SDGs事例

SDGs調査と企業事例

企業へのSDGsのインパクトは大きく、2015年9月に登場してから5年で一気に広がってきました。いまや上場企業および非上場大企業だけではなく、社員数十人の中小企業でもSDGs推進をする事例が増えています。

しかし、5年たっても169のターゲットで達成できたものはなく(少なくとも聞いたことはない)、コロナ禍の中で逆戻りしてしまったという話も方々で聞くのが現状です。憎きコロナですが、起きてしまったことはしょうがない、さてどうしたものか。

最近はSDGs関連の調査も、以前より落ち着いてきたように思いますが、まだまだ意識調査を中心に潮流に乗り遅れた企業が発信し続けています。(私としてはありがたいですのですが)

また、ただの意識調査から一歩踏み込んで、よりステークホルダーのインサイトに近い情報を引き出している調査もあり、それはそれで興味深いものとなっています。

そこで本記事では、各種SDGs関連調査を振り返りながら、企業動向を見て行きたいと思います。毎度言いますが、日本で各種SDGs調査を網羅的に集めているのは当ブログのみです。ぜひチェックしてみてください。

SDGs関連調査

日本スポーツ振興センター

・日本における認識は海外と比較するといずれも極端に低く、「SDGs/持続可能な開発のための2030アジェンダ」を認識していたのは35%のみで海外(79%)の半分にも満たない。
・海外で「影響あり」あるいは「大いに影響あり」と回答した人(47%)は「全く影響なし」あるいは「少し影響あり」と回答した人 (29%)より多かった一方で、日本では「全く影響なし」あるいは「少し影響 あり」と回答した人 (28%)の方が多く、「わからない」と回答した人も5割を超え海外との差が明白。
当事者も見落としているスポーツとSDGsの関係

ベイニッチ

・約6割のベンチャー/中小企業が「SDGsに取り組んでいない」
・SDGsに取り組んでいない企業のうち、約4割が「興味あり」と回答
・SDGsへの取り組み検討者、約6割が「事業の安定化」を期待
必要性高まる持続可能なビジネスモデル 経営者の約4割が「SDGsへの取り組みに興味あり」! 一方「自社にあった目標が分からない」や「人員的に取り組む余裕がない」の声

日本経済団体連合会

・SDGsを活用した取り組みとしては、「事業活動をSDGsの各目標にマッピング」が最も多く、次いで「優先課題の決定」となっており、いずれも6割を超えている。
・2018年度調査と比較すると、伸び率が最も高いのが「経営への統合(ビジネス戦略にSDGsを組み込む)」(4.2倍)で、ここ数年で、企業行動憲章第10条で求めているSDGsの経営への統合が着実に進んでいることがわかる。
第2回 企業行動憲章に関するアンケート調査結果―ウィズ・コロナにおける企業行動憲章の実践状況―

企業広報戦略研究所

・投資をする際に企業の「ESGに対する取り組みを考慮する」が8割弱
・企業のSDGsに関する取り組み認知、メディア経由は昨年から横ばいの一方、リアルが3.4ポイント伸長
・SDGsの取り組みが認知されると、生活者の7割が行動を起こす
2020年度 ESG/SDGsに関する意識調査

日本能率協会

・SDGsの認知度さらに高まる。約9割の企業経営者が「知っている」
・SDGsに関わる取り組み広がる。6割超の企業が取り組みを実施
・SDGsに取り組む目的 ― 「企業の社会的責任を果たすこと」が8割超
『日本企業の経営課題2020』 調査結果 【第3弾】SDGsの認知度と取り組み状況を報告

AMP

・36%が「SDGs12つくる責任・つかう責任」の内容を把握
・36%が海外に比べ日本国内の問題意識が低いことが課題と回答
・課題解決に向け「日常生活で取り組めることからやっていきたい」と56%が回答
AMP SDGs意識調査「SDGs12つくる責任・つかう責任」 取り組んでいきたい95%

ディスコ

・76.4%がSDGsを知っている
・企業の社会貢献度の高さによる就職希望度への影響は65.2%
就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月)

国際連合広報センター

・最も脆弱な立場に置かれた人々がパンデミックで甚大な影響を受け、さらに取り残される。
・2020年には、およそ7,100万人が極度の貧困に陥るものとみられています。世界で貧困が増加するのは、1998年以来初めてのこと。
・学校閉鎖によって、全世界の学生の90%(15億7,000万人)が通学できなくなったほか、頼りにしていた給食を食べられなくなった子どもも3億7,000万人を超えている。
持続可能な開発目標(SDGs)報告2020|国連の報告書、COVID-19が貧困、医療、教育に関する数十年の前進を後戻りさせていることを明らかに

エーアンドエー

・SDGsの認知経路を聞く設問では、どの年代でも「テレビ」が最も高い。続いて、20~30代では「インターネット(ニュース・情報サイト/アプリ)」が高いのに対し、40~50代では「インターネット(ニュース・情報サイト/アプリ)」と「新聞」が同率で並ぶ
・企業のSDGsの取り組みに対する関心を聞く設問では、41.0%の人が「ここ1年ぐらいの間に、企業の取り組みに対する関心や理解が高まった」と回答
SDGsに関する生活者アンケート調査を実施しましたhttps://a-and.co.jp/news/000030.html

SHIBUYA109 lab.

・社会課題に関して知るきっかけについて聞いてみたところ、最も多いのは「学校の授業(43.1%)」、次いで「テレビCM(22.0%)」「ドラマ・TV番組(21.4%)」という結果となりました。
・企業のSDGsの取り組みについては56.4%が「好感を持てる」と回答しており、社会的課題の解決については、「個人や企業が協力し解決すべきだと思う」という回答が43.8%と最も多く、企業と個人が連携していくことに対して意欲的であることが分かります。
社会課題・SDGsに関する調査

ジャストシステム

・マーケターの約6割が、SDGsを認知。上場企業に限ると、約7割が認知
・76.1%のマーケターがSDGsに取り組むべきとするも、実態は約3割
・SDGsをマーケティング施策に採り入れるときの課題は、「費用対効果の明確化」
76.1%のマーケターがSDGsに取り組むべきとするも、実態は約3割 マーケターのSDGsへの取り組みに関する実態調査

帝国データバンク

・SDGsの達成への貢献によって向上される企業価値では、「企業好感度」が53.3%(「非常にそう思う」と「ある程度そう思う」の合計)でトップだった。「社会的評価」も50.4%で半数超となり、SDGsによって社外からの見られ方に好影響があるとの意見が強い
・企業経営上大切にしていることを1位~3位まで尋ねたところ、「顧客・従業員満足度」が最も高く、「自社事業拡大」、「社会貢献」が続いた
SDGsに関する企業の意識調査

日本総合研究所

・SDGsのことを知っている(「よく知っている」、「多少は知っている」)と回答した若者は全体の44.2%である。
・国内や海外の環境問題や社会課題への関心を持つ(「とても関心がある」「やや関心がある」)若者は、全体の46.8%である。
・大学生、高校生、中学生の男女いずれにおいても、「気候変動・温暖化」への関心が最も高い。
若者の意識調査(報告)― ESG および SDGs、キャリア等に対する意識

日経リサーチ

調査では「事業によるSDGsへの貢献が優れている企業」を3社まであげてもらった。回答者は各社でSDGsを推進する担当者、いわゆるプロで、ランキング上位企業の顔ぶれは、一般消費者が選ぶイメージランキングとは違う結果となった。調査回答637社のおよそ1割の票を集めたオムロンが1位。2位に住友化学が入った。
トップ3はオムロン、住友化学、味の素「事業によるSDGsへの貢献が優れている企業」ランキング

日経リサーチ

2019年に実施した『日経「SDGs経営」調査』で、「環境・社会・経済の課題解決(SDGsへの貢献)を既存事業・戦略・ビジネスモデルの革新や新規事業の創出に組み込んでいるか」を複数回答で尋ねた。67.7%の企業が組み込んでいると回答した。最も多かったのが「既存の事業と社会課題を紐付けている」(65.3%)で、業種別にみると製造業が75.3%、非製造業が55.2%と大きな差が出た。
非製造業の中では電力・ガス(87.5%)と金融(82.0%)が高い回答率だった一方、小売・外食(42.9%)、倉庫・不動産(33.3%)などは低く、業種によるばらつきが目立つ。「既存事業・戦略・ビジネスモデルの革新に組み込む」と「新規事業の創出活動に組み込んでいる」が30%台で続いた。
7割近くが既存ビジネスと紐づけ求められる具体的な取り組み

日経リサーチ

2019年に実施した『日経「SDGs経営」調査』で、環境・社会・経済の課題解決(SDGsへの貢献)に対する方針・計画の明文化について尋ねたところ、回答企業の77.6%が何らかの形でSDGsについて明文化していた。明文化の方法としては「企業行動に関する規範・指針・宣言」(66.1%)、「企業理念」(63.9%)、「中長期経営計画」(57.8%)が多かった。
約6割が中長期経営計画でSDGsに言及先進企業では具体的KPIへの落とし込みが進む

ニューズウィーク

SDGインデックスでスウェーデンの評価は84.7点と第1位。しかし世界中の生態学者が以前から指摘しているように、この国の1年間のマテリアルフットプリント(消費する天然資源の総量)はアメリカと同程度で、国民1人当たり約32トンに上る。これは世界でもかなり悪い水準だ。
極端な例ばかりを挙げているのではない。英リーズ大学の科学者が発表したデータによると、SDGインデックスの上位の国々は資源消費量や温暖化ガスの排出量だけでなく、土地利用や窒素などの化学物質の環境への排出量といった点でも、人口比で各国に許容される範囲を大幅に超過している。
全ての国がSDGインデックス上位国のレベルで消費し、環境汚染を続けていくとすれば、地球の生態系は間違いなく、物理的に破壊されてしまう。つまりSDGインデックスは、エコロジーの観点から見ればつじつまが合わない。それは事実と異なる錯覚を引き起こし、豊かな国は高いレベルの持続可能性を維持しているという間違った印象を与える。

SDGs優等生の不都合な真実 「豊かな国が高い持続可能性を維持している」という嘘

CSR/サステナビリティ推進企業と言われる組織でも普通に不祥事ありますし、ホワイト企業関連アワードを取る企業でも労働問題で犯罪みたいなことを10年以上繰り返す組織もあります。何かの一面で良い評価をされても、それは組織の一部を表しているにすぎず、盲目的になるのはよくないと。

例えば、海外動向に詳しい専門家は、CSR先進企業としてスターバックス挙げる人も多いですが、人権問題とか何件も起こしてかなり叩かれてますから。(叩かれてCSRが強化される、という先進企業は多いのも事実)何事も極端にならず中庸が重要ということでしょうか。

所感

最近は、まだ多くはないですがSDGs視点でまとめた「SDGs報告書/SDGsレポート」を発行する企業も増えています。こちらは予算がある大手企業限定ですが、中堅企業が開示コンテンツをしぼってまとめるのも、読者ターゲットによってはアリだと考えています。上記の調査を見るに、この5年でだいぶSDGsの認知が進んだみたいなので。

もちろん、投資判断基準としてのSDGs視点もあるわけで、上場企業はSDGsを推進しない選択肢はないわけですが、世間一般での認知拡大により、取り組む意義が高まりそうです。

日経の調査の、「環境・社会・経済の課題解決(SDGsへの貢献)を既存事業・戦略・ビジネスモデルの革新や新規事業の創出に組み込んでいるか」という質問に、「既存の事業と社会課題を紐付けている」(65.3%)というのは、さすがに「んなわけあるか!」とツッコミをしてしまったわけですが、ここからでは成果レベル差はわからないとはいえ、「紐付け」が、いわゆる事業マッピング程度なら納得です。

まぁ、この分野の概念としては、この数十年でSDGsは歴代一位の大ヒットであることは間違いありません。ただ、この分野での懸念は、特に気候変動問題の活動家など、企業や政府により進んだ環境対応を迫る人たちは多いけど、実際に気候変動対応実務を行うプレイヤーはあまり多くないこと、でしょうか。

行動の10年では、誰かを批判するだけではダメで、自分自身も環境負荷を極力少なくする行動が必要です。みんなで進むしか道は残されていません。たとえば、人権団体が環境負荷を減らす取り組みをしたり、環境団体が自組織の労働環境の整備を行うとか。

ただ、上場企業でも半分以上は環境対応の活動と開示をほぼしていないので、そういう企業には、外部からどんどん圧力をかけていただきたいです。国内最高峰の企業群であるはずの上場企業がそんな体たらくでいいのか、と。これは私も末端ながら、CSRをしてない企業にはどんどん啓蒙啓発をしていきます。

まとめ

毎日情報収集をしていて思うのですが、SDGsの認知度調査はまだまだ人気(調査会社にとって)ですね。毎年、何十とSDGsの認知度調査をやっているので、“車輪の再発明”というか、ある程度すでに結果がでているのに被せて調査しなくてもいいと思うのですが。

といえ、私は、発表されればされたで内容が気になってしまうし、隅から隅までレポートを読んでしまうんですよね。私みたいな人間が多いから、いつまでも認知度調査をしている…のかも?

国内一(無駄に?)、“SDGs調査”の調査をしているブログだと自負していますが、引き続きキャッチアップして、読者のみなさまにお伝えしていきます。

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