オフセットとは
オフセットとは、「置き換える、差し引きする」というような意味です。
ゼロサム、プラスマイナスゼロというとわかりやすいかもしれません。CO2排出権のカーボンオフセットは聞いた事があるという方は多いと思います。ではCSR活動の中では何を考慮すべきなのか。
「あっくんに”うまいぼう”あげるから、そのチョコちょうだい!」といった感じ。トレードオフ的考え方です。いや、この例えは微妙かも…。
で、今回紹介したいのは、ずばり「二宮尊徳的CSR」です。二宮尊徳とは、よく、田舎の小学校にある、勤勉を謳う銅像がありますね。アノ方です。二宮金次郎とも言います。
江戸時代後期の農政家・思想家であります。実績としては、江戸時代の金融危機を改革によって救った金融コンサルタントとしてのほうが有名かもしれません。
彼の有名な考え方として、報徳思想というものがあります。
報徳思想とは、経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、いずれ自らに還元されるという考え方。つまり、経済性と社会性を両立させる、まさにCSR/SRの考え方です。環境破壊をしてでも、経済的に潤うというのは間違い。
でも、社会的活動ばかりして、会社が傾いては本末転倒。バランスのデザインは必須ですね。このあたりの考え方は、「論語に算盤」「三方良し」に近いものだと思います。
1、自分ではない“誰か”に負荷をまわす
二宮尊徳的思考。
150年前にCSRの考え方をここまで的確に表現しています。彼の報徳主義からすると、社会的責任のオフセットは言語道断ということになります。例えるなら、悪事(環境負荷の高いビジネス)をして儲け、善事(社会貢献のエコアクション)をすること、です。
悪い事しているから、儲けた一部で社会貢献しますよ、という流れ。これはいけません。そもそもの基幹ビジネスのプロセスを見直し、環境負荷を減らす努力をまずすべきでは?ということなのです。
オフセットは基本的に本業とは別のセグメントの場合が多いようですし、他の誰かに負担してもらうという構図であることは変わりません。金銭を媒介にしている、ゼロサムの世界のようです。
過去、環境負荷を結局、誰かに押し付けてきたから、現在の地球環境があるわけでして。20年前から色々トライ&エラーを繰り返していれば、今ほど、環境対策にはうるさくなかったのかもしれませんね。
2、課題の根本の解決にならない
オフセット方式自体が悪であるという訳ではありません。
例えば、カーボンオフセットを導入することで、社内の意識改革につながるということもあるでしょう。それも重要なことです。
僕が言いたいのは、それは対処療法であり、問題根源の解決には貢献していないということなのです。
NPO業界で良く使われる「川上の男と赤ん坊」の寓話がわかりやすいかもしれません。
ある時、川で釣りをしていた若者が、赤ちゃんが流れてくるのを見つけ、
慌てて救助しました。岸に着くと、また、
赤ちゃんが流れてきたので救助しました。不思議に思いながらも、
救助し続けましたが、次から次へと赤ちゃんが流れてくるのです。
若者は、釣りのことなど忘れ、救助することだけに夢中になってしまいました。
一方、実は、川上で男が川に次々と赤ちゃんを投げ込んでいるのでした。
こんな内容です。
目の前の問題をオフセットで解決するのは素晴しいですが、川上で起きている問題の根源を解決しないことには、いつまでも問題は起き続けるということです。川下で忙しく社会貢献活動をしていて、満足していてはならないという教訓です。
CSRでは、川下(日々の業務)で起きていることにも対処しつつ、川上(社会問題の根源)にも対応する必要があります。
3、リターンを考えない
例えば、事務所近辺のゴミ拾いをCSR活動とするのは素晴しいことですが、「そもそもなぜ、この街はゴミが多いのだろうか」「そもそも、ゴミそのものを減らすアクションはできないのだろうか」と、考えることが重要だと思うのです。
環境活動をして、自分たちにどれだけリターンがあるのでしょうか。「普段、迷惑かけてるから、清掃くらいしてやるか」。この程度のミッションで従業員全員が動いても、その人件費・経費に見合ったリターンは得られないでしょう。
戦略的にCSRをしたほうが、同じ時間・予算を使うにしてもずっと大きなリターンが期待できますよね。
まとめ
日本のCSRが環境活動・社会貢献活動(フィランソロピー)から始まっているとはいえ、いつまでも対処療法では問題は解決しません。
何の議論でもそうですが、批判することから、「じゃあ、どうしよっか?」というネクストアクションを生み出す思考になってほしいものです。
オフセットから、二宮尊徳的CSRへ。
口で言うほど簡単なことではないですが、本業と絡めたCSRは、均衡のゼロサムではなく、拡大のプラスサムへ、ベクトルを向けてくれるでしょう。