CSRウェブコンテンツの調査
先日、我々が発表した「CSRコンテンツ充実度ランキング2019」はご確認いただけましたでしょうか。
>>プレスリリース・ページ
本記事では「CSRコンテンツ充実度ランキング2019」(第3回CSRコンテンツ充実度調査)について、調査をした感想といいますか、プレスリリースには掲載していない気づきの部分を共有できればと思います。
そもそもの調査背景として、CSRウェブコンテンツ(以下、CSRコンテンツ)において、ここ数年で大きな変化が起き始めています。昨今では、CSRの詳細情報を冊子からコーポレートサイトに移行する企業が増えています。これはすでに気づいている方や制作担当者の方も多いでしょう。
そんな中で、印刷を意図した冊子は作らずCSRコンテンツをそのままPDFにまとめるレポーティング形式も増えており、CSRコンテンツが実質的なCSRレポートの役割を果たすにようになってきている、という現実があります。ということは、単純にCSRコンテンツの重要度が高まっているとも言えます。だからこそ調査をしっかりたほうがいいと思っていたのですが、日本で誰もやっていないかったので、もう自分たちでやろうや、となったという話です。
全体の雑感
今回調査したのは「公開されているコーポレートサイトおよび特設サイトの、日本語表記のCSR/CSV/SDGs/ESG/サステナビリティ/社会貢献/環境活動関連ウェブコンテンツ」です。様々な名称のCSRコンテンツがあるので、調査する側としては一苦労でございます。
現時点の課題でいえば「IRコンテンツとの連動」でしょう。一部の企業は、CSRコンテンツをIR(投資家・専門家向け)によらせて構築しています。これは悪いことではないと思うものの、だったらIRコンテンツのESG情報の充実、のほうがわかりやすいのではないか、という疑問も同時に感じています。
基本的に、読者のステークホルダーごとに情報ニーズは異なります。CSRコンテンツを投資家向けにしてしまったら(統合報告書を作ってCSR報告書を廃止する、とか)投資家以外のステークホルダーの情報ニーズに対応できない可能性がでてきてしまいます。すみわけというか、CSRとIRを読者ターゲットごとに最適化したものにする必要があるのかもしれませんね。ウェブの場合は冊子と違いハイパーリンクでいくらでもつなげられるので、よりこの方向性が重要なのかもしれません。
今年の特徴
本調査における評価得点の差についてですが、結論「戦略面の情報開示」の差だったと言えるでしょう。そもそも戦略構築に関しては片手間で行うレベルではできず、また経営層のコンセンサスとコミットメントが必要となるため、CSR推進レベルのバロメーターにもなります。戦略面の情報開示が進んでいる企業は東洋経済新報社のCSR調査等でも評価が高いのが特徴です。
SDGs対応に関しても、既存事業をゴール別にカテゴリ分けしたレベル(初級レベル)から、マテリアリティ特定の指標にしたり、価値創造プロセスに盛り込んだり、リスクと機会のフレームワークとしたりと、戦略レベルまで組み込めている(上級レベル)企業は残念ながら多くありません。たとえば本ランキングのトップ30社でも、戦略面の開示が1位と30位でそこそこ差があり、それが得点差としてそのままでているとイメージしてください。
これらの企業でも冊子版の報告書は本当に力を入れて作っているのに、ウェブ開示が適当ということで評価を落としてしまっている例はたくさんあります。やっているなら、PDF添付だけの手抜きはしないでちゃんと開示してくださいよ。もったいない。
他には「トップページがわからない問題」もありました。「グローバルサイト(日本語)」と「日本語・企業サイト」でCSRのトップページが異なっていたり、「社会」「環境」とカテゴリーが細分化されすぎてどこに必要な情報が掲載されているかわからないコンテンツなど。
あなたは「社会」と「環境」という2カテゴリがあった場合どちらにCSR報告書が掲載されているかわかりますか?つまり、読者となるステークホルダーに深く考えさせてはユーザビリティが低下するので、企業側できちんと設計しましょうよ、という話です。
他にも色々ありますが、このあたりが特に気になった点です。来年はどれくらいの企業で改善が進むのでしょうか。楽しみですね。
まとめ
本記事は調査を振りかえってということで、おおまかな部分をまとめましたが、さすがにここだけでは語れない気づきがもっとありました。これは我々の研究会「サステナビリティ評価研究会」のほうで、議論しながら会員企業様にノウハウや気づきを還元していければと思います。
CSRコンテンツの充実は、ステークホルダーの企業評価に直結しています。統合報告書やCSR報告書の制作で満足せず、ぜひウェブコンテンツの方も、もう少し力を入れてみてはいかがでしょうか。
>>プレスリリース・ページ