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本業でのCSRが仇になる「豆乳CSR」

豆乳CSRの意味

突然ですが「豆乳CSR」って聞いたことがありますか?

豆乳CSRとは「(豆乳製造会社が)豆乳は健康に良い→自分たちの本業自体が人々の健康に貢献するという社会貢献だ→これって本業でCSRじゃん!」という、確かにCSRしているっぽいロジックのことです。ちなみに、これは悪いロジックの例です。

これは藤井敏彦さん(経済産業研究所)の造語だったと思います。CSRの論客から、最近はロビーイングやグローバル経済に関する論述が多いです。

というわけで、最近この豆乳CSRを思い出してしまう出来事があったので備忘録としてまとめておきます。

本業でCSR

CSV論の登場から丸5年がたち「本業でCSR」という概念が企業に浸透してから、この悪質な豆乳CSR論ができているのも事実です。「CSRからCSVへ」みたいなもので、CSRの国際的定義もCSVの元論文も読んだことのない人たちが「本業でCSR」を語って、大手企業の経営者を巻き込んで「これからはCSVで行きます」なんて宣言させちゃうから、これまた微妙な感じになります。

CSVは勝手に進めればいいけど、そのまえにCSRとして、社内の長時間労働(人権・労働慣行)をなんとかしましょう。従業員や元従業員と訴訟を抱えるような企業がCSVという戦略面だけ誇張するはよろしくないです。

納税・雇用がCSRという経営者がいますが、それは法令上の義務でありCSRの一部でしかありません。それをもってしてCSRというのは狭義的すぎます。まぁ、租税回避や労務に関する課題がゼロな企業ってまずないですから、最近は納税・雇用がCSRともならない企業も多いみたいですけどね。

サプライヤーに環境負荷を肩代わりさせておいて「私たちは環境負荷を減らしてます」ってヤツと同じです。何かのアクションで社会に良いことをしても、別の側面で社会に負荷をかけるというのはよろしくありません。社会的責任はオフセット処理できません。

本業でCSRを。これはCSR元年以降ずっと言われていることです。でも、CSRの文脈を知らない社長は「ウチは本業こそがCSR(豆乳CSR)なので他にする必要はない」となるのが一番まずいです。俗にいう「裸の王様」ですので誰か注意してあげましょう。

CSRの本来の意味はステークホルダーへのインパクトに対しての社会的責任です。本業でCSRしていようがしてまいが、事業活動の中でステークホルダーに多大な負荷をかけておいて、表向きだけ「本業でCSRしてますから」では負荷をかけられ続ける社会・ステークホルダーはたまったものではありません。

社会貢献度が高い仕事

あと最近気になるのが求人サイトの「社会貢献度が高い仕事」です。これも「豆乳CSR」だと思います。もうこんな短いセンテンスでも突っ込みどころが満載なのですが、「社会貢献度が高い」かどうか明確なエビデンスも第三者評価もないし…。

以前から言っているように、CSRは「How(どのように)」です。つまり通常の事業活動の社会性をどこまで担保できるかと。Howとはプロセスなのです。事業プロセスを見直すのがCSRです。何か新しい活動を始めることが、CSRと誰も定義してないわけです。

通常業務の中で「良い部分(機会)を増やし、悪い部分(リスク)を減らす」というプラスαの行為がCSRなのです。

つまりグローバルな社会的責任では、CSVはしなくてもCSRをしていれば社会的責任を果たす企業として認めてもらえますが、CSVをいくら推進しても、根幹となるCSRができていなければ、良い評価はされません。事業で何をするか(What)ではなく、いかに事業を行うか(How)なのです。

製薬とか医療とかのジャンルは特に豆乳CSRになりがちです。人々に生活に貢献すればCSRというわけではないですぜ。CSVとCSRの話は長くなるのでまた別の記事にまとめます。

ちなみに、私はCSV推進派でありCSV論自体を否定するものではありません。まず組織として順序を守ったほうがよいですよ、ということだけです。

結果論としてもCSV

「結果論としてのCSR」は実際あると思います。「後付けのCSR」とでもいいましょうか。これが先にあれば豆乳CSRになりません。

「CSRのトレンドは何か」と聞かれれば色々答えますが、ほとんどの企業の場合、現実的には社会動向に合わせて活動をしているわけではなく、組織文化や社長の考え方、つまりは「内部要因」に合わせてCSR活動をします。

CSR活動は、国際的なイニシアティブやガイドラインの影響が大きいのは当然ですが、CSR活動の実務上の指標は内部要因がほとんどです。わかりやすいところは「社長がこうしろと言ったから」です。世界の絶対参照すべきガイドラインも“鶴の一声”には勝てません。

こういう視点でみても豆乳CSRは日常的に起きうるジレンマでもあると、ご理解いただけるでしょう。実際、経営者の社会貢献マインドが高い企業もあるのは知っています。でも、多くの上場企業や大手企業はCSR部門出身なんて人はいないし、体系的なCSRを知っているという人はいないでしょう。

上場企業の社長になってしまえば、CSRを勉強する時間がないというのはわからないでもないです。日本企業のほとんどの社長は“プロ経営者”ではないし(プロ経営者でもCSRを知らない人は多いですが)、叩き上げのジョブローテションで要職につき社長になったとしても、今の時期に社長になっているということは、CSR関連部門での業務経験者ではないでしょう。

まとめ

CSRコンサルタントとして様々なコンサルティングの案件に関わらせていただきますが、この豆乳CSRは本当にやっかいな問題です。

「知識があまりないから教えてよ」というスタイルであればゼロから伝え戦略構築などをしていきますが、「ウチはCSR(豆乳CSR)してるんですよ、だから…」みたいなスタイルだと説得するのは非常に困難です。

そんなこと私に言われても知らないよ。だったらそれでいいじゃん。好きなようにすればいいんじゃないですか?ただ、それで評価されたいとか、企業価値向上とかESG情報開示とエンゲージメントはうまくやりたいとか…もう…お願いだから…許して…ガクっ。

「手段と目的」や「相関関係と因果関係」のように、論理的に破綻しているロジックを使い続けるのはやめましょう。この豆乳CSRの課題を回避するには、結論、第三者評価やCSR専門家とのエンゲージメントだけだと思っています。

意外にハマりやすい罠ですので、御社もお気をつけくださいませ。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]