CSR評価

CSRの効果測定と評価指標

CSR活動を評価するって、難しいですよね。

「セオリーオブチェンジ」(Theory of Change)や「社会的投資収益率」(SROI,Social Return On Investment)など、ソーシャルアクションを数値化するインパクト評価手法があります。また、他にも世界的に、続々と効果測定のツールやメソッドが開発されてきています。

企業としては、金額の大小に関らず、投資をする以上成果を求めます。では、CSRにおける成果とは何でしょうか。評価という軸から、考えてみたいと思います。

インパクト評価の考え方

いくつかある社会的インパクト評価の中でCSRに使えそうなのは「SROI」という枠組みなのかなと思っています。

SROIはざっくりいうと、インパクト・ロジック・モデルと呼ばれる「インプット・アウトプット・アウトカム・インパクト」という流れについてプロセスを含めた評価をする方法です。そのプロセスを図解にしまものを「インパクトマップ」などともいいます。

例えば、CSRコミュニケーション評価に当てはめると、以下のような図になります。

CSRコミュニケーション評価

もちろん、コミュニケーション領域だけではなく、CSR活動全般にもこのフレームワークは利用できます。プロセスと「インプット」と「インパクト」を明確にすることで、該当プログラムの善し悪しを計る事が出来るのです。

SROIについては、以下の記事にもまとめていますので詳細について参考にしてみてください。

参考記事
SROIはCSRの“未来を計測しうる”ツールなのか
SROI(社会的投資収益率)による、CSRの評価方法と効果測定とは

インパクト評価の課題

課題ももちろんあります。「負のインパクト」の話です。ボジティブな社会的インパクトを計測するのはいいですが、物事には必ず負の側面が存在し、ポジティブ面の評価だけで、その活動が適正かどうかを見極めることはできないのではないか、という議論です。

一つの事業活動に対し、100%、すべてのステークホルダーが満足する取組みなんて存在しません。仮に、存在するという人がいれば、マルチステークホルダーの陰にある波及的社会的インパクトを見落としているだけなのだと思われます。インパクト評価も所詮、部分最適の評価手法であり、それに傾倒しすぎるのは危険だという視点もあり、なかなか難しい所です。

先日、慶応大学の伊藤さんの話を聞いて、SROIに関してはこのネガティブインパクトも折り込み済なのだそうです。あとは、評価が低かったからといって一様に判断を下すのではなく、コンテクスト(実施背景)をふまえて考える必要があるみたいです。

ただし、評価としての「善意のプロセス」を、誰がどのように評価するのか、というのは難しい問題だと思っています。「善意の提供者」が“してよかった”と思えれば、まずはいいと思うのですが…。

つまり、「社会的に意義のある活動」が「インパクトの数値が良くないので来年はやらない」で片付けられてしまうと、それこそフィランソロピー(寄付などの慈善活動)は、企業価値向上に貢献しにくいということになってしまうと。

ソーシャルアクションに成果を求めすぎると、プロセスに効率だけ求められる結果になりかねません。効率や結果だけを求められた時に、企業やステークホルダーに、純粋な善意の“役に立った感”がなくなってしまうのでは、本末転倒な気がします。

まとめ

ソーシャルセクターの効果測定の手法は様々なものが開発されてきていますが、CSRとなると、まだまだ浸透しているとは感じません。

そして、意義のあるCSR活動が効率の名の下に廃案になっていくのが、活動として有意義と言えるのでしょうか。

何かを評価する時には、セカンドオピニオンや第三者評価が重要になってきますが、数値化され効率が重視された自社のCSR評価が良くても、ステークホルダーに取って良いCSR活動かわかりません。当たり前ですが、「誰が、誰のために、何を評価するのか」を徹底的に考えるのが大切なんでしょうね。

色々、CSR評価についてまとめましたが、CSR活動におけるパフォーマンス・コミュニケーション・ブランディング・イメージなどの効果測定と、活動自体の効果測定の交点にあるような評価指標の見極めが、今後必要になってくるでしょう。

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