アニマルウェルフェアと企業倫理
今回の読書メモは「アニマルウェルフェアとは何か〜倫理的消費と食の安全」(枝廣淳子、岩波ブックレット)です。本書はいわゆる小冊子であり70ページほどのボリュームのもの。冊子というよりはレポート・論文に近いかもしれません。
「アニマルウェルフェア」を訳すと「動物福祉」です。サステナビリティが持続可能性とされるように、日本語訳がイマイチなので、サステナビリティと同じく、そのままカタカナで表記されることも多いようです。このアニマルウェルフェアには「動物たちはその動物本来の行動をとれる幸福な状態でなければならない」という背景があるそうです。
動物の人権問題といいますか、この視点は特にヨーロッパは特徴的な印象です。エシカル(倫理的消費)などで、最近はよく取り上げられます。日本ではまだまだですが、ヨーロッパではそれなりの市場規模になっているようです。
当然、投資家もアニマルウェルフェアを企業が行なっているか調査します。今現在、合計約370兆円を運用する23の機関投資家がアニマルウェルフェアに関する宣言に署名をしているとされているため、日本企業でもマテリアリティの項目とするところも、今後でてくるかもしれません。
本書では、世界の最新状況と日本との対比で解説されており、日本人にも読みやすくなっていました。
CSRとは「グレーなビジネスの線引きを行う作業」でもあります。つまり、自分たちの企業倫理を明確にし、各種法律に対応するのはもちろんのこと、それ以上に食料品などの素材自体にも倫理観をもってビジネスを行うと。今まで、儲かれば動物の生きる権利など気にしなかった企業経営者も多いと思いますが、世界でビジネスをするのであれば、それでは配慮がたりないよ、ということなのかもしれません。
私はCSR活動のテーマとしては理解していましたが、今回読んで、改めてトレーサビリティやサプライチェーンマネジメントの幅が広がっていると実感しました。食に関わるビジネスをしている企業のCSR担当者は必見です。
◯参考情報
・農林水産省|アニマルウェルフェアについて
・家畜改良センター|動物福祉(アニマルウェルフェア)とは?
アニマルウェルフェアとは何か
「動物たちは、その動物本来の行動をとれる幸福な状態でなければならない」――欧米で畜産動物にも取り入れられているアニマルウェルフェアの考え方と取組みを紹介するとともに、日本の畜産の現状を報告し、対応が急務であることを説く。