ソーシャルプルーフ

CSRコミュニケーションにおける信頼感

CSR活動は“信頼される企業になるため”に行なうものである。このように言い切る人がいます。で、僕もこの意見には賛成です。

そこでソーシャルメディア論などでも使われる「ソーシャルプルーフ」(社会的証明、社会的信頼)という概念が出てきます。ソーシャルプルーフとは、意見の妥当性の価値観の話です。例えば「専門家(医者とか)がいうことだから間違いない」みたいなコンテクストなどです。他には「ポジティブなクチコミが多いこの商品は“良いものだ”!」みたいなものです。

最近、CSRコミュニケーション領域でこのソーシャルプルーフという考え方が、非常に強いようにように感じています。“事例”が大好きな人も、ソーシャルプルーフに弱いと言えるかもしれません。ちなみに、アカデミックなことはよくわかならないので、完全な個人的感想です。ご了承ください。

ソーシャルプルーフの効果

1、エキスパート(例:各分野の達人や専門家がブログやTwitterで意見を述べる)
2、セレブリティ(例:某ブランドのバックを有名女優が愛用している)
3、ユーザー(例:購入者のオンラインレビュー、ケーススタディ)
4、群集の教え(例:数百人、数千人が商品を購入したり、読者登録を行ったりしている)
5、友人の教え(例:友人がFacebookで「いいね!」しているブランドやTwitterでつぶやいていた商品)
ソーシャルプルーフをマスターしてマーケティングを自在に操ろう!

ソーシャルプルーフの事例を5つ紹介しますが、だいたいこんな感じですね。

特に横並びが大好きな日本人は、この「ソーシャル・プルーフ」に弱いと言えるかもしれません。特に、たいして意味がないことが多い形だけの(まったくないとは言いません)「第三者評価」や「第三者保証」なども、ソーシャルプルーフの1つの形ですね。「オーソリティ」(権威性)とかも、物事の社会的信頼性を高めることになるでしょう。インフルエンサーの発言などは特に。

CSR活動でなぜ「信頼感」が重要かというと、CSRコミュニケーションは非財務情報を含めた開示を行い透明性を高めることで、「私たちはあやしいことはしてませんよ」とアピールことに他なりません。ステークホルダーの信頼獲得は、CSRコミュニケーションの重要ミッションですから。

というわけで、消費者やステークホルダーを騙すのはよくないですが、こういった人間(そうステークホルダーって人間なんです)の心理的側面に、CSRをフックにコミュニケーションしていくことが企業に求められるのです。

情報の信頼性とは

Googleで検索すると文字が出てくるし、(検索結果は)SEO対策されている。あとはスポンサー(広告)とかが上がってきて…ネットってリアルじゃない。Instagramは検索することで言葉より画像が表示される
一昔前ならGoogleで検索して化粧品のランキングを見ていたが、いまは見ません。結果にウソが多いのも若い子は知っている。自分が使っている化粧品が良くなくても、(ネットの)評価がいいと『ウソだな』と思う。
Googleは使わない、SEO対策しているから——Instagram有名人のGENKINGが語った10代の「リアル」

写真共有SNSのInstagramについてのイベント・セッションでの話です。これ読んだ時に。「これだ!」って思いました。僕はマーケターでもなんでもないけど、CSRコミュニケーションでもこういうことありませんか?

つまり、CSR情報でもソーシャルプルーフのあるリアルなイメージを持てるものと、ソーシャルプルーフに悪い意味で装飾されているCSR情報と、があります。

たとえば、「個人情報大切にします」という企業が中・大規模の個人情報漏洩事故を起こしていたら、もう信頼されないですよね?「ガバナンス重視してます」って企業が、ガバナンス不備の経営層を含めた不祥事を起こしてたら、誰も信じませんよそんな企業。でも実際起こっている事実だというのが、悲しいです…。

偽りの、リアルではない、ソーシャルプルーフでコーディングされたCSR情報で、本当の意味で信頼なんて訴求できませんよ…。これは、CSRコミュニケーションでもそうで「CSR情報は“作り込まれた情報”で、真実ではない可能性が高い」と。

たとえば、本当にコンプライアンス/ガバナンスをしている企業にとってはいい迷惑ですが、社会全体が企業情報そのものに信頼感を持ちにくくなっている現状から、余計にCSRコミュニケーションにおいて信頼を訴求する必要が出てきます。

「CSRはブランディング/マーケティングにつながる!」って言っている人がCSR関係者でたくさんいます。僕もそう思っていますが、コンテクストが薄く、このソーシャルプルーフ的視点が抜け落ちている例が多い気がします。

CSR活動およびコミュニケーション“のみ”で、企業の信頼訴求をしマーケティングやブランディングにつなげるって、本当に可能なことなのでしょうか?

まとめ

企業がCSRコミュニケーションをしようとすればするほど、情報を届けたいステークホルダーが逃げていく。これって、CSRコミュニケーションとはしては最悪の部類です。でも、実際は、多くの企業でこれしてますよね?

CSRを、コミュニケーション/ブランディング/マーケティングに活かすと言うのは簡単ですが、多くの場合、ほとんどが失敗終わると思います。失敗が当たり前だからこそ、PDCAをできるだけ早くまわす体制を作ることが、成功への近道だと最近は感じています。

有名な方が言ったからといって、この領域の事例はあまり信じないほうがいいですよ。いや、もちろん、成果につながっているのならば「安藤はバカだな」と思っていただいて結構です。しかし、ほとんどの企業のCSRコミュニケーションはグズグズのグダグダです。売上が1兆円を超える企業も、CSRランキング上位企業も、です。

今一度、ステークホルダーの情報ニーズを整理しましょう。基本的に企業が発信したいことと、ステークホルダーが知りたいこと・メリットを感じることは別なのだ、という事実をふまえて、日々のCSRコミュニケーションを行ないましょう。

ソーシャルプルーフの概念を理解することで、ステークホルダーの信頼獲得に近づけるCSRコミュニケーションができるかもしれませんね。

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