コミュニケーションでファンは作れるのか
今回は『明日のプランニング–伝わらない時代の「伝わる」方法』(佐藤尚之、講談社現代新書)の読書メモです。
発売当時に即買ってはいたものの、他の書籍に埋もれてなかなか読めていませんでしたが、なんとか読了。“目から鱗”というより、モヤモヤしていたものをビシっと指摘してくれた、というイメージ。
僕が、佐藤尚之さんを知ったのは、「明日の広告」(2008年)という書籍を買ったのが最初だったと思うけど、何回か参加した復興支援活動をする「助けあいジャパン」のイベント(2011〜2013ころ)で何回か話をさせてもらい“この人の視点すげーな”と思ったものです。それからファンとなって今にいたる感じ。
実は本書では「ファン」という単語が全編にわたって出てきます。個人も企業も、この「ファン」という視点・視座を持つ事で、伝わらないコミュニケーションから脱却できるのでは、と。
CSRでいえばステークホルダー視点です。どれだけ、ステークホルダーの中に「ファン」を作れるか。まさに、CSRコミュニケーションを突き詰める中で重要なワードになってきます。
で、本書の中で「直接リーチ」と「間接リーチ」と「オーガニックリーチ」という内容が出てくるのですが、CSRコミュニケーションでは以前から言われている「ステークホルダーの特定」と「ステークホルダー・エンゲージメント」かなと感じました。
CSRも商品・サービスと同じく、より多くの人に知ってもらいたい、とは考えるものの、領域がニッチすぎるし本書でいう「ファン」にすら届いてないのかなと。本書には「共感」とか「共創」という形で表現されているので、参考にしていただければと思います。
情報の“砂の一粒”時代
CSR報告書・CSRレポートをはじめ、CSRコミュニケーションはステークホルダーに届きにくいし、リアクションも皆無。これは何年も前から未だに言われていることです。
書籍の副題にもなっている『伝わらない時代の「伝わる」方法』という視点で、情報の考え方を解説してくれており、広告・デザイン関係者以外でも、広報やCSR担当者が知っておくべきメディア戦略を学べます。
僕が気になったのは「マニアックな人に情報を届ける、マニアックなメディア」の話。CSR関連の情報は、いまだに経済系メディアやプレスリリース・メディアでの情報発信がメインで、全然届いているとは思えない。
様々なステークホルダーの情報を届ける必要があるのは、説明責任の観点からも必要なのですが、現実問題として、みんなにスルーさています。そうならないためにCSR担当者も、すべきことがまだまだあるんじゃないかな、と。
あと面白かったのは「情報の“砂の一粒”時代」というもの。これは世界中で流れた情報量が、「世界中の砂浜の砂の粒の数(1ゼタ=十垓)」をはるかに越えているという事実から。情報は発信した瞬間に“砂浜に埋もれた砂の一粒”に成り下がります。情報発信の手応えなんてなくて当たり前ですね。
でも既存取引先や従業員はすでにつながりがあり、CSR情報を見てくれる可能性が高い。ここの視点が実は、大きな可能性を秘めていると思うのです。「ファン」や「つながり」は、ビジネスを遂行する上で少なからずいるはずですから。
詳しくは書籍を読んで欲しいのですが、全般的に社会に対する姿勢などについても書かれており、CSR担当者はもちろん、ステークホルダーエンゲージメントに悩む広報、コーポレートコミュニケーション部門の方は必見の良書です。
明日のプランニング
「最近なんだか伝わっている手応えも実感もない」
「以前はもっと反応があったけど、近ごろそれもなく、やり甲斐がない」
「広告もコンテンツも効いてる気がしない」
「苦労してバズらせても、一瞬火がつくもののすぐ忘れ去られてしまう」
「SNSが重要かと思ってがんばってるけど、効果が感じられない」……そうお嘆きのあなたに。
あなたがどうしても伝えたいその「情報」は、どうすれば相手に伝わるのか。