キリンのCSV

今回の読書メモは「震災復興に挑む、キリンの現場力。」(ソーシャルイノベーション研究会、日経BPコンサルティング)です。

タイトルの通り、キリンのCSR活動事例がそのまま本になった感じです。まず読んで思ったのは“CSRの現場を描いたノンフィクション小説”ですね。ページ数が少ないのもあって、一気に読んでしまいました。

特に、2011年に一度でも東北の地に行った方は、共感しまくりだと思います。現場の空気感がよく伝わってくるし、上でまわした方のインタビューも多く、企業のCSR活動として臨場感があり、関係者は結構グッとくるのではないでしょうか。

その半面、良いストーリーにまとめられすぎて再現性がないというか。本のコンセプトが「事例からソーシャルイノベーションを学ぶ」とは言うものの、この本を読んで今更、震災復興に新規で関わるという大手企業は少ないだろうし、もう少し一般化した汎用的な概念等に落とし込んでもらえると、もっとよかったかな。

10億円単位で資金拠出できる企業なんて限られるし、非常に限定的な事例なのがなんともいえません。キリンさんのとても良い事例なだけに紹介だけで終わってしまっているのが残念です。

あと気になったのはCSVの定義かな。マイケルポーター教授が論文で行っている定義とだいぶ解釈が違う気がしますが…? 別に解釈が異なるのは問題ないので、味の素さんみたいに新しい単語に置き換えたほうがスムーズにいくんじゃないかな? もしくは「CSVの重点テーマ|キリングループのサステナビリティ」に書かれてる説明とかの解説があるだけでも、読者の納得感が全然違うと思いますけどね。

現在、復興支援を行なっている大手企業のCSR担当者や関係者の方は、読んで面白いと思います。

余談ですが、キリンビールを最近飲んでないと気付きAmazonで箱発注しました。

震災復興に挑む、キリンの現場力。

今回ご紹介する事例は、キリングループと日本財団による「復興応援 キリン絆プロジェクト」水産業支援。東日本大震災により傷ついた三陸の浜を駆け巡り、漁業者や水産加工業者らとともに復興を目指して歩んできました。
「CSVとは現場力だなと。復興応援 キリン絆プロジェクトを通じて我々も少しずつCSVの何たるかが見えてきた気がしています。社会貢献活動も事業も同じ。現場を見なければ」(キリン株式会社 CSV本部 CSV推進部 絆づくり推進室・野田哲也室長)
*CSV(Creating Shared Value=社会との共有価値創造)