|カテゴリ:CSR/ESG/SRI投資 , CSR報告書/統合報告書 , IR活動

CSR担当者が知っておくべきESG投資の10のポイント(2016)

ESG投資

ESG投資の現状

2016年は、過去最高にメディア等で「ESG投資」が話題になっています。

もちろん、社会の動きに呼応して、CSR支援企業も統合報告書作成などからIR的な領域まで支援するところが増えています。

その意義は僕も理解しているし推進する立場ではあるのですが、現実的な話、ポジティブな話ばかりではなく、ネガティブな話も同時に話題になるようになっていきています。

本記事では、賛否両面から、最新情報をまとめてみます。IRプロフェッショナルが知っていることが多いと思いますが、CSR担当者は必ず確認しておきましょう。

ESG投資の最先端

ESG投資運用

―運用においてESGに注目する利点を聞かせてください。
着目したいのはリスクを抑制する面です。例えば、気候変動は投資家にとってグローバル・リスクの一つといえます。今後、世界各国で温暖化を抑制するための政策が導入され、仮に炭素税が大幅に上がるとすれば、排出量の多い企業は大きな負担を強いられることになります。
ESGを長期投資に役立てる

よくいわれるのは「G(ガバナンス)」です。このカテゴリーの対応と情報開示が少ないと「自分の会社を監視・管理する仕組みがない」と判断され、投資評価が落ちてしまう、と。

理論上はリスクへの対応がしっかりしている企業のほうが、投資リスクが少ないので当然ですね。しかし年に何件か起きる大型不祥事は、ESGの対応と開示が高レベルで評価も高い企業が多かったりするのですが…。

リターンを犠牲にする?

アメリカ最大の年金基金カルパースの過去1年の運用成績が0.6%にとどまった。同基金の20年間の年平均運用利回りは7.8%だ。敗因の1つは、企業の社会的責任、即ちCSRに配慮した投資という考え方が間違っていたからではないのか
カルパースのCSR投資はリターンを犠牲にした無責任投資

これもよくある話。「ESG投資やりましょう!」という人たちがどんなに増えても、「結局ESG投資ってパフォーマンス悪いよね?」という人たちもいます。どちらも、ある一面では正しいように思うのですが、難しいですね。

素人的な発想で恐縮ですが、「ESGが充実しているが、連続赤字企業」と「ESGは充実していないが、右肩あがりの黒字企業」でどちらに投資するかって、財務体質がすぐれているほうだと思うんですよ。つまりESG要素は投資判断の一つの条件ではあるけど、軸にはならないみたいなイメージです。どうなんでしょうか。

CSR推進企業の株価は?

通常のCSR活動は安定期に入った大企業の方が多くの取り組みを行うことができ評価も高くなりやすい。東洋経済CSR評価やCSR企業ランキングもその傾向がある。
一方で、まだトップクラスとして認識されていないが、CSRの取り組みを進め、業績も伸びている会社は将来、株価も上がるのではないか。
最新!「CSR高成長ランキング」トップ30社 市場平均を大きく上回る株価上昇を見せる

CSR/ESGはサブの要素ながら企業の将来を予想できるとしたら…。こういう数字が続くと「安定期の大手企業以外のESG投資は効果的だ」みたいな結論も出てくるのかもしれませんね。

しかし、投資やIRの素人ですが感じるのは、長期視点の投資といっても、投資の担当者ははやければ数年で配置換えになるだろうし、3〜5年でも社会は大きく変わるわけで、必ずしも「長期運用の機関が、長期視点でいるとは限らない」ということです。担当者だって1年単位で評価されず、3〜6ヶ月の評価普通でしょうから。難しいですね。

社会貢献債

国際協力機構(JICA)は9月にも社会貢献債(ソーシャルボンド)を200億円発行する。国際機関が今年定めた同債券の定義に沿った日本初の発行となる。調達資金は途上国向けの円借款や投融資などに充てる計画。環境や社会への配慮、企業統治を重視するESG投資の流れに日本でも弾みがつきそうだ。
JICA、社会貢献債200億円 途上国開発資金

ソーシャルセクター/パブリックセクターでもESG投資という単語がニュースになる時代となりました。形は違いますが、インパクト投資なども含めてソーシャルセクターはビジネスセクターに先駆けて様々な社会貢献要素の強いお金の動きが活発化しています。こういうのは広義のESG投資っていうんですかね?

女性活躍情報を中心とした非財務情報の投資

資本市場における女性の活躍状況の「見える化」と女性活躍情報を中心とした非財務情報の投資における活用状況に関する調査報告書(平成27年度)

内閣府男女共同参画局のレポートなのですが、かなり肉厚なレポートとなっております。ESGの基礎的な知識から確認できるので、オススメの資料です。

ESGというよりはSの女性活躍の話がメインですが、意外に色々なコンテクストも書かれているので理解しやすいかな。

ESG投資家

ESG投資家の皆さまへ

東急不動産ホールディングスのCSRコンテンツには「ESG投資家の皆さまへ」という項目があります。もちろんIRコンテンツにもサイドバーがあってリンクしてます。いいですねー。素晴らしいコンテンツ分けでです。

投資家が注目するであろうポイントにリンクしてジャンプできるようになってます。本来はCSRコンテンツもこれくらいIRコンテンツと統合/融合させるのが理想です。

CSR/ESG情報をどうやって整理し、情報を届けたいステークホルダー(ここではESG投資家)て発信すればよいか。

東急不動産ホールディングスのように、単純に「ESG投資家」というステークホルダーを絞ったインデックスページを作ればいいんですよ。現在の最先端な作りがこれだと思いますけどどうなんでしょうか。

参考資料

2016年にまとめられたレポートで、ESG投資に関係しそうな興味深いものも合わせて紹介します。

・「RobecoSAM サステナビリティイヤーブック」(RobecoSAM、日本語、2016)
・「ESG情報を活用した企業と投資家等の対話促進トライアル説明会」(環境省 平成28年度 環境情報開示基盤整備事業、2016)

まとめ

ESG投資をCSR的な視点でまとめると、だいたい以下の3つのポイントにまとめられそうです。(かなり雑ですみません)

(1)投資家も他のステークホルダーも、結局CSR/ESG情報“だけ”で何かを判断することはなくなった。むしろ、CSR情報の開示の重要性は変わらないものの、いわゆるCSR情報を中心に発する「CSR報告書」から脱却しないと、投資家に価値提供できなくなった。
(2)「自分たちが強みだと思っていること」と「顧客・投資家が魅力と感じていること」は違う。「価値ギャップ」と言われるものだが「情報の送り手側が提供できる価値」と「情報の受け手側が求めている価値」の間にズレが少なく、「送り手が伝えたい価値」と「受け手が求める価値」が一致している場合は、ステークホルダー満足度が上がる。
(3)CSR報告書こそ「ステークホルダー・ファースト」の冊子にしなければならない。それには、より明確な想定読者像(ペルソナ)を作る必要がある。

ここまで最新の事例やオピニオンを紹介しておいてアレですが、ESG投資に熱心なのは「統合報告書」を発行している250〜300社程度(2016年発行)ですよね。

今後も統合報告書の発行社数は伸びると思いますけど、あと何年かで400〜500社になる程度で結局頭打ちになると思います。つまり、ESG投資が盛り上がっていることは間違いないけど、国内のCSR推進企業のトップ500社程度のマーケット意識なのかなと。

もちろん、全上場企業の3,600社はESG投資のターゲットとなるので、CSRに興味がない社長がやってる創業者社長の上場企業でも、それなりに対応する必要はありますけどね。

さてさて、一般経済系メディアでもよく取り上げられるようになり、かなりの盛り上がりがみられる2016年のESG投資ですが、CSR界隈に根付くにはもう少し時間がかかりそうです。僕も日々の情報収集を怠らないようにします。

現状、IR系から先に動いているので、そのうちCSR報告書もCSR担当者が中心になるものの、IR部門が仕切って作る会社が多くなるのかもね。月並みな表現で恐縮ですが、今後のコーポレート・コミュニケーションにおいて、3R(CSR / PR / IR)の連携がより求められる時代となったということでしょう。

関連記事
SRI/ESG/サスティナブル投資のトレンド(2016)
マテリアリティの重要度が上がった!? 社会的投資指標「DJSI」(2016)
新基準により構成銘柄の採用/除外が活発になった「FTSE4Good」(2016)



執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]