社会のモノサシ

バリュー・エンゲージメント

先日、先々週に発売となりました拙著の出版記念イベント「未来のモノサシ、社会のモノサシ」を開催しました。ご来場いただいた方、ありがとうございました。

さて、イベントレポートといいますか、いくつか僕自身が「にゃるほどぉ!」と思ったことをまとめておきます。CSRの社内浸透に困っている方は必見です。

課題解決のヒントは「価値観」にあります、という話です。

CSRにおけるバリュー・エンゲージメント

バリュー・エンゲージメントとは何か。

ゲスト・スピーカーの竹井善昭さんが提唱している考え方なのですが、バリュー(価値)をエンゲージメント(つなぐ)するという概念です。

エンゲージメントとは、握手しました程度ではなく、ガッチリ手をつなぐというようなつながりを言います。

広告系でも、エンゲージメントというワードがよく出てくるので、馴染みがある人もいるかとは思います。

では、なぜにCSR活動、特にインナーコミュニケーション(社内浸透)にバリュー・エンゲージメントという考え方が必要なのでしょうか。

ピンクリボン運動

いくつか例を出しながら説明させていただきます。

悪い例として、「私たちはピンクリボン運動を応援しています」といった姿勢の企業が挙げられます。

この文言を読んで何が悪いかわからない人っていますか?

これはですね、「応援してます」って所がダメなのです。だって、これは“独り言”であり、企業のメッセージとしては弱すぎるのです。

例えば、友人に「私は阪神タイガースを応援してます」と言われたら、あなたは何と答えますか?興味のない人は「だからどうしたの?」となると思います。

それと一緒です。企業が「〇〇という社会貢献活動を応援しています」といっても、第三者は何と答えればいいのですか?ってなるんですよ。言うだけなら誰でもできるじゃんってね。

これではコミュニケーションを届けるべき相手にほとんど届きません。

加えて、日本で何百社という企業が賛同して、啓発活動をしていますが、女性のビジネスパーソンの会社での同僚との会話や、女子会での会話に“乳がん検診”の話題が出る事は皆無だと思います。

“乳がん検診”の啓発活動自体の重要性は誰も否定しないと思いますが、「社会において重要な事」と「自分たちの関心事」はイコールではないのです。つまり、エンゲージメントしていないのです。

一応お断りしておきますが、僕も竹井さんもピンクリボン運動自体を否定しているわけではありませんので。

社会のモノサシ
悪い顔しているほうが僕、右は竹井善昭さん

CSRとインナーコミュニケーション

「CSRが社内に浸透しません。安藤さん。どうしたらいいですか?」というご質問をよくいただきます。

CSR推進企業と呼ばれる企業であっても、課題に挙げられるくらいなので、CSR活動を始めたばかりの企業なんて…。CSRの社内浸透が進まない理由は、結局ひとつですよね。従業員にメリットがないからです。

今回のイベントでも竹井さんが言ってましたが、メリットというか、従業員の文脈(価値観)でCSRが語られないのが問題なのです。

例えば、ワインが嫌いな人に、ワインをアツく語っても想いは届かないんですよ。社交辞令で相槌くらいはしてくれるでしょうが、人間、興味ないことにすぐに興味は持てません。

興味がない人に興味をもってもらうって、家族でも難しいのですから、全従業員になんてできるわけないんですよ。

だから、ビジネス系のメディアに寄稿するときは、社会貢献とかCSRとかをタイトルに入れない方が、よく読まれるんです。これは僕が実験済。数倍から数百倍、アクセス数が変わります。

世の中の多くは、社会貢献・CSRの情報を欲しいとは思っていないですから、有名人や時事ネタなどを切り口に語る必要があるのです。

というわけで、インナーコミュニケーション(社内浸透)を進めたいのであれば、従業員の文脈でCSRを語りましょうということです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

バリュー・エンゲージメントがいかに、CSRにおいて重要かがおわかりいただけたかと思います。

今回、出版記念イベントというものを初めてやったのですが、コーディネイトが結構難しいですね。本を読んでから来て下さった方から、購入はしないけどきちゃったという方まで様々な属性の方がいる中で話をする。

とはいっても、数人〜数十人のイベントにはなると思うので、来場者の顔を見ながらもっと話をすべきだったな、と反省。

最低限のCSR・社会貢献裏話と、「価値とは何か」という点は伝えられたのでよかったです。ゲスト・スピーカーの竹井先生ありがとうございました!

ちなみに、2014年1月にも、出版記念イベントをする予定ですので、詳細が決まり次第、当ブログにてご報告させていただきます。