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SROIはCSRの“未来を計測しうる”ツールなのか

SROI

CSRの効果測定は可能なのか

先々週、J.P.モルガンのプレス・ブリーフィングに参加してきたので、メモをまとめておきます。

J.P.モルガン、若者の就労を支援する「育て上げネット」に助成、「Youth Drive」を立ち上げ、プロボノ支援も

現在もプログラムを実施中で、第三者評価機関からSROI(社会的投資収益率、社会的リターン)による評価プログラムも同時進行してますよ、という話でした。

そもそもプレス・ブリーフィングなるものに初めて参加。まわりは文字通りメディア関係者ばかりだったので、肩身が狭かった…。でも勉強させていただきましたので、なんの問題もございません。

SROI

SROI(Social Return On Investment)とは、社会的活動に対して、アウトカム(成果)レベルで貨幣価値換算での定量評価を行なうこと。活動の事後評価だけではなく、インプット(リソース投下)からインパクト(実施成果)までのプロセス評価も行なう仕組み。

企業だけではなく、様々なステークホルダーが関与している状態において評価を行なうものであります。ですが、それゆえに「客観性」や「因果関係」などをどこまで追求できるのかという課題は残るようです。考え方は、2000年代後半から標準化や整備がイギリスを中心にされてきました。

ちなみにこの「社会的インパクト」って結局何を指すの?ということですが、「市場で取引されないが、価値換算を行なうことが可能な指標」のことです。

NPOの活動はもちろんのこと、CSR活動(特にフィランソロピー色が強いもの)も測定可能です。ただ、CSR活動は「本業でCSR」なんてバズワードもあるくらいで、すべてが強い社会性を持っているとは限らないので、それらに関しては正直、未知数な感じです。

SROIの課題と可能性

ブリーフィングの時に質問させていただいたのですが、これらはポジティブな面だけではなくネガティブな側面、また、意図していた/していない、というような枠組みもあるそうで、CSR活動全般にも厳密には難しくとも、考え方と評価手法としては、十分に参考になるのかなと思いました。

ネガティブな面とは、例えば「A市の夜間取り締まりを強化し犯罪発生数が月間50%減った」は社会的インパクトは良好と言えますが、「A市の隣町のB市では、月間50%も犯罪発生数が上がった」みたいな結果も同時に起きる可能性(ネガティブ・インパクト)があることです。プログラム実施による、社会全体を評価するために視野を広くする必要がありますね。

あと、SROIが計りにくい事象ももちろんあります。例として挙げれたのが「映画製作に企業から助成すること」です。不可能ではないにしろ、人の心理など抽象度の高い項目は社会的評価がしにくい、という課題もあるみたいです。

「どれくらいの人を感動させられたか」とか、指標になりうるかわからないし、それが社会的インパクトにつながるかもわかりません。このあたりは計測は不可能ではないにしろ、かなり難易度の高いものであるのはたしかです。

他の課題としては、第三者評価が必要なため、どうしても費用がかかってしまうこと、などもあります。そこにかける費用があるなら、プログラムに全額投資したいと思うのが人情だと思いますが、これっきりは、自分たちのみで客観性を立証できるわけではないので、なかなか…。

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■SROIの参考サイト
SROIネットワークジャパン

まとめ

「インパクト・ロジック・モデル」の概念は理解していたのですが、改めてSROIの手法を確認できました。

そして、NPO育て上げネットが、どれだけ先進的な取組みをしているのか、というのをまざまざと見せつけられた感じがします。(以前マイクロソフトでのSROI評価してました)

このあたりのインパクト評価は、ビジネスセクター(CSR)よりソーシャルセクターのほうが進んでいるので、ぜひ日本のCSR実務にもどんどん取り入れていきたいなと。SROI自体を広めるのかどうかは別として「社会的インパクト評価」の概念をうまく使い、長い間、効果測定が困難(不可能)と言われてきたCSR領域に、希望の光を壮大にブチこんでいきたいと思います。

というわけで、J.P.モルガンと育て上げネットの取組みに、今後も注目してみます。



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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]