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欧米と日本のCSR格差問題–保守的な日本企業が多いだけでは?

CSR格差

CSRへの取組み姿勢

企業が保守的ということは、経営層が保守的だということ。業種・業態関係なく、トップが会社を変えようと思えば変わるものです(一部をのぞいて)。

なんでそんなことを思ったかというと、『米在住ITコンサルタントが警鐘「新しいテクノロジーに対する保守性が、日本企業を弱体化させる」』という記事を読んだからです。記事は、日本企業は社会の変化についていけない所が多いよね、それは保守的で新しいことにチャレンジする戦略性がないからでしょ、みたいなものです。

「能動的/受動的」もしくは「消極的/積極的」という二項対立の中ですべての説明ができると思っていませんが、CSRの取組みが遅れている上場企業・大企業のほとんどは、「経営層が保守的だから」で説明がつきそうなイメージがあります。当たり前すぎですが、トップの理解というのはそれくらい会社に与える影響が大きいということです。

保守的であること自体は悪い事ではないのですが、CSRにとってはかなりな強敵です。本記事ではこのあたりをまとめます。

アピールにならないCSRはしない?

結論から言いますと、CSRの目指すべきは、部署運営の「部分最適」ではなく、企業全体の「全体最適」を最優先に考えるべき、ということ。

日本企業って全般的に保守的というか、「CSR活動は儲からないからやらない」という、根拠がまったくわからない思考停止理論が経営層にあり、なおかつ、保守的であるため、稟議書を企画がつぶれるまでまわすという仕組みがよくわかりません。社会が変化しているのに、企業が変化していないで生きていけると思うのがよくわかりません。(稟議制度は欧米ではほとんどないと聞きます。もちろん稟議制度にもメリットはあります)

保守的といいますか“細かい”ところが課題とも言えます。仕事のクオリティ(本来目指すべき成果とは関係ない部分も含めて全て)にこだわりすぎる傾向があるように、現場を見ていると思います。

1,000万円クラスのビジネスに対して、見積りの数万円規模の再確認や値引き交渉をしているヒマがあるなら、さっさとプログラムを実施したほうがよほど時間も予算・経費も抑えられるはずです。「完璧に対応できないのであれば“やらない”」という、品質至上主義というか。特に大手企業は、目の前の実費の重要度が高く、従業員の人件費はほとんど考慮しないことがあります。

これはCSR活動でも同じです。他部署から異動してきて、何もわかっていない専任CSR担当者に活動を任せるより、兼任担当者に外部支援者(CSRコンサルタントなど)を使わせたほうが、トータルで同じ金額を使ったとしても成果は格段に変わります。そもそもCSR活動なんて、日本のトップ数百社以外の数百万社はこれから本格的に始める、というフェーズなのですから、完璧にできなくて当たり前なのですよ。

すべてが、とはいいませんが、多くのステークホルダーにとっては企業の内側の論理なんて関係ないし、CSR活動のクオリティより、どれだけ適切な形で情報開示されているか、のほうが興味があるでしょう。

アウトサイドの人間は開示された情報しか知ることができませんので(情報の非対称性)、詳細の活動プロセスはそもそも知りようがないし、そんな“ムダな努力”をするより、本来の目指すべき所である社会的インパクトを創出ことに集中すべきなのです。

ですので、アウトサイドのステークホルダーたちは、保守的な会社、CSRだけではなく新しいテクノロジーや概念に対して積極的にならない企業は、魅力的で信頼できる会社と判断されないのです。保守的であることが、時には機会損失や過剰な予算投入になりうる、というお話でございます。

ダウンサイドリスク

日本では、子どもの頃から“いかにダウンサイドのリスクを減らすか”という発想を植えつけられてしまう傾向があります。一方、アメリカは“いかにしてアップサイドのポテンシャルを最大にするか”という発想が根本にあるんです。アップサイドのポテンシャルが最大になるのであれば、多少のリスクは厭わない。ダウンサイドのリスク回避ばかり考えている日本とは、ここが大きく違うんです。
米在住ITコンサルタントが警鐘「新しいテクノロジーに対する保守性が、日本企業を弱体化させる」

CSRは「リスク&オポチュニティ」ともいわれ、リスクマネジメントと事業機会創出の両面の意義が語られますが、日本の場合はどちらの面も語られない中庸論が多いように感じます。日本人は小さい頃からダウンサイドリスク(ネガティブ・インパクト)を学んでいるくせに、リスクマネジメントも中途半端、機会創出も中途半端。なんやねん、それ。

もちろん「リスクを減らす」と「事業機会の最大化」は、本来同時に求めるべき概念なのですが、CSV論のように「事業機会創出」はアメリカの風土に根付きやすいし(そもそも提唱されたのがアメリカだし)、企業はどちらかの方向によってしまう傾向は必ずあります。

日本のCSRは欧米のそれに遅れている、と言われる大きな要因の1つは、この「リスク&オポチュニティ」の捉え方や精神性なのかと思います。技術や知識が日本企業のみ世界から遅れているとは考えられませんから。また、日本企業の保守的な姿勢は悪いとは言いませんが、そういう企業に限って「イノベーション」という単語を使ったりするのが気になる所です。

CSRコンサルタントなどが、どんなにテクニカルなCSR活動や概念の話をしても、その文化や歴史的背景(コンテクストといいます)を加味して進めないと評価が上がりません。「手段の目的化」にハマっているとも言えるでしょう。

「攻めは最大の防御なり」を実践する人と、やっている“つもり”になっている企業姿勢の差が、そのままCSR評価につながっているといってもよいでしょう。

まとめ

最終的なCSRの目的をもう一度振り返り、そのプロセスに異常にこだわることなく、ステークホルダーのために貢献することを目指して、日々の活動を行なっていきましょう。

保守的な思想や行動はミスは少ないものの、成功も小さく、また、社会の変化など外部要因によっては、最悪の結果になりかねません。

「CSRは儲からないからやらない」ではなく、「CSRはしなければいけないからやるけど、戦略的に活用できないのか?」というポジティブなチャレンジ精神を、経営層にどのようにもってもらうかが、CSR担当者の腕の見せ所なのかもしれません。20〜30代のCSRパーソンには相当難易度が高い話ではありますが…。

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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]

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