課題解決の「コピー」が、新たな問題を生む事実

クライアント(広告主)からもらったコピーを使わなければいけないが、
適切なトンマナか判断ができない。

特に問題はないと思っていた表現が、
やたら環境団体からのツッコミが入る。

そんな経験をした広告業関係者・クリエイター。
今は多くはないけど、今後は増えていく一方だと思います。

今回は、グリーンウォッシュという、
CSRコミュニケーションの罠の話しをまとめてみます。

グリーンウォッシュとは何か

あなたは、コミュニケーションの負の側面(リスク)について考えた事はありますか?
多分ないでしょう。CSR=良き事、みたいな世界の感覚な人も多いですから。

信頼を得るためのコミュニケーション活動が、一気に信頼を失う結果にもなり得る。
その、リスクの中でも注意すべき典型的な例が「グリーンウォッシュ」なのです。

グリーンウォッシュとは、環境意識が高い消費者が購買してくれることを期待して、
消費者に誤解を与えるような訴求を行う企業行動のこととも言えます。

具体的には、

「“地球に優しい”などの抽象的な言葉を使う」

「生産プロセスの環境負荷を放置する一方で、環境配慮型製品をアピールする」
「改めて立証することができないような証拠のない内容を盛り込む」

などが挙げられます。

グリーンウォッシュは90年代以降、環境活動の普及に伴って多く見られるようになったらしい。
環境先進国の欧米がスタートと言われてます。

すでに法律による規制や国レベルのガイドライン作りが進む欧米などでは、
グリーンウォッシュを防止するための環境広告規程を策定しています。

イギリスでは規程が古くからあり、
フランスでは政府まで規程作成に関与している。

日本では、広告業界全体での動きは皆無に等しい。
国がガイドラインを作るなども聞いた事がないです。
僕が知らないだけでしょうか?

かなり前だが、環境省ですら、
「環境にやさしい企業行動調査」というレポートを発行しています。

レポートタイトルからして、欧米からグリーンウォッシュだと叩かれそうです。
環境にやさしいなんて存在しない。何かしらの負荷は必ずかけているからです。

大手まで、海外ではダメと言われている、
「環境にやさしい」を広告コピーに使うのですから。

言われちゃいますよ。
「本当に“環境にやさしい”ことしたいなら、
あなた達の存在がなくなればいいだけじゃない?」
って。

コミュニケーション・リスク

CSR広告の現場にいたからわかりますが、
日本の企業担当者の多くは、コミュニケーション開発の時点で、
グリーンウォッシュな表現に気をつけようとは思っていないです。

そもそもCSRにおける、コミュニケーション・リスクがあることも知らない。
広告制作会社がそれをクライアントに伝える義務があると思うんですけどね。

CSR広告もまだまだ歴史が浅いというのもありますが、
CSRコミュニケーションにおけるリテラシーを持つ人がいないのです。
世界で様々なグリーンウォッシュ問題が起きているのにも関わらず。

これは現代の日本が抱える大きなCSRの問題の一つです。

仏教文化が栄えるアジア

アジアの仏教文化がある国は、
「善行をし、徳を積む」という下地があるため、
CSR・環境活動が普及するスピードが早いとも言われています。

政府が環境活動やCSR推進している影響も大きいです。
日本はアジアの中で環境活動後進国になりつつあるのを、
そろそろ知った方がよいのではないでしょうか。

日本企業は、環境系NGOの攻撃の的になることが少ないのもあるけど、
コミュニケーション・リスクを蔑ろにしすぎている。

指摘されてから改善するには、
注意を払い適正なコミュニケーションを継続する何倍ものエネルギーが必要になる。
企業は今一度、欧米のグリーンウォッシュガイド等を参照し、
CSRコミュニケーションにおけるステークホルダーとの接点を見直すべきです。

特に企業の環境活動はCSRに直結する重要なもの。
CSRコミュニケーションのすぐ近くにリスクがあることを、
企業は忘れてはならないのです。

グリーン・ウォッシュ企業と言われないために避けるべき10つの原則

それでは、具体的な対策はないのか。以下に10項目挙げます。
以下のガイドラインを参考に、今一度クリエイティブを見直してみましょう。

1.曖昧な印象の言葉は避ける
明瞭な意味を持たない言葉や用語は避ける。
例えば、「エコ・フレンドリー」。具体性に欠ける。

2.環境汚染など、印象が悪い企業はグリーン商品を売るのを避ける
例えば、「河川汚染をもたらす工場で生産される持続性の高い電球」。
環境負荷を製造でかけているいる以上、完全にグリーンであることはできない。

3.暗示的な図は避ける
証明されていないにもかかわらず環境に良いインパクトを暗示するようなイメージ図。
例えば、煙突から煙の変わりに花が排出される図。

4.的外れの主張は避ける
全体的には環境活動を進めていないのに、ごく小規模な環境活動のみを強調する。
トータルで社会へのインパクトを提示すべし。

5.ドングリの背比べは避ける
環境活動が大幅に遅れている産業のなかで同業者と比較し、
「同産業で最高レベル」と主張すること。
また、その他企業よりも若干環境活動が進んでいることをアピールすること。
自分たちのレベルの低さを認識すべし。

6.明らかに論理性に欠ける場合は避ける
危険な商品をグリーン化したところで、安全にはならない。
例えば、「エコ・フレンドリーなタバコ」など。
その表現によって、生命の危機をまき散らすようなことはあってはいけない。

7.分かりにくい表現は避ける
科学者だけが確認でき、理解できるようなわけのわからない言葉や情報。
商品・サービスは誰にでもわかるようでなければならない。
現実から逃げているようにしか見えない。

8.空想の友人を主張することは避ける
例えば、「ラベル」はあたかも第三者からの承認を得られたように見えるが、
企業が独自に作ったものである場合もある。
ある種の情報操作。バレたら、一気に信頼を失います。

9.証拠ゼロは避ける
もちろん正しいかもしれないが、証拠はどこにあるのか。
クチだけなら、何とでも言えるけどさ。

10.あからさまなウソは避ける
完全に偽造された主張やデータ。
実際にあるから怖い。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

グリーンウォッシュはそこまで難しいものではないと思うんです。
概念としては、ね。

グリーンウォッシュ関連のセミナーをしたこともありますが、
頭ではわかっても、いざ広告を作り始めると、
なかなかグリーンウォッシュ的しがらみがから脱出できないんです。

あなたも自社の広告物を確認してみてください。
まさか、ないと思いますが、グリーンウォッシュな表現ばかりだったら…。