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CSR/CSVの企業事例–ネスレとユニリーバ

ネスレとユニリーバのCSV

CSR/CSV/サステナビリティの世界的な企業事例といえば、真っ先に名前が挙がるのが、ネスレとユニリーバです。話題の中心はネスレが「CSV(共通価値/共有価値の創造)」、ユニリーバが「サステナブル・リビング・プラン」です。

もちろん、日本企業の担当者が両社の事例を知ったところで真似もできないし、参考になることがあるのかどうかわかりませんが、それでも教科書的な事例として、常に動向を追っていくのはよいことだと思います。

そこで本記事では、昨年の成果が開示された2社の最新動向を。改めてまとめます。CSV戦略構築の参考になれば幸いです。

ユニリーバ

サステナブル・リビング・プラン

私たちは、「環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させる」という企業ビジョンを実現するため、2010年、ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランを導入しました。それから7年を経た現在も、このプランは当社のビジネスの中核にあります。
ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランは、成長の加速、コストの削減、リスクの低減、そして信頼の強化という4つの点で私たちのビジネスを支えています。このことで、ステークホルダーの皆さまに対しても長期的な価値を生み出しています。
私たちは、「すこやかな暮らし」「環境負荷の削減」「経済発展」の3つの分野で50あまりの数値目標と達成期限を設け、取り組みを続けてきました。そのうち80%以上ですでに目標を達成したか、順調に進捗しています。
サステナビリティ|ユニリーバ・ジャパン

「サステナブル・リビング・プラン」は2010年に発表されてから、世界中でCSR戦略のお手本とされている考え方です。まさに戦略的CSRの基本となる4領域である「事業成長、コスト削減、リスク低減、信頼強化」を軸としている点も、KGI/KPIの参考になると思います。

CSV論で語られるサステナブル・リビング・プランでは事業成長と信頼強化が注目されがちですが、ここはCSRの基礎中の基礎となるコスト削減・リスク低減が含まれるあたり、リスク&オポチュニティという、CSRとCSVの両面を“モレなくダブリなく”戦略化しています。シンプルだけど強い戦略ですね。

サステナブルな成長について知っていただきたい5つのこと」というページで、ユニリーバは環境や社会のさまざまな課題に対応しながら、市場を上回る成長を実現しているとして、2016年の進捗を紹介しています。ご興味があればどうぞ。

サステナブル・リビング・ブランド

ユニリーバは、サステナビリティを戦略の中略に置き、社会的意義を持つブランド(サステナブル・リビング・ブランド)の構築につとめてきました。2016年、サステナブル・リビング・ブランドは、他のブランドに比べて50%速く成長し、ユニリーバ全体の成長の60%(2015年は46%)をもたらしました。
これらのブランドは、強い社会的意義(パーパス)を持ち、ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランの目標達成に貢献できるような製品を展開しています。
サステナブル・リビング・ブランドがひきつづき高成長を牽引

ユニリーバはサステナブル・リビング・プランに基づき「サステナブル・リビング・ブランド(社会的意義を持つブランド)」を構築しているとのこと。

ここからの学びは、「使命(パーパス)>戦略(サステナブル・リビング・プラン)>活動(ブランド構築)」と、使命・目的などからビジネスを始めるところまで(Whyから始める、とも言われる)CSRが戦略的に行われている所です。

CSR担当者は、どうしても目の前の成果を追いがちで(これが悪いことではない)、いわばビジネスのゴールとなる使命・目的からCSR戦略を考えられず、ビジネス価値創出にフォーカスしきれていない現状があると思います。縦割りの日本的大企業ではしょうがないのですが…。

Purpose(目的は何か) > Why(なぜするのか) > What(何をするのか) > How(どのようにするのか)

上記のように、バックキャスティングというか、課題解決思考というか、大枠から具体的なCSR活動をプランニングするのが理想です。ユニリーバの例までいくと、CSR担当者レベルではどうしよもない部分も多いですが、参考になる考え方ではあります。

CSVの3つアプローチでいえば、「商品・サービス」「バリューチェーン」のアプローチ事例といえるでしょう。

ネスレ


共通価値の創造(ネスレ日本公式チャンネル)

企業が長期的に成功し、株主の皆さまに価値を創出するためには、社会にとっての価値をも創出すべきであると、私たちは信じています。

上記はYoutubeの動画解説文ですが、コーポレートサイトでは『企業が長期的に繁栄し株主の皆さまに価値を創出するためには、同時に社会にとっての価値も創出しなければなりません。私たちはこれを「共通価値の創造」と呼びます。』と表記されています。ステークホルダーでもっとも重要視しているのが株主というあたりが興味深いですね。CSVがIRよりになっているんですね。まさに統合思考。

10年前、ネスレは共通価値の創造という考えを提唱しました。共通価値の創造は、ネスレの存在意義を実現していくための事業戦略です。事業を通じて社会的な問題を解決することこそが、私たちの使命、責任であり、同時に機会でもあります。私たちの事業活動から得られる経済的価値と同時に、社会的な問題を解決することで社会的価値も生み出すことができます。
ネスレ日本 トップメッセージ

ネスレ日本・代表の高岡氏のメッセージで注目したいのが「存在意義を実現していくための事業戦略」という部分です。CSVという考え方が、企業の目的であり存在意義であるための戦略である、と。日本でもCSV先進企業と呼ばれる会社がいくつかありますが、実は担当役員レベルでストーリーテリングが終わっているところが多いのです。つまりトップはそこまでCSV的なことに言及してないし熱意もない(少なくともそう見える)のです。

担当役員レベルでも大手企業では相当偉い人ですが、やはりトップがCSVにコミットメントしてこそ、企業として本気度を社内外に示せるってものです。あなたも興味があれば、CSV先進企業のCSR/サステナビリティに関するトップメッセージを見てください。いろいろな発見があるかもしれません。

ネスレ日本の「共通価値の創造とは?」というページでCSV(ここでは「共通価値の創造」)について詳しく解説されています。ネスレはSDGsにかなりコミットメントしています。SDGsと事業の関係性についてはベスト・プラクティスになるでしょう。

ユニリーバはSDGsに言及はしているものの、日本語ページではほとんど関連性について開示はされていません。このあたりは両社を比べると興味深いと思います。

ネスレのCSVは、3つアプローチでいえば「バリューチェーン」「地域コミュニティ」のアプローチ事例といえるでしょう。

関連書籍

ネスレ関連の書籍は、そのまんまCSVの本が「ハーバードビジネスレビュー」で単行本で発売されています。現在社長の高岡氏自身の著書も複数あります。個人的には、マイケルポーター氏のCSV論よりも、ネスレのCSV論のほうが、実務レベルでは参考になると思います。ご参考までに。

まとめ

本記事では、教科書的な2社の事例紹介となりましたが、CSVや統合報告もそうですが、CSR(非財務領域)による価値創出の一つの方向性だと考えると、昨今の流れは今後大きく“化ける”可能性があります。

私は最近、CSRでもCSVでもよいので、より「価値」にフォーカスした活動と報告をすべき、と考えています。今回紹介したトップオブトップの2社の事例がなぜ優れているかというと、戦略を含めて「価値」にフォーカスしている点が挙げられます。

CSRでもCSVでもサステナビリティでも、使うワードは何でもいいですが、CSRは企業のミッションを達成するための手段にすぎません。「各ステークホルダーにどんな価値創提供をできるのか」を徹底的に考え実践し、ステークホルダー・ファーストな経営を行い、自社も社会もサステナブルになるよう努力していきましょう。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]