CSV/サステナビリティ・マーケティング
最近は、SDGsの文脈もあり、東日本大震災直後のコーズマーケティング以来の、CSV(サステナビリティ・マーケティング)についての盛り上がりを感じています。CSVも来年で、マイケルポーター教授らの提言から10年です。CSV提唱の本家ネスレでは2005年のCSRレポートから使い始めたそうなので、もう15年以上たちます。CSVを冠にした部門を持つ企業も一時期ほどではないにしても、いまだに数十社程度はあります。
コロナの影響もあり、従来のCSVとは異なるパターンの事例も生まれ始めています。もちろん、企業側ではなく消費者側も変化してきています。CSVに通じる各種調査をまとめ、傾向を探ってみます。CSV推進の参考にしてみてください。
CSV/サステナビリティ・マーケティングのヒントになる調査
トライベック・ブランド戦略研究所
どの取り組みも「社会的に意義のある取り組みだと感じた」が最も高く、中でもシャープとトヨタの取り組みについては非常に高いポイントとなりました。
これまで経験したことのないマスク不足は人々に大きな衝撃を与えました。2月中にマスク生産の意向を発表したシャープの対応には「非常事態における対応能力の高さを感じた」の評価が高く、「企業に対する信頼が増した」「企業に対する好感が増した」の評価にもつながったようです。
第87回:新型コロナウイルス感染症拡大における企業の取り組みについて
日興リサーチセンター
様々な商品・サービスにおける持続可能性のうち、「パーム油のサステナブル認証」「フェアトレード商品」「人工肉」については、全体平均では意識されていなかったが、Z世代の男性は、男性50代やZ世代の女性よりも意識的であった。また、ミレニアル世代についてもZ世代ほどではないが、同じような傾向が確認された。
生活者アンケートデータからみたZ世代やミレニアル世代の持続可能性に対する意識
楽天インサイト
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けてから、「サステナブルな買い物」に対する意識が強まった人は3割超。特に女性20代と女性60代では4割超
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けてから「サステナブルな買い物」を意識するようになった理由は、「節約意識が高まったため」「家で過ごすことが増え、暮らし方を見直すようになったため」「健康や安全への関心が高まったため」
楽天インサイト、「サステナブルな買い物に関する調査」結果を発表
ブランド総合研究所
調査の結果、「トヨタ自動車」は1割を超える10.3%から同社がSDGsに「本格的に取り組んでいる」と評価されたほか、16.7%が「少し取り組んでいる」と評価されている。社会貢献(CSR)活動のほか、科学技術、世界平和、法令順守の4つのESG活動の項目でも1位となり、ESG活動20項目の総合評価でも1位となった。
SDGsへの取り組みが消費者から高く評価されている企業ランキング、3位旭化成、2位アサヒビール、1位は?
日本リサーチセンター
社会的課題解決のために自ら積極的に活動したいという「積極的活動意向層」では、社会的課題に取り組む企業に対して【購入】【仕事(就職)】【クラウドファンディング】【投資】の意向が半数以上と高い。また、【情報収集】【口コミ】【SNS】といった情報収集・伝達意向も強く、情報拡散力も期待される。
これらはビジネス上の各種メリット(売上、人材確保、資金調達、PR)となることから、ビジネス組織内・外でのキーパーソンとして見逃すことなく、さらにこの層を厚くしていく取り組みが必要。
社会的課題に関する生活者意識調査結果(後編)社会的課題意識を育て、ビジネスの原動力に~積極層強化とともに、低関心層を取り残さないために
ジャパンネット銀行
実際にどのくらいの人が「応援消費」を行っているのかというと、実際に「応援消費」をしたことがあるのは3人に1人、全体の34%だった。
とはいえ「応援消費」をしたことがない人でも2人に1人は「応援消費」を魅力的な考え・行為と思っており、今後「応援消費」が広まっていく可能性が高いと考えられる。
株式会社ジャパンネット銀行:「応援消費」に関する意識・実態調査
豊島
普段の洋服・ファッションを選ぶ際のポイントについて質問したところ、「デザイン」「価格」を選択した人は74%以上、次に「素材」「機能性」が続いた。また「環境への配慮」は5.3%と、低水準であることが判明。
70%以上が〝エシカル&サステナブルなファッション〟を取り入れたい
博報堂
「環境・社会に配慮した商品・企業」が、これからの購買の判断基準に
・今後の購買意向では「環境・社会に悪影響を与える商品・企業」に対する不買や「環境・社会に配慮した商品」に対する購入意向が約7~8割にのぼる。
・現在の購買実態と比較すると「環境・社会に配慮した商品」に対する購買意向は購買実態より40ポイント前後高く、これからの生活者の購買行動における判断基準となることが予想される。
博報堂「生活者のサステナブル購買行動調査」
ジャストシステム
企業の社会貢献活動により、その企業に対して「良い印象を持つことが多い」と答えた人は16.7%、「良い印象を持つこともある」人は40.8%、一方、「印象に影響はない」人は14.1%、「印象に影響がないことが多い」人は12.7%でした。
企業の社会貢献活動などを知ることで、その企業が提供する商品・サービスについて「購買や利用の意欲が増す」人は11.9%、「購買や利用の意欲が少しは増す」人は33.0%で、4割以上の消費者に好影響を与えていることがわかりました。
ジャストシステム|『消費者と企業の社会貢献活動に関する実態調査』
神奈川県
関心度については「非常に関心がある」が12.6%、「少しは関心がある」が64.1%で合わせると7割を超えた。出来そうなこと・実践していることについては、「マイバッグの持参」が83.3%と最も多く、以下、「マイボトルの持参」64.4%、「地産地消」62.6%、「必要なものを必要な時に必要な分だけ購入」58.5%、などと続いた。
エシカル消費「知らない」が54% 7割が関心 神奈川県調査
Bace
「Q1. モノを買う際に、「エシカルさ」はどの程度重要だと考えていますか?」(n=111)と質問したところ、「とても重要」「重要」「どちらかといえば重要」と回答した人が83.8%と、ほとんどの人にとって、エシカルさが商品購入時に重要だと考えていることが判明しました。
「エシカル」という言葉を聞いたことがある東京在住の20~40代女性111名を対象に「チョコレート」に関する調査を実施し、その結果を発表しました。
消費者庁
「倫理的消費(エシカル消費)」の認知経路について、「テレビ」と回答した人の割合 が 57.8%と最も高く、「新聞」50.0%、「行政のウェブサイトや広報物」14.7%、「イ ンターネットニュースサイト」14.2%、「仕事の関係」9.2%と続きます。
・前年度から、「新聞」が 9.1 ポイント、「行政のウェブサイトや広報物」が 7.1 ポイント、「テレビ」が 4.0 ポイント、「仕事の関係」が 3.9 ポイント増加しました。
・前年度から、「インターネットニュースサイト」が 9.8 ポイント、「動画配信・動画共 有サイト」が 4.1 ポイント、「ブログ・その他ウェブサイト」が 2.6 ポイント、「SNS」が 2.5 ポイント減少しました。
令和元年度「徳島県における『倫理的消費(エシカル消費)』に関する消費者意識調査」について
アクセンチュア
最近の先進国のトレンドは「無関心化」と「低ロイヤリティ化」。消費者が製品・サービスを買う際への興味や関心が薄れているといいます。先進国では3~4割の消費者が情報探索をしないまま製品やサービスを購入。「無関心トレンドは依然として継続している」。消費者の70%以上が重要な社会問題に対して企業が明確な態度を示すことを期待しています。この傾向は若い世代ほど強く18~24歳の回答者は80%を超えています。
「無関心化」する消費者、「無表情化」する企業 アクセンチュア調査
経済広報センター
企業が社会からの信頼を今後さらに勝ち得ていくための重要事項としては、「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する」が85%と最も高い。続いて、「社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する」が44%、「経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する」が42%となっている。
「第21回 生活者の“企業観”に関する調査」
エデルマン
日本の消費者の6割が、ブランドの社会的・政治的問題に対するスタンスによって購買行動を決定していることが明らかになりました。昨年の39%から21ポイントもの上昇を見せ、調査対象国8カ国において一番の伸び率を記録しており、全8カ国平均の64%にも追いついてきています。
2018 エデルマン・アーンドブランド
電通
メード・イン・ジャパン(日本製品)のイメージでも評価の高かった「品質が良い」が、全カテゴリーで上位に。日本製の強みが発揮できそうです。
他方で、サニタリー、トイレタリー製品は値段に次いで「環境や社会に考慮して開発されている」という課題視点がトップ3に、食品や飲料でも4位にランクイン。CSR(企業の社会的責任)的な観点だけでなく、マーケティングや企業・自治体の取り組みとしても、環境や社会への配慮は必要になってくるのではないでしょうか。
ジャパンブランド調査|日本製品で買いたいものは? また、その理由は?
アリソン・アンド・パートナーズ
アジアの消費者がブランドのどの部分に最も価値を見出すのかという調査結果も含まれています。全体的な傾向として上位2つに「社会的責任を果たしていること」と「消費者の好みに合ったビジュアルレベルであること」があげられます。「アジアの消費者は、良い製品であることだけでなく、見た目にも優れたブランドを選ぶことで消費者の印象がよくなるブランドに価値を見出すようです」
コンテンツ・マーケティングをグローバルで展開するアリソン・アンド・パートナーズ、「ソーシャルメディアと購買動向に関する調査(アジア版)2017」を発表
まとめ
ウィズ・コロナ/アフターコロナの時代に、行うべきCSVやサステナビリティマーケティングのあり方が見えましたでしょうか。
いわゆるポリティカルコンシューマー(政治・社会課題に対して自らの態度を明確に示す消費者)が、日本にも増えているのは間違いありませんし、各種調査によれば、一定数の消費者は社会・環境問題に高い意識をもっているし、ハマれば成果が出せるマーケティング施策になりそうです。
CSVというと、「従来のビジネスの社会性を高める」か「社会貢献活動のマネタイズする」かで、経済合理性の高いCSR活動(サステナビリティ推進)ができたわけですけども、最近思うのは、もっと自由に発想して、たとえばNGOとパートナーシップを組んでソーシャルビジネスを始めるとか、業界団体を作ってその中で自社のノウハウを社会に共有する(コンサルビジネス)とか、色々できると思うし事例も増えていますよね。
とにかく、土台はゼロではないことはわかった、さてどうするか。コロナショックで売上も落ちて、CSR予算も削られる中、もう見切り発車でソーシャルビジネスを始めて、自分の予算は自分で稼ぐくらいの気持ちが必要なのかもしれません(スモールビジネスであれば可能性はあると思います)
最後に身も蓋もない話で恐縮ですが、CSVであるかは企業側でどう定義するかだけであり、CSVだろうがそうでなかろうが、定義自体が何か新しい価値を生むわけではありません。毎度の話で申し訳ないですが、CSVでもCSRでもいいから、競合よりも早くスタートしないさいよ、と言っておきます。凡庸な企業でも、早く始めた分、他社をリードできますから。競争優位の条件として「時間」もあるということです。
CSVに関してご質問あがあればご連絡ください。メール返すくらいなら無料で色々お答えします。
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