CSRとコーポレートガバナンス・コード
「コーポレートガバナンス・コードの実践」(武井一浩、日経BP)の読書メモです。
本書は、インタビュー形式でまとめられており、非常に読み進めやすい、「コーポレートガバナンス・コード“入門書”」的な本でした。
IRや投資関連のワードが多いので、僕にはちょっと理解が難しい部分もありましたが、色々学びがありました。CSR担当者も制作会社の人間も、統合報告を作るのであれば本書は必読と言えます。
気になったのは「攻めのガバナンス」という考え方。まさにCSRでも課題となっているもので、“ひな形的な対応”ではなく、自分たちで進むべき道を決めて、能動的に対応しましょうという点です。CSRでは「戦略的CSR」とか「攻めのCSR」と言われることもあります。
企業経営とは何かを改めて考えさせられます。本来、企業経営は能動的な戦略のもと、事業活動となるべきですが、どうもCSRやガバナンスだと“対応”に焦点があたりすぎて、戦略的な事業活動となっていないように思えます。やっぱり“攻める”って大事ですね。
あと、本書の中で、「情報の分断」という課題が議論に上がっています。IR/SR担当とCSR担当で情報ギャップが起きている、と。社内での情報共有が不足しているせいで、エンゲージメントの中で適切な情報開示ができていないという課題です。
もうこれは組織の話なので、共有を進めましょうとしか言えませんが、部署間の「縦割り」は日本だけではなく世界的な課題のようでして、色々と試行錯誤が必要なようです。
コーポレートガバナンス・コードの対応
■基本原則2「ステークホルダー(ESG)対応」
2-1 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定
2-2 会社の行動準則の策定・実践
2-3 社会課題への対応
2-4 女性活躍推進を含む多様性確保
2-5 内部通報制度の整備
ざっくり書くと、上記がコーポレートガバナンス・コードの「基本原則2」です。CSR報告関連ではこのあたりが一番関係してきそうです。
具体的にいえば、コーポレートガバナンス・コードの情報開示で重視されるのは「中期経営計画」、「CSR調達方針、行動規則」、「社会課題の認識と対応」、「ダイバーシティ関連情報」、「労働者の権利保護」の5項目とも言えるでしょう。
ただ、コーポレートガバナンス・コード施行によって、CSR(ESG・非財務情報)推進が劇的に進むのか、という点には、現段階では懐疑的です。バウンダリー(事業影響範囲)が広いCSRの中でも、この記述だけではごく一部だからです。
僕は、CSR活動より、IR部門やマネジメント層のCSR意識改革への影響が一番大きいのではと考えています。
投資家を中心とした様々なステークホルダーとの積極的な関係作り自体は非常に望ましいことです。ぜひ、CSR担当者はもちろんのこと、統合報告書の制作会社の方、IR担当、経営企画担当、上場企業の経営者層の方に読んでもらいたい一冊でした。
400ページ以上あるので、色々覚悟が必要(苦笑)ということはお伝えしておきます…。
コーポレートガバナンス・コードの実践
ガバナンス・コードの施行を受け、上場企業各社の経営陣は、自社のコーポレートガバナンスのあり方をどのように見直し、中長期的な企業価値向上を達成するために、どのような取り組みに着手すべきなのか――。「攻めのガバナンス」を実践するための知見とヒントが満載の1冊です。