CSR気候変動

知らないうちに関与している外部不経済

幅広い視点から気候変動の現状と対策をまとめた良書でした。いわゆる環境問題とはなにかという大命題から、環境問題の経済性を中心に様々な角度から論じています。

「気候カジノ-経済学から見た地球温暖化問題の最適解」(ウィリアム・ノードハウス、日経BP社)の読書メモです。

僕が気になったのは「外部性」という概念です。シンクタンクとかアカデミックな人たちからは聞いたことはありましたが、CSR担当者との話題には出てこなくてすっかりチェックしていなかった考え方。

そもそも外部性とは、ある経済主体の意思決定が他の経済主体の意思決定に影響を及ぼすことを指します。特に環境問題の中心になる話は「負の外部性(外部不経済)」。本書でわかりやすい解説があったので抜粋します。

たとえば我々はレタスを買うとき、生産の過程で生じたコストを支払い、農家と小売業者は労働の対価を得る。しかしレタスを生産する過程で、畑に撒く水を汲み上げる、あるいは運搬用トラックに燃料を供給するといったかたちで化石燃料を燃焼しなければならない場合、ある重要なコストがカバーされていないことになる。排出された二酸化炭素によって生じる損失だ。こうしたコストは市場取引の外にあるため、経済学者たちの間では「外部性」と呼ばれている。(25P)

企業が事業活動を行なう上で必ず、直接的にまたは間接的に化石燃料を使用しています。結果、大気中に二酸化炭素が排出されるわけですが、このコストを計算していないということになります。

例えば、IT企業はほとんど環境負荷をかけていない、と中の人には思われていますが、毎日使う電気や物品の製造過程で少なからず二酸化炭素を排出しているわけです。自分たちが直接排出していなくても、電気や物を使った瞬間に間接的に発生させていることになります。

そのコストを負担していない企業が多いけど、皆が誰かに負荷をなすりつけあって誰も対応しないのであれば…。そうやって今、社会問題として解決不可能な状況になりましたっと。(もちろん緩和はできますが)

この外部性という概念は、CSR調達やサプライチェーンマネジメントに近いものであると感じており、「間接的な社会への影響」をどこまで認識し対応するのか、まさに「バウンダリー」という概念ですが、今後のCSR活動でも非常に重要な考え方となるでしょう。

本自体は450ページ近くあるので、読み終えるまで大変だとは思いますが、企業として気候変動(環境問題)にどこまで対応すべきか、という本質的な部分が学べると思います。

今年度こそは環境分野を学ぶぞ!というガッツのあるCSR担当者の方向けの本でした。僕はもうお腹いっぱいで、一回サラッと読んで本棚行きとなりました…。いつか読み直そう。いつか…ね。

気候カジノ

地球温暖化が今日大きな注目を集めていることは間違いない。と同時に、それが果たして真実であり重要な問題なのか、人間社会にとってどのような意味をもっているのかについて、人々の意見が分かれていることも、やはり事実だ。対立する主張のはざまで、温暖化問題に関心を寄せる人々は、一体どのような結論を下せばよいのか。仮に「地球温暖化は真実である」が答えだとしたら、それはどのくらい重大なことなのか。下がることのない失業率、膨らみ続ける公的債務、数々の紛争、核拡散など、世界が抱えるあらゆる問題の中で、地球温暖化は私たちにとってどのくらい重要な地位を占めるのだろうか。 一言で言えば、地球温暖化は人類と自然界にとって大きな脅威だ。