CSRと経団連
先日、日本経済団体連合会(以下、経団連)から、「企業行動憲章」の改定と「社会貢献活動実績調査」の発表がありましたのでシェアします。企業行動憲章とは、経団連の会員企業約1,350社が順守し実践すべきガイダンス・ガイドラインのことです。
結論からいいますと、企業行動憲章改定はSDGsの影響が大きくなり、社会貢献活動実績調査では全体的に金額が増えています、ということでしょうか。
本記事では、概要の紹介とその数字を見てどうすべきか、という視点をまとめたいと思います。
社会貢献活動支出額
社会貢献活動支出額は回答企業全体で2,049億円に上り、1社平均では5億9,700万円と調査開始以来最高となった。東京オリンピック・パラリンピック、持続可能な開発目標(SDGs)への対応をはじめ、社会貢献活動の取り組みが強化されていることが増額の要因と考えられる。また、2015年度・2016年度に連続して回答した企業の支出額に注目すると、前年度から支出額を増やした企業がおよそ3分の2であり、企業の一般的な傾向として社会貢献支出を増やしたことが伺える。
2016年度 社会貢献活動実績調査結果」
毎年の調査ですので、そこまで大きな変更が行われたというわけではなさそうですが、数字の伸びが興味深いです。一応350社程度のデータなので調査数値の信ぴょう性もありますが、社会貢献支出は「景気に左右する」ものであるというセオリーがあり“調子のよい大手企業が多かっただけ”という考察もあります。
ただし、この2年くらいの東京オリンピックとSDGsの盛り上がりはとても企業CSRに影響を与えているのは事実で、これが2017年度でどこまで伸びているのか、とても興味があります。
「東京オリンピック・パラリンピックに関する社会貢献活動を実施している企業は21%、検討している企業は14%、スポンサー企業の取り組みや問題意識が先行」という数字は、まぁ妥当でしょう。
興味深いのは「SDGsの考え方の取り入れを何らか実施、検討している企業は約7割」という部分でしょうか。SDGsは大手企業を中心に500社程度は、各種レポートやウェブコンテンツでふれているのではと思っていましたが、まさにそのとおりらしく、「CSR/社会貢献に興味を持つ企業」の中ではSDGsの存在感は絶大ですね。
調査概要
■社会貢献活動支出調査結果
1、社会貢献活動支出額
2、指標毎に見る社会貢献活動支出額
3、要素別・種類別の社会貢献活動実施状況
4、2016年度災害被災地支援に関する支出額の内訳
5、税務上の寄付金の処理
■社会貢献活動特別調査
1、社会貢献活動への取り組みについて
2、東京オリンピック・パラリンピックに関する社会貢献活動について
3、持続可能な開発目標(SDGs)との関係について
4、東日本大震災、熊本地震からの復興支援の状況について
2016年:2015年度 社会貢献活動実績調査結果
2015年:2014年度 社会貢献活動実績調査結果
2014年:2013年度 社会貢献活動実績調査結果
企業行動憲章の改定
経団連では、Society5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱として企業行動憲章を改定する。会員企業は、持続可能な社会の実現が企業の発展の基盤であることを認識し、広く社会に有用で新たな付加価値および雇用の創造、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した経営の推進により、社会的責任への取り組みを進める。
経団連|企業行動憲章の改定にあたって
2010年に「ISO26000」の登場とともに改定された行動憲章ですが、SDGsの登場により7年ぶり5回目の改定です。GPIFも経団連もSDGsを超・積極的にプッシュ。これでいわゆる国内トップオブトップの企業群である上場企業や未上場大手企業などは、SDGsへのそれなりの対応をしないと、競合に見劣りする情報開示しかできない、なんてことになりそうです。
外資系企業も日本的なCSR情報開示は皆無でしたが(日本語のCSR関連レポートをそもそも出してない大手外資系も多かった)、SDGsは一応世界共通言語ですので、国内での情報開示が広がる可能性があります。楽しみですね。
参考資料
・企業行動憲章実行の手引き(第7版、PDF)
・企業行動憲章の主な改定ポイントと関連するSDGsの目標の例(PDF)
・Society 5.0 for SDGs(PDF)
SDGsの課題
SDGsの課題としては“チャラい”人たちが増えていることでしょうか。これは私もCSR支援を始めた数年はこうだったと思うのですべてが悪いとはいえませんが、流行っているからビジネスにしようという人が増えて微妙なトラブルも増えています。
一時期の「CSV」とかもそう。ビジネスになりそうだからと、支援側のみんなが突っ込むのもわかるけど未熟すぎて本質が全然伝わっていないことが多いです。まぁ今のCSRも同じで、わかったフリして支援する人たちはたくさんいます。で後で困るのは企業サイド。目利きできないなら、まずは名実ともに専門のプロを頼ったら?とも思ってしまう。
まずはSDGsという考え方が広まればいいのだと思いますが、表面的な話や理論的な話ばかりでは、2030年に達成なんてぜったいできないから。今50代の方は2030年前に上がれると思いますが、2030年には私はまだ40代なので、どうにか達成するのに必死ですよ。(愚痴っぽいですが本気でそう思っています)
関連記事
・SDGsへの企業対応事例増加による、CSRの3つの課題
・SDGsの日本企業対応事例と進捗レポート
・SDGsの企業対応事例(面白ネタあり)
まとめ
経団連の大きな2つの発表から愚痴まで色々まとめてしまい申し訳ありません。
私は、社会貢献にもSDGs対応にも「戦略」が重要だと思っています。しかし、同時にPDCAをまわす「現場」も大事だと最近は思い始めました。CSR先進企業の不祥事をみれば、戦略と情報開示で評価されても、結局、現場でCSRがまわっていないと意味がないと、皆さんも気づいたことでしょう。
サステナブルな社会と企業を作るために、私も微々たる貢献ですが、今後もがんばっていこうと思います。