行動心理学・行動経済学から学ぶCSR
今回は、「お金と感情と意思決定の白熱教室」(ダン・アリエリー、早川書房)の読書メモ。行動心理学・行動経済学の本です。
アメリカ・デューク大学の教授である、ダン・アリエリー氏の最新刊。ダン・アリエリー教授は、ノースカロライナ大学で認知心理学の修士号・博士号、デューク大学で経営学博士号を取得し、2008年にはユニークな研究が認められイグ・ノーベル賞を受賞しています。
経歴だけだけみると、この人の本はめっちゃめんどくさいものなのかなと思いますが、ゆるゆるです(笑)。ライトな書き方で、アカデミックな話が細かくでてくるわけではないので、さらっと読めます。
面白かったのは、「ソーシャル・プルーフ(社会的証明)」の部分かな。ソーシャル・プルーフとは、自分の意見の妥当性を証明すること、ひいては他人に思わず同調してしまうこと、と本書で定義されています。
日本人は特にこの意識が強いせいか、「横並び主義」という国民性があるとよく言われるのはご存知の通りです。
例えば、お隣の小林さんも上の階の佐藤さんも最新の同じ洗濯機らしい。ウチも買い替えと時だし、同じのにしよう!と。ここで重要なのは、友人が最新式の洗濯機だからといって、使い勝手や機能がとても素晴らしいかは問題ではない点。つまり、クソみたいな洗濯機の可能性もあるのだけど、友人が何人も買ったとなれば、ソーシャル・プルーフが成立し、自分も買っちゃう、と。
これは、社会貢献や寄付行動にも有効な考え方なのだとか。本書では、ホテルのタオル再利用の事例をもとに解説しています。非常に興味深い結果でした。CSRもソーシャル・プルーフ的な考え方も必要でしょうね。
行動心理学・行動経済学あたりは、広く知られているものあるのですが、実際のCSR活動や社会貢献活動のプランニングの現場では聞いた事が皆無です。CSRにおけるコミュニケーションで悩んでいる人がいたら、僕にコンサル・アドバイス依頼をする前に、ぜひこの本を読んでみて下さい、何かのヒントがあるかもしれません。
あっ、いや、その、もちろん、僕にアドバイス業務の発注いただいても何も問題ありませんから!!
中身がとてつもなく濃いかというと、講義形式のためか、そこまででもないです。有名な事例以外にも知りたい人や、行動経済学・行動心理学の最低限の知識がある人には物足りないと感じる人もいるかもしれません。
企業のCSR担当者、マーケティング担当はもちろん、NPOのファンドレイザー、広報担当などの方、広告・コミュニケーション関係の方にもオススメの書籍でした。
お金と感情と意思決定の白熱教室
「行列の店の方が美味しいだろうと思い込む」、「すぐにでも解約したい有料チャンネルの契約をいつまでも続ける」、「ただなら喜んで人助けをするが、少ない報酬ではやる気が失せる」人間の奇妙な行動や心理パターンを面白実験やケーススタディを通して解き明かし、行動経済学ブームに火をつけたダン・アリエリー教授。ビジネスのみならず日常生活にも役立つさまざまなアイディアに溢れたアリエリー教授の集中講義全6回を完全収録した、NHK Eテレの人気番組「お金と感情と意思決定の白熱教室~楽しい行動経済学の世界~」の書籍化。