就活生とCSR情報

先日『第7回東洋経済CSRセミナー「就活生をターゲットにしたCSR活動ってアリ?」』という、東洋経済のCSRセミナーに参加してきましたので、僕が考える「CSRと就職活動生」についてまとめます。

セミナーに参加した僕の結論としては「大学生はCSR報告書を読まない」ということ。女性まわりのCSR情報(非財務情報)って女子学生はぜったい知りたいはずなのですが、それらの情報がCSR報告書にあるとそもそも教えられてないから、誰も知らないのです。

そして、CSR報告書を説明なしで渡しても文脈がわからないので理解されにくい、と。では企業は、どうすべきなのでしょうか?

就活生が知りたいこと

『CSR企業総覧』という分厚い本をご存じだろうか? 総ページ数2568ページに1325社のCSR(企業の社会的責任)情報がびっしり詰まっている刊行物だ。
CSRというと社会貢献や環境活動のイメージが強いかもしれないが、この本には各社の賃金・各種諸制度、女性活用・ダイバーシティ、有給休暇や家庭と仕事の両立支援など雇用に関する情報がたくさん掲載されている。これから就活を開始する学生の皆さんにも見ていただきたい有望情報が満載だ。
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たとえば、就活生の半分近くが見る(?)という噂の「就職四季報」も出している東洋経済の就活生向けの記事。最近はこの手の女性のワークスタイル等に関する情報が増えてきたので、就職活動中の女子大学生は会社選びの参考になるかもしれない。ただ、これらの情報がCSR(非財務情報)というカテゴリーと知っている人は少ないかもしれないです。

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他にも上記のような記事もあるので、就活生ではなく、転職希望者もよく見ておくとよいでしょう。

でも結局、「採用情報コンテンツ」(他社メディア含む)にこれらの情報がなければ、どこにこれらの情報が載っているかわからないし、CSR報告書になら載っているかもしれないから見てみよう、と思わないでしょう。

で、すべてとはいいませんが、これらの情報の多くはCSR報告書に記載されていることが多いです。

新卒採用に力を入れている企業は、CSR報告書を会社説明会で配ったり、CSR報告書の主要読者を大学生としてますが、現実問題としてCSR報告書は学生向け冊子ではないので、新規情報を足さないで再編集したものでいいから、専用の冊子にしたほうがいいでしょうね。それすらできない企業は、意味がないので、CSR報告書を学生に配るのやめましょう。それこそすぐ“ゴミ箱行き”でエコではないから。

唯一、条件を満たせるとしたら「きちんとCSR報告書についての説明をしてから渡す」パターンでしょうね。これなら、内容や会社の姿勢などを理解してもらいやすくなるでしょう。会社案内とCSR報告書を兼ねて制作をしている企業の方は特に注意してください。

大学生の情報ニーズは?

「新卒入社者の定着状況」は、就活生はみんな興味ありますよね?「女性の役職者数」や、出産・育児・介護の休暇取得などに関する「ワークライフバランス」や、「メンタルヘルス」などの項目も、大学生は興味があると思います。これらは、非財務情報やCSR情報と呼ばれ、CSR報告書などに記載されるのですが、多分、就活生の多くはそれを知りません。

海外のCSRに詳しい方は、CSRのことを「社会的操業許可(Social License to Operate)」とか、「インテグリティ(Integrity)」というワードで説明したりしますが、海外の最新事例を日本企業に当てはめるパターンのコンサルタント(これがほとんど)だけの身内話であり、良い悪いということはないのだけど、日本企業のCSR担当者からはほとんど聞かない単語なので、個人的には使わないほうが、イメージの共有がしやすいと思います。

こういった視点でCSRを説明してしまうとだと、今回のリクルーティングという部分にはほとんど引っかからない結果になりそうです。CSRの概念やコンテクスト自体に興味があるわけでもないですからねぇ。

これらのように、情報を届けるステークホルダーの情報ニーズを見極め、適切なメディアで情報を届ける必要があります。

まとめ

結局のところ、採用領域へのCSR情報のインパクトという部分で思ったのは「マテリアリティ」ですね。

年間40万人いる新卒就職希望者のすべての人に、同じ情報取得の傾向があるわけではないので、「どのような人材が欲しくて、その人たちが欲しいと思うCSR情報は何か、そしてそれはどんなメディアで発信すべきなのか」をきちんと考えることが重要なのでしょう。マーケティング的視点とも言えるかもしれません。

大学生向けの冊子を考えた場合、訴求するポイントは「コーポレートガバナンス」ではないはずです。でも昨今の株主・投資家への訴求ポイントは間違いなく「コーポレートガバナンス」です。

ステークホルダーの日々使っている“情報メディア”を使い、ステークホルダーの“情報ニーズ”に適したメディアでCSR情報を発信することが、そのステークホルダーのリアクションを引き出すポイントになるのは間違いありません。

CSR報告書制作は外部の制作会社に発注している企業が多いと思いますが、制作“だけ”しかしない制作会社とは今後お付き合いをせず、情報の受け手となるステークホルダーのこと本気で考えてくれるひとたちと一緒に作るのが理想です。

毎度言っておりますが「良いCSR報告書」を定義できない制作会社さんとお付合いすると、発注企業は当然として、読者となるステークホルダーが一番の被害者となることをわすれてはいけないと思うのです。読者を無視したCSR報告書、ダメ、ゼッタイ。