CSRにおける労働問題と、コンプライアンス事例
先日、最新版の「労働安全衛生調査」が厚生労働省から発表されましたので、今回は、労働問題とコンプライアンスの話を。
コンプライアンスとしての、組織体制構築、推進・取組み、リスク・倫理としての課題(問題)など。他にもコンプライアンスのそもそもの必要性、目的なども考慮しながら会社として行動規範に落とし込み、方針を固める必要があります。
労働問題とコンプライアンス問題って一緒に考えることが重要な気がする最近です。というわけで、厚生労働省が先月出した二つの資料を確認しながらまとめます。
労働問題についての資料2つ
労働安全衛生調査
僕が「労働安全衛生調査」を読んで思ったのは、メンタルヘルスの所。
「メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者」という項目で、「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業所」の割合は 10.0%となり[24 年調査 8.1%]で前年調査より上昇しているという結果になったそうです。
産業別にみると、「情報通信業」が 28.5%と最も多い、と。エンジニアの方とか、一日中プログラミングしている人はうつになりやすい、なんて話を聞いたことがありますが、4人に1人って、かなり問題のある職場環境のように思うのですが…?
CSRとか何とか言って、これだけ多くの人が精神面で苦労していると考えると、ありえないですよね。予備軍を含めたら、極端な話従業員の半分は病んでるとかになりそう…。「情報通信業」おそるべし。
コンプライアンスとてセーフでも、心情的にはもう少し労働環境改善をしたほうが良いと思います。この資料では、パワハラ、喫煙、労働衛生教育、腰痛予防とか、めっちゃ具体的な労働衛生の調査が出ています。
2014年版「労働経済白書」
では、もう一つ資料の紹介を。2014年版「労働経済白書」です。
同白書には興味深い分析結果がある。03年から13年にかけて、男性は正規雇用労働者の割合が低下しているが、逆に女性の正規雇用の割合は高まっているのだ。25~34歳の層に関しては特に顕著で、減少した男性正規社員分を女性の正規社員の増加で補っているという現象を読み解くことができる。ちなみに女性の正規雇用の割合は各年齢層で高い数字となっており、この10年ほどで女性の社会進出が進んだことを物語っている。
労働経済白書から読み解く非正規雇用の実態とは?
女性活用(女性活躍推進)の雰囲気にも前兆があったということですかね?以下、労働関係の資料です。CSR関係者は実はこのあたりに疎い人が多いので、一度目を通して数字を確認することをオススメします。
■平成25年 労働安全衛生調査(厚生労働省、2014)
■平成26年版 厚生労働白書(厚生労働省、2014)
特例子会社はダイバーシティを逆行している?
働き方、ということで特例子会社の話も少々。そもそも特例子会社って何が特例なのか。
例えば、親会社、子会社含めて、1000人のグループ企業があったとします。法定雇用率によって障害者を2%雇用しなくてはいけないので、雇用すべき障害者数は20名です。ここで、特例子会社を作って、その特例子会社で20名雇用してしまえば、親会社、その他子会社の障害者雇用が0名でも、各社雇用率達成とします。
障害者を雇用するための特例子会社って、ほとんど赤字なんだってよ。
という感じだそうです。具体的な企業は厚生労働省が一覧を発表しているので、そちらをご覧下さい。
で、ダイバーシティ的に課題があると思っていてそれが以下のような話です。
この特例子会社ですが、実は公表されていない(というか、公表の義務がない)ものの赤字の会社がほとんどとなっています(じゃあなぜわかるのかというと、聞いてまわるとほとんどの特例子会社の方々が赤字だと仰るのです)。
それもそのはず、特例子会社自体が、雇用率を達成するために作られた会社であるからです。したがって、黒字を出す意識がない。なぜ設立されるかと言えば、本社の経営陣にとってみれば、雇用率が改善するのであれば…と思って設立を許可する訳ですね。ですから、年間の特例子会社用の予算が決まっていて、「この予算の中で特例子会社を運営してね」という命令が親会社から下り、あまり努力・改善もできないという嘆き節を、先日聞きました。
障害者を雇用するための特例子会社って、ほとんど赤字なんだってよ。
コンプライアンス上は、特例子会社でいいのかもしれませんが、昨今叫ばれているダイバーシティ&インクルージョンみたいな方向性からは逆行していますよね。
女性も男性も障害者も外国人もどの属性の人も働きやすい環境を作る。それが本来あるべき、労働環境です。会社の規模は関係ありません。社員3人の会社でも3万人の会社でも、従業員をないがしろにすることはCSR的にも、コンプライアンス的にもよろしくありません。
もちろん、ハンディのある方が従事しにくい業種・業務があることも重々承知ですが…。キレイごとだけでは進まないのがはがゆいところです。
まとめ
ちょっと労働慣行のまとめをしようと思って、コンプライアンスという視点もいれてみたら、ちょっと読みにくい記事になってしまった気もする…。
まぁいいや。結論としては、労働関連法もあるわけですし、ブラックのレッテルを貼られないように、コンプライアンス意識を持って事業活動をしていきましょう、ということです。
労働関連問題を放置して、従業員に訴えられる企業も世の中ありますが、そういう企業は最低すぎて評価されなくなるのでお気をつけ下さい。
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