧に見通せていませんが、施行から約1年半がたったところで、やっとわかってきた気がしています。

SDGsに振り回されることなく、どこまで実務レベルで対応できるか。経営戦略との融合ができればベストですが、99%の企業はこれからだと思いますので、ステークホルダー・ファーストな視点で、SDGs対応に励んでいただきたいと思います。

遠回りのように見えますが、ステークホルダーあっての御社のビジネスなので勘違いしないようお気をつけください。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]