CSR検定
今回の読書メモは「CSR検定(3級)-公式テキスト」(編:企業社会責任フォーラム、オルタナ、日本財団–監修:松本恒雄)。
2008年から去年まで行われていた「サスティナビリティCSR検定」の全面リニューアル後のテキストとのこと。2011年以降は、オルタナさん、日本財団さんが加わりスケールアップした検定を行っていたようです。
内容は、試験の公式テキストというか、100ページのライトなエッセイ集のような形。著者は43名のCSR業界では著名な方々ばかり。それぞれが各項目を2ページで解説している、というようなもの。人選的には、オルタナさん関係の方が多いのかも。
中でも気になった項目は、富田秀実さん「社会における企業の役割はどう変わってきたか」です。僕は富田さんの、物事の負の側面もきちんと書く両面提示のCSR論が好きなんですよね。
あとは、田中宏司さん「コンプライアンスの本質」かな。CSRにはリスクとオポチュニティの両面が存在すると考えていますが、コンプライアンスの解釈が狭いCSR担当者の方って多いですよね。田中さんのご意見は非常に重要な示唆をくれます。
日本財団の町井さんは、僕が単純にファンなので申し分無しにOKです。町井さんの、ソーシャルなキャリアとか、現場的なCSRの考え方は、いつも僕にCSRの本質への問いをくれます。ロック好きな方で、趣味的にも偉大な先輩です。
一点残念なところが。それぞれの著者の方が2ページしか書いていないので、該当項目を深く学ぶことはできず、でテキスト全体で結局何を言いたいのか?がブレてしまっている感じがしました。
CSRの定義は著者の方々でバラバラなようですし、これだけパワーがある著者の方々のものなので、もっとディレクションをしっかりして、統一感のあるテキストになると、僕が研修とかで拙著と合わせて資料として使えたのですが…。
例えば、CSV(共有価値の創造)のカッコ内の訳もバラバラ過ぎ。さすがに語義の統一は書籍としてしてほしかったです。そこだけ残念でしたね。まぁ、著書をお書きの方々が多いので、気になった著者の本を買ってねということでしょう。
CSRのライトに読める入門書的な書籍、CSR関係の著名な方をお探しの方、CSR部門・部署の方、もちろん、これから検定試験を受けようという方にオススメです。
目次
CSRの歴史と社会的背景
・CSRの歴史的背景(阿部博人)
・CSRの入り口にいる皆さんへ(木内孝)
・日本企業におけるCSRの現状(川村雅彦)
・世界のCSRをめぐる動きとは(下田屋毅)
・大企業と中小企業のCSR(影山摩子弥)
・日本型CSRとは(平田雅彦)
・コンプライアンスの本質(田中宏司)
・企業のCSRレポートの役割と現状と課題(安藤正行)
・ISO26000とは何か(大塚祐一)
・国連グローバルコンパクトとは何か(後藤敏彦)
・SRI-社会的責任投資とは何か(荒井勝)
・自治体によるCSR認証とは何か(泉貴嗣)
社会の中での企業の役割
・企業とは社会においてどんな存在か(鈴木均)
・社会における企業の役割はどう変わってきたか(富田秀実)
・企業にとってステークホルダーとは何か(関正雄)
・企業に求められる必要な対話力とは(大久保和孝)
・消費者重視経営とは何か(日和佐信子)
・社会から尊敬される企業とは何か(坂本光司)
・トリプルボトムラインとは何か(本木啓生)
・世界や日本国内にはどんな社会的課題があるか(黒田かをり)
・法とCSR(松本恒雄)
・企業の社会貢献と寄付(高橋陽子)
・企業と人権(菱山隆二)
社会や地域と共に働くということ
・「社会とつながる働き方」とは何か(町井則雄)
・「会社人」から「社会人」へ(鷹野秀征)
・NPOとはどんな存在か、日本にはどんなNPOがあるのか(田尻佳史)
・企業とNPOが協働する意味とは(岸田眞代)
・ワークライフバランスとは何か(大西祥世)
・ダイバーシティ&インクルージョンとは何か(木全ミツ)
・「プロボノ」とは何か(嵯峨生馬)
・消費者に求められている消費行動とは(葭内ありさ)
必須キーワード
・グローバルな気候変動交渉の動き(足立治朗)
・生物多様性(足立直樹)
・世界の貧困と児童労働(岩附由香)
・エシカルなビジネス(細田琢)
・フェアトレード(中島佳織)
・オーガニック / 有機農業(徳江倫明)
・ソーシャルメディア(市川祐康)
・BOPビジネス(水尾順一)
・障がい者雇用(小林秀司)
・コーズリレイテッドマーケティング(野村尚克)
・社会起業家-ソーシャルアントレプレナー(田中勇一)
・ソーシャルビジネス(森摂)
※一部にコラムあり
CSR検定(3級)-公式テキスト
この本の目的は、すべてのビジネスパーソンにCSR(企業の社会的責任)に親しんで頂き、ここで学んだCSRの考え方を、通常の業務に生かして頂くことです。 CSRの目的は、企業や人(従業員や消費者)の価値、さらには企業や人が属している社会全体の価値を高めるためです。 一人でも多くの方にCSRに興味を持っていただけたら幸いです。
CSRという3文字に込められた意味は非常に奥深く広範ですが、CSR部門の社員であろうとなかろうと、 あるいは企業で働いていないとしても、社会で「働く」うえで知っておくべき知識の一つとえいます。 本書は、検定試験を受験するための教科書としてだけでなく、CSRを体系的に、また多面的に理解する入門書として最適な一冊です。