BtoC企業

BtoC企業とBtoB企業

最近「BtoC企業とBtoB企業のCSRの違い」について聞かれることが多かったので、本記事ではそのあたりをまとめたいと思います。

誤解がないよう確認しておきますが、BtoC企業(一般生活者が主要顧客)だろうがBtoB企業(法人が主要顧客)だろうが、また、中小企業だろうが大企業だろうが、製造業だろうが非製造業だろうがCSRに関する考え方は同じです。異なるのはCSR活動やCSRコミュニケーションという実務レベルの話です。

僕はCSRコミュニケーションが専門の一つであり、このあたりの議論を様々な方とするのですが、結論から言いますと、BtoB企業はCSRコミュニケーションにほとんど関心を持ちません。あるとしてもCSR報告書制作に関わる部分やIRの部分だけです。

CSRの具体的な活動の中でステークホルダーとの関係性を改善していこうというBtoB企業は皆無です。でもそれってなぜなんでしょうか?

BtoBとBtoC

BtoB企業の課題

「BtoC企業とBtoB企業のCSR活動の違い」として顕著になるのは、CSRコミュニケーション(ステークホルダーエンゲージメント)です。

そもそも少ない顧客数でビジネスをまわしているBtoB企業の場合では広報機能もほとんどなかったり(売上数千億円の上場企業でも専任広報がいない企業もあります)、そういう企業ではステークホルダーとのエンゲージメントといっても、ピンとくる人はほぼいません。

BtoB企業のCSRって、メインはリスクマネジメントですもんね。良くも悪くもステークホルダーとのエンゲージメントといってもイメージができにくい、という点もあるかもしれません。

BtoC企業のCSR

たしか「BtoC系企業では、CSRは業績にプラスの効果がある」なんて研究結果がどこかで発表されていた気がします。そうなるロジックがあるのであれば、コミュニケーションやエンゲージメントを含めて積極的になりますよね。

最近でいえば、CSV(共有価値創造)なんかもBtoC企業が中心ですよね。インフラも扱う超大手企業になればBtoB企業でもCSVという単語をCSR報告書などで使っている企業もあります。CSVもいろいろ派閥があるので一概にいえませんが、大抵の話は、国際的なCSRの議論に出てきていることで、改めてCSVと定義する必要があるのかというと…。難しいですね。

CSRコミュニケーションの成果が見えやすいのは断然BtoC企業なのでCSR報告書もターゲットが明確なことも多いのですが、BtoB企業は「発行すること」が目標になりがちで、読者視点が弱くなることが多々あるのが残念なところです。

これはCSRだけではありませんが、情報は発信するだけでは意味がありません。情報過多の現代社会において、情報は発信した瞬間に埋もれます。さらに言えば、情報の受け手は、その情報を必要としていない場合も多いです。

そんな現状の中で、企業は生活者にどのようにCSR情報を届けることができるのか。そして、届けて理解してもらえることができるのか。もっと言えば、理解してもらいどんなアクションを引き出せるのか。課題はたくさんあります。それだけ、現代の全方位的なCSRコミュニケーションは難しいということです。

BtoB企業の方向性

そもそもBtoB企業は(一部をのぞき)CSRコミュニケーションやステークホルダーエンゲージメントに関して積極的に取り組まないのでしょうか。

2000年代のことはリアルタイムでは知りませんが、僕が何百社とした2010年代のヒアリング調査では「CSR自体がわかっていないし、何をしていいかわからない」という組織内の課題があるように思います。

NPOや国連出身のCSR担当者は日本に何人もいないし、前職が「CSR担当」でしたという人も日本ではまだまだ少ないし、他部署との兼任で担当者になる方も多いので、やむえない点があるのは事実です。

また、他人のキャリアなので否定も肯定もしませんが、大手企業で担当者を何年かやってCSR自体に詳しくなると、社外に出て行ってしまうCSR担当者も増えました。企業のCSRのトップマネージャーの肩書きを持ちながら、社外での講演を年何本もしたり、国などの”〇〇委員”するなど支援側に行くというか。中の人の話を聞くと「〇〇さんはあまり社内にいません」というところも。それじゃ、社内にノウハウはたまりませんよね…。

で、本筋のBtoB企業のCSRコミュニケーションですが、主要なステークホルダーは「投資家・従業員」で、BtoC企業のメインは「投資家・顧客」です。これはこの5年程度、CSR報告書制作に関わって感じていることです。

たとえばCSRコミュニケーションという単語にBtoB企業のCSR担当者の多くは反応しません。そもそも広報機能があまりないBtoB企業も多いですからね。

一方、BtoC企業のCSR担当者は多くが反応します。お客様(一般生活者)の信頼獲得に直結するCSRコミュニケーションは、リソースを投入する価値があると判断するからでしょうか。単純な情報公開を考えても、BtoC企業のほうが積極的な傾向があります。

というわけで話がいろいろズレましたが、これだけCSRが騒がれる時代でも、BtoC企業は未上場でも非財務情報を積極的に発信しているところがありますが、大手企業であっても”未上場のBtoB企業”は、今後もCSRはあまりしていかないんだろうな、と予想してます。逆に見れば、今からでも積極的にCSRコミュニケーションを行っていけば、競合他社の中で戦略性やインパクトでトップを取ることは難しくないということです。

まとめ

いろいろな視点をまとめてきましたが、解決が難しい課題がたくさんある領域でもあり、簡単に解決できることが少ないのも事実です。

今、立ち上げ準備中の社団法人内でも、これらの課題に対処すべく研究会の実施も検討しています。特にBtoC企業のCSRコミュニケーションは、無形の価値創造(レピュテーション向上など)以外にも売上に直結する部分もあるので、社内の各部署で連携し、推進するための方法を様々なセクターの人を交えて追求していきます。

本記事では視点の提供だけですので、以下の記事も参考にしてみてください。

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