CSRは企業価値に貢献できるのか
なんと、CSRは企業のパフォーマンスにも大きな影響を与えていたのです…。
本記事では、3月末に行われた「第10回東洋経済CSRセミナー:CSRデータの分析から見えてくる企業の本当の姿」のセミナーのメモです。有料セミナーにつき資料公開はできませんが、私のメモを公開しますので参考にしてみてください。
今回はCSRのパフォーマンスで見た側面と、東洋経済新報社の調査担当者から見た側面、という日本でまさに最前線のCSRデータに関する話を聞けたセミナーでした。さすがにCSR支援側の人たちも結構きてたみたいです。
「CSRは企業価値向上に貢献できるのか」。これはCSR支援をする人であれば「Yes」なのですけど(営業トーク含めて)、研究者の研究結果として証明できのかは別問題でございます。
なお、セミナーの最後に質問コーナー(パネルディスカッション)があったのですが、今回は進行役を担当させていただいていたので、特にメモはありません。
講演1
永田京子 氏(東京工業大学 工学院 経営工学系准教授)
・CSRは企業価値に貢献する(正の相関)と言えるが、相関が強いとは言い難い
・CSRにおける「エージェンシー問題」には注意が必要
・CSRは成果が見えにくいのにコストをかけすぎな側面もある
・寄付(フィランソロピー)は企業価値に貢献しにくい
・CSRの「適性予算」は存在するかもしれない
・CSRの「方針変更」はネガティブなマーケット反応となる可能性がある
・外国人株主が多いとモニタリング効果によりCSRが進むかもしれない
・CSRは「将来キャッシュフロー」に貢献する
講演2
岸本吉浩 氏(東洋経済新報社『CSR企業総覧』 編集長)
◯CSR活動に重要な3つの視点
1、会社に関わるさまざまな人を大切にしているか
2、事業活動で社会に迷惑をかけないようにしているか
3、社会課題解決に貢献しようとしているか
◯CSRランキング上位企業の特徴
1、業績が安定している
2、CSRの主要テーマを網羅している
3、KPIの改善向けた努力をしている
4、幅広い情報開示が行なわれている
・CSR活動によって企業は「信頼される会社」になれる
・CSR以前に本業で利益を上げるなければならない
・ESG投資によってCSR情報開示の流れが大きく変わる可能性がある
・統一開示基準は国が進める必要があるが少し先になりそうだ
・ESGだけで企業のすべてを評価できない
まとめ
日本におけるCSRの研究はほとんど行われてきませんでした。
研究する人がいないというのも当然ありますが、日本企業の非財務情報開示レベルが低くそもそも調査ができるレベルではない、というような背景も影響したかもしれません。それが震災(2011年)以降、研究のメインストリームに入り始めているようです。でもまだまだ企業の情報開示が足りないそうです。
今後は永田先生も含めて、近しい領域の学問の研究者もCSR情報を調査に使うかもしれませんし、企業とCSRの新しい関係性がもっと発見されるようになるでしょう。CSR支援をする人間としてはこういったエビデンスを活用させていただき、日本社会の経済的・社会的発展に貢献できればと思います。
今回は東洋経済さんのCSRセミナーらしい内容だったと思います。CSR支援のコンサル会社やシンクタンク、監査法人でもこういう内容のCSRセミナーしませんからね。永田先生の話も岸本さんの話も非常に興味深かかったです。
ちなみに次回の東洋経済CSRセミナーは2017年7月となる予定だそうです。機会がありましたら、当ブログでも告知させていただきます。