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CSR/CSVの経営・マーケティングのヒントとなる5事例

CSVの基礎と応用

CSR/CSVにおける経営・マーケティングってなんでしょうか。

CSVで大きく3つのアプローチがあるのはご存知の通りです。「製品・サービス(プロダクトやサービス)」「バリューチェーン(事業プロセス)」「地域クラスター(外部ステークホルダー)」という3つの枠組みです。

そのため新規でCSVを行うという企業は「商品、プロセス、外部ステークホルダー」という3つのビジネスプロセスの中で、まずはどこかに注力することで新しい道が開ける(可能性が高い)というわけです。

ですが注目すべきポイントがわかっても、特にCSVはCSR担当者より経営企画・マーケティングなどの部門が本来担当する領域でもありますから、ゼロ・ベースでCSVを構築するのは困難です。とはいえCSRの“切り札”ともなる切り口のCSVがあるのも事実。

というわけ本記事では、今後のCSVの戦略構築となるであろう“5つの考え方”を紹介したいと思います。

1、コーズマーケティング

コーズマーケティング(寄付付き商品の販売)という考え方は以前からある考え方にもかかわらず、日本では誰も大きな成果を出せていないと言っていいでしょう。(有名なプログラムはいくつかありますが成果というと…!?)

日本企業(もしくは外資系の日本法人)のコーズマーケティングは「期間限定」なことが多いです。3年以上のスパンで実施されるプログラムはほとんどありません。当然期間限定的な実施なので成果も限定的となる。当たり前ですね。

コーズマーケティングの大きなメリットは、従来のビジネスモデルを大きく変えないで取り組めるところです。「商品・サービス」のアプローチですね。

私はCSVの手法としてもっとコーズマーケティング的な発想があってもいいと思いますが、従来のコーズマーケティングである“再配分方式”では本来の役割を果たせない、とも考えている人間です。“富の再配分”はマイケル・ポーター氏が一番嫌っているとされる考え方ですから。

ただし、社会的インパクトが小さくとも、顧客との製品・サービスを通じたエンゲージメント向上施策(ステークホルダー・エンゲージメント)としては、コーズマーケティングってとてもよい施策なのかなと感じています。顧客が自社の商品・サービスでチャリティできるって素晴らしいじゃありませんか。エンゲージメントに注力したコーズマーケティングが開発できれば、かなり有力なCSVになるのではと考えています。

事例としては、Apple「(RED)プロダクト」、ボルビック「1L for 10L」などが有名です。

2、コレクティブ・インパクト

「コレクティブ・インパクト」とは、異なるセクター(企業・NPO・大学・政府など)の壁を越えて協業し社会的課題の解決を目指すという考え方です。

CSVのコンセプトは明確ですが、その実施プロセスに関してはかなり広い概念でもあります。実施にあたっては、マーケティングから社会貢献要素の強化もありますし、逆に社会貢献活動のマネタイズ強化というプロセスもあります。マイケル・ポーター氏のCSVは前者で、マーク・クラマー氏は後者の思考が強いように思います。

そのCSVという概念を共同で発表したマーク・クラマーが定義したのがこのコレクティブ・インパクト。CSVと親和性が高くて当然ですね。その要素は5つあり、ただ企業とNPOがコラボすればいい、というわけではありません。

CSVアプローチの「外部ステークホルダー」からの視点です。NPOや自治体との協業も何年も前からずっと言われているのですが、なかなか進みませんね。多くのCSR担当者の言い分としては「協業は重要だと思うけど、協業の依頼は断っていることが多い」というコントみたいな話がほとんど。CSRという枠よりCSV的発想のほうがコレクティブ・インパクトしやすいかも?比較的近いアプローチとしては「オープンイノベーション」もあります。

事例としては、海外のもが多く定義どおりのものはほとんどない印象です。ソーシャルセクターを中心に今後盛り上がってくる概念としてご理解いただくのがベストかな。以下の企業とNPOのコラボは基礎編として事例を含めてご確認ください。

CSR活動におけるNPO/NGO連携のポイントって何?
企業とNPOの連携・協働事例とその対策について

3、サーキュラーエコノミー

「サーキュラーエコノミー」とは、直訳で「循環型経済」とされますが、資源を循環させることだけではなく“社会・経済の新しい価値創造のシステム”という意味が主流となっています。

世界と日本ではサーキュラーエコノミーの定義が異なるようですが、日本では環境省発行の白書「環境・循環型社会・生物多様性白書」で循環型社会についての解説が詳しいので確認することをお勧めします。ただしイコールではないように思います。

CSVとしては、サーキュラーエコノミーは「バリューチェーン」を中心に、3つのすべてのアプローチにつながる可能性があります。基本的には環境対策の側面が強いですが、その考え方はCSV施策の重要なヒントになるでしょう。

事例としては…紹介したいところですが国内事例ほとんどありません。今後は環境省あたりが事例をまとめていきそうですが…。

4、ベンチャー・フィランソロピー

「ベンチャー・フィランソロピー」とは、成長可能性の高いプロジェクト(非営利組織や社会的企業の組織も含む)に対して資金や経営支援というリソースを提供すること。社会課題解決に動く組織を支援することで、間接的に社会課題解決を加速させます。

これはフィランソロピー(社会貢献、慈善活動、メセナなど)の意味合いをもたせた投資に近い概念です。CSVとしての機能は「地域クラスター/外部ステークホルダー」へのアプローチ方法といえるでしょう。ビジネスモデルというと自分の手足を動かすことを考えがちですが、「外部ステークホルダー」を意図的に動かして経済的価値よ社会的価値を生み出すことも可能です。

CSR関係者には「コミュニティ投資」という概念の近いものとすると理解しやすいでしょう。ただこの概念を参考にする時は注意が必要です。

そもそもベンチャー・フィランソロピーはCSRそのものかというと解釈がわかれるところでしょう。また、そもそもソーシャル・ベンチャーの支援なので、経済的リターンがあまり期待できません。この考え方はCSV的なのですが、ビジネスプロセスをそのまま真似するのは得策ではありませんので気を付けましょう。

日本の事例としては、日本財団や新経済連盟などで積極的に普及活動が行われています。

5、社会的インパクト評価

最後の5つ目には「社会的インパクト評価」を紹介します。社会的インパクト評価とは、文字どおり「社会へのインパクト(影響)を定量化し評価する」という手法です。CSV活動の社会的価値創出を証明するフレームワークです。

自分たちのビジネスモデルがCSVであると宣言するには、当然ながら経済的価値と社会的価値を同時に創出している必要があります。そうなると経済価値は売上等で証明できますが、社会的価値を証明するのはなかなか難しいです。社会価値は「成果指標設定」すら非常に難しく測定することも困難を極めます。

そこで社会価値を測定するためのフレームワークが世界中で開発されているのですが、それらの測定フレームワークが社会的インパクト評価であるというわけです。自社のCSVが正真正銘であるためのエビデンスとなります。これを逆算することで、CSV的アプローチをすることも不可能ではないかもしれません。

余談ですが、社会的インパクト評価には課題もあります。インパクトの金額換算は“軸が異なる様々な指標を同じ方向性で比べられる”というメリットがある一方その“価値ギャップ”が問題になっています。

例えば、インパクト評価の結果測定できた、自然保護による「100万円」の経済価値創出と、通常の事業活動で稼いだ売上「100万円」は、同等の価値を生み出したことにはなりますが、社会的価値の総量も種類もまったく別のものになります。CSRもCSVも当然ながら経済価値(貨幣価値)創出のため“だけ”ではありません。

経済価値と社会価値を同時に作り出すには、目に見えない価値を算出しなければなりません。そうでなければ管理ができず、そのビジネスモデルがCSVであると証明できません。

事例は社会的インパクト評価イニシアチブのサイトで多数あるので確認してみてください。

まとめ

CSVという単語を日本の官公庁が本格的に使い始めてきました。

今までは、一部のCSR先進企業とマーケティング支援会社(CSR支援会社)などで盛り上がっていただけのCSVですが、2011年の発表から6年たちやっとキャズムを超えるラインまで普及してきたイメージです。

御社でCSVをゼロから立ち上げる場合は、ぜひ上記の5つの考え方もヒントにしてみてください。新しい発想でCSVを構築できるきっかけになれば幸いです。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]