女性活躍推進法とCSR
先週4月1日から、CSRに大きく関わる法律が施行となりました。
それが「女性活躍推進法」です。「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)とは、労働者301人以上の大企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画策定や数値目標設定が新たに義務づけられることとなる、という法律です。日本に1万5千社あると言われる大手企業が対象になります。
女性活躍推進法についてあまり知らないという方は、先週Yahoo!ニュースに寄稿した『あなたは知ってた? 今日から施行される“女性にまつわる法律”とは』という記事をご確認ください。細かいデータなどは厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」で。
本記事では、女性活躍推進法そのものの解説ではなく、法制度がCSRに与える影響について、色々なデータや調査、事例をまとめて解説いたします。かなりの情報量となっておりますので、お時間がある時にまとめチェックしてみてください。あと、競合の「女性活躍推進法に基づく行動計画」も一応チェックしておきましょうね。
女性活躍推進法について
女性とコーポレート・ガバナンス報告書
■“女性の活躍”に関する開示から見えるもの1 コーポレート・ガバナンス報告書における開示状況の調査から
『東京証券取引所のコーポレート・ガバナンス情報サービスから情報を取得できた上場会社3,488社のCG報告書を調査した。女性の登用に関する記述があった企業の比率は、東証上場企業全体で23.9%、東証一部上場企業で32.5%、JPX日経400採用企業で54.5%、日経平均株価採用企業で64.4%、TOPIX100採用企業で79.0%との結果が得られた。大企業ほど開示比率が高い傾向が見られた。』とのこと。
女性にまつわる情報は、CSR報告書だけではなく、上場会社の場合はコーポレート・ガバナンス報告書でも開示が進んでいるようです。
女性と中小企業
■4月1日女性活躍推進法施行にあわせて~「中小企業のための女性活躍推進ハンドブック」を発行しました
東京商工会議所と日本商工会議所が共同で、中小企業の現場で女性の活躍を推進するための具体的な取組みを解説した小冊子「中小企業のための女性活躍推進ハンドブック」を発行。従業員が300人未満の中小企業は計画等の開示義務はありませんが、努力義務があるため一応チェックしておきましょう。ちなみに、かなり細かく解説されているので、これから積極的に取り組むという大手企業の方でも学びはあると思います。
業績へのインパクト
『この43編を分析結果毎に分類したところ、女性登用と財務指標との間にプラスの関係があると報告しているのは27編、マイナスは6編だった。前者が後者を大きく引き離している。女性登用と業績との間にはプラスの関係がありそうだが、“ニワトリが先か、卵が先か”の議論には注意が必要である。』とのこと。
また、『女性登用と業績との間にはプラスの関係がありそうだが、“ニワトリが先か、卵が先か”の議論には注意が必要である。「業績が好調な企業の方が、(余裕があるから)女性登用を進めている」という逆向きの因果関係があるかもしれないからだ。』ともしており、この議論では良く言われる部分にもきちんと言及しています。
おおまかには「正の関係」はありそうだけど、条件によっても結構変わってきそう、ということでしょうか。
企業事例
日清食品・東急リバブル・サイボウズの事例が紹介されています。適切に対応して、企業のブランド力・採用力向上につなげましょう。
企業の事例
女性活躍推進プロジェクトの事例
■ #HappyBackToWork に寄せられた5,000 のアイデアからわかった、働くママのサポートのカタチ
Googleが立ち上げた「Women Will」プロジェクトの中で、様々な女性活用の事例が紹介されています。厳密にいうと、女性ではなく男性や従業員全員の働き方を変えよう、みたいな流れも含まれます。まぁ、本来そうなるでしょうね。
テック系企業事例
『テック業界の問題の1つが女性の比率だ。最も比率が高いのがイーベイで43%。LinkedInが2位で42%だった。最も低かったのがSpaceXで14%。続いてクアルコムで20%だった。』とのこと。日本のテック業界はもっと割合が低そうですけどね。
製薬会社事例
■製薬業界で女性登用が進む 転勤の多さや長時間労働が多く、カギ握る意識改革
アステラス製薬、第一三共、中外製薬、田辺三菱製薬、大日本住友製薬、協和発酵キリン、日本化薬、日本ケミファ、の事例紹介です。勝手に技術者・研究者・科学者などの理系分野は男性が圧倒的に多いと思ったらやっぱりそうだった。理系女子とか、そういやちょっと流行ったな。どこにいってしまったのだろうか。
女性活躍推進のメリット
入札優遇はわかりやすいメリットですね。「公共調達・補助金を活用した女性の活躍推進についてー企業の皆様へのご案内|内閣府男女共同参画局」、「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について」(PDF)などの資料も合わせて確認しましょう。
女性管理職者数
数値目標の意義
『東京海上日動火災保険は女性社員の育成・登用に積極的に取り組んできた。3月時点の女性管理職比率は約6%で、社内から2人の女性執行役員が生まれている。だが同社はあえて、4月以降も女性管理職の短期的な数値目標を設定しないと決めている。』とのこと。数字はあくまでも結果。数値が経営課題を解決してくれるわけではない。そのプロセスや仕組みが重要ということのようです。
テック業界の現実
FacebookもGoogleも、世界でも日本でもダイバーシティ推進をしています。本当に積極的に。しかし結果につながってません。なぜなんでしょうね。その理由がわかるのはもう少し先になりそうです。
女性幹部数
東洋経済の2016年発表版ランキングです。普段のCSRランキングとは違った顔ぶれが多く、これはこれで面白いデータです。
就活に直結する女性活躍
今の時代の女子学生は企業の女性活躍推進ぐあいを見て企業選びをする、と。BtoB企業で女性が少ない企業とか、戦々恐々としてるんじゃないですかね。
数値より制度
■女性活躍推進法だけでは女性活躍は推進されない 〜 柔軟な「女性管理職」の在り方が必須
いくつかのデータで女性管理職についてまとめています。結論としては「フレキシブルな勤務体系を整備する」ということかな。
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まとめ
2010年の「ISO26000」制定以降、日本でも独自のCSRに関わる法律やガイドラインができてきました。
CSRそのものは日本では法律になっていないものの、今回の女性活躍推進法のように、労働・人権分野は部分的に法律となっております。もちろん、環境まわりでもそうですよね。
つまり、すでにCSRというのは「ソフトロー」(従うべきガイドライン)ではなく「ハードロー」(法律)と捉えた方がリスクマネジメントとしては正解なのでしょう。
CSRと女性活躍の話から、ワークライフバランス、ダイバーシティなどに広がっていく取組みが社内で必要です。CSR担当者および関係者の皆様は、人事・総務・ダイバーシティ推進などの部門と連携し、各ステークホルダーのニーズに応えられるようにしていきましょうね!