フィランソロピー

倫理的ライフスタイル

今回の読書メモは「あなたが世界のためにできるたったひとつのこと–<効果的な利他主義>のすすめ」(ピーター・シンガー、NHK出版)です。

タイトル通り、どのようにして倫理的ライフスタイルを実行すべきか、そのノウハウや考え方、データなどを紹介しています。一部、企業の戦略的フィランソロピーみたいな話もありましたが、多くは個人の“寄付のすすめ”みたいな形です。

ただの倫理哲学を述べた本ではなく、経済学や行動心理学的な記述も多く、寄付を促す側の人には特に学びがあるでしょう。もちろん、CSR担当者も従業員の利他的行動を促す必要があるので、学びは多いと思います。「効果的な利他主義のすすめ」、「〈いちばんたくさんのいいこと〉をする」、「彼らを動かしているもの」、「チャリティを選ぶ」、という4つのチャプターでまとめられています。

個人的には「いちばん効果のあるチャリティ」という章が興味深かったです。CSR領域でも“評価”がよく話題になりますが、社会貢献領域(ソーシャルセクター)でも、成果を“見える化(定量化)”し評価することが重要です。そのあたりの考え方について解説されています。

NPOは寄付をもらい最適な形でそれを運用することになりますが、寄付者としてはその“コスパ”を求めるようになってきています。たとえば、同じような環境活動をするAという団体と、Bという団体があったとして、そのどちらかに寄付しようと考えたとき、何が決め手になると思いますか?

従業員への社会浸透、ステークホルダーエンゲージメントに興味があるCSR担当者、プロボノ・ワーカー、ファンドレイザー、エシカルという単語に反応する人、などには特にオススメです。データやトレンドもあるので、企画書作成なんかにも役に立ちそうです。

あなたが世界のためにできるたったひとつのこと

あの時、あなたはどこに寄付をしましたか? そのお金が何に使われたかご存知ですか? あなたのおかげで、何人の命が助かりましたか?
世界をより良い方向に一歩進めようとする、シリコンバレーや欧米の若者たちに注目される「効果的な利他主義」を、その理論的支柱でありムーブメントを牽引する世界的な哲学者が平易に紹介する。理性と共感とテクノロジーを駆使して、効果的に「もっとも多くの命を救う」、21世紀の新しい生き方を始めるための一冊。