サステナビリティへの執念
今回の読書メモは「サステナブル経営と資本市場」(北川哲雄、佐藤淑子、松田千恵子、加藤昇:日本経済新聞出版社)です。
本書は、投資家サイドではなく、企業の特に経営サイドからみたサステナブル経営についてまとめられています。ただ、CSRクラスタからみるサステナブル経営とはニュアンスが違い、いわゆるIRよりの話が中心ですので、環境担当のCSRの方などでは、ちょっと読みこなすのが大変かもしれません。
CSR担当の方が面白いと思うのは「8章:統合報告の目的適合性についてー財務資本提供者を見据えての情報開示とは何か」や「9章:SASBの提唱するサステナブル経営」の情報開示に関する項目、あたりでしょうか。
特に統合報告書に関しては「SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)」のマテリアリティに関する話題をよく見聞きするようになりました。投資家向けということでIIRCなども近い立ち位置ですが、「業界特有のマテリアリティ」を明確にしているのはSASBだけです。「SASBって、よく聞くようになったけどイマイチ理解していない」という人は、まさに本書がうってつけです。私もこちらが専門というわけではないので、しっかり読み込みます。
ただ、私が最近感じている問題意識に「マテリアリティの見直し」がありますが、この明確な対応方法があまり書かれていなかったのが残念です。マテリアリティを決めるのは、実はそこまで難しくないのですが、一度決めたものを毎年見直す(必ずしも変更はしない)わけですが、どのタイミングで修正をするか非常に悩ましいのです。
一つの仮説というか、実際に企業事例であるのですが「マテリアリティの抽象度を“少し”上げる」ことをしている会社があり、この方法論であれば、オペレーションはやりやすいなと考えています。ただ非常にバランスが難しく、そもそも具体的な項目を選定するのがマテリアリティなのに、抽象度を上げ過ぎると、それマテリアリティじゃないじゃん、となってしまう点があり、なかなか難しい課題なのです。
だた前述のSASBの箇所を含めて、いろいろと思考実験ができる良い本でした。北川先生の著書はわりやすいのでCSR担当者の方にもオススメです。
さて、蛇足ですが、企業によって「サステナブル経営」と「サステナビリティ経営」と2つの使われ方があります。日本的にはほぼ同義語と考えていいと思いますが、英語的にはどんな差があるのでしょうか。検索エンジンでは混同されている様子がわかりますが、どうなのでしょう。今度このカテゴリの英語に強いKさんに聞いてみようと思います。
サステナブル経営と資本市場
今企業に求められるのは、原点に戻ること。その原点とは「競争力」(企業価値)の向上だ。優れた実績を残している企業は、イノベーションやビジネスモデル革命を引き起こし、かつステークホルダーからも信頼される「サスティナブルな経営」を行っている。経営者を筆頭に「自らの経営する企業のサスティナビリティ(持続可能性)について執念をもって立ち向かうこと」がまず重要なのである。