SDGsとCSV

今回の読書メモは「SDGsが問いかける経営の未来」(モニターデロイト、日本経済新聞出版社)です。著者はCSV論で有名な藤井剛さんらです。

前半からかなりうなずきながら読みました。あと、グローバルでの視点がメインで、日本でのSDGsというというよりは、グローバルでのSDGs対応をまとめています。事例や調査なども基本的にグローバルのものが中心となっています。SDGsのマーケティング側面を学ぶには、最近のSDGs本・書籍だと、一番よいのではないでしょうか。全体的に戦略面の話が中心となっていて、CSV的な発想を軸に、どのようにSDGsに取り組めばいいかをまとめた良書です。

ちなみにCSRは、組織としてもマイケルポーター教授と近いということもあり、CSRを「善行」と定義してますのでお間違えないように。本書には一般的と書かれていますが、最近のCSRでは善行と定義されることのほうが少ないように思いますが…。ひとそれぞれなのでこれは以上です。

特に興味深かったのは「第2部 企業から見たSDGsの読み解き方」でしょうか。そもそもCSRは主語が企業ですが、SDGsは世界・社会が主語ですので、本来は同じ土俵で語るべきではないのですが、そのあたりも言及されているのは良いです。17のゴールを、企業としてどのように解釈すべきかの解説は、企業担当者の初級編としてもわかりやすいです。社内の勉強会は、この本をアジェンダにして議論すれば、かなり本質的な場になるかもしれません。

世の中のSDGs関連本はSDGsのポジティブな面を書きすぎて、これらの本こそが昨今のSDGsウォッシュの元凶なのではないか、と思うくらいです。本書ではSDGsウォッシュ対応法が体系的にまとめられてあるので、漠然としたイメージだった人なんかはわかりやすいのでないでしょうか。

欲をいえば、全否定されているフィランソロピーの立ち位置もSDGs対応には重要だと思うので、言及していただけるとよかったかな。(ビジネスにならないSDGs対応は、戦略ではないのでしないでいいのでしょうか?)私の読み方が足りないのかもしれませんが、すこしモヤモヤしました。

大手企業のCSR担当者はもちろん、経営企画部門の方は必見の良書であります。また、企業のCSR/SDGsを支援する側(コンサルティング会社)は、そっと買ってノウハウを吸収したほうがいいと思います。マジおすすめ。

SDGsが問いかける経営の未来

本書はSDGsの解説本ではない。国際社会の共有ビジョンたるSDGsを楯にコンプライアンスを提唱する本でもない。類似のキーワードであるESG投資と絡めて資本市場での企業評価を高めるための情報開示の在り方を指南する本でもない。社会価値創出が経済価値創出と同等に企業活動において重要な時代が、SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)を旗頭にいよいよ幕開けしたいま、企業の経営目標の在り方、経営戦略・事業戦略の在り方、事業創造の在り方を根本から検証し、不確実性高まる2030年に向けて、経営者はどのように経営モデル自体のイノベーションを果たし、この大いなる変化を生き抜くべきか、問いかけることを企図した書である。