統合報告書制作の、“統合思考の全体最適”という可能性を考える

統合報告書制作

統合報告書制作の、統合思考の全体最適

2014年は統合報告における大変革の年だった。未来からすると、今はそう見えるのかもしれません。

IIRCの統合報告フレームワークの正式発表から始まり、世界の統合報告を後押しするルールや新しいイニシアティブの動き、ESG投資(SRI、インパクト投資)の盛り上がりと企業への情報開示プレッシャーなど、非財務情報の開示や統合報告推進の動きは、CSR関係者にも大きな意識変化を生んだといえるでしょう。

激動といえば、ISO26000発表以降(2010年以降)、東日本大震災による企業のCSR活動の盛り上がりを含め、この5年でまるで世界が変わってしまった、CSR界隈。まだまだ統合報告書のメリット・デメリットも様々な意見が存在します。

そんな激動の中で、僕らはどう動いていき、そして統合報告を進めて、さらには企業内で「統合思考(Integrated Thinking)」を高めていけばよいのか。海外の事例やイニシアティブの動きを含めてまとめます。

統合報告を見据えた企業情報開示の課題

「日本版スチュワードシップ・コード」と「日本版コーポレートガバナンス・コード」対応を踏まえた、機関投資家と企業による「目的を持った対話(エンゲージメント)」が求められる中、「統合報告」などの企業情報開示への注目と期待が高まっています。
統合報告を見据えた企業情報開示の課題と挑戦‐日本と英国の調査結果からの示唆‐

上記のPwCのレポートは非常に重要な示唆があると思います。レポートのタイトル通り、イギリスと日本の比較をしており、統合報告作成に関わる多くの人に重要なヒントがあるように思います。

特にサスティナビリティの項目は、CSR活動をした結果、自社の将来利益にどれだけ影響するかを書くことが重要で、それこそが企業価値の可視化につながる、という解説もあります。

社会的価値を生み出す活動をすることで、将来の自分たちのビジネスに良いインパクトを与える、というのが理想。

逆に、フィランソロピーで終わってしまい、企業の将来価値を生み出すための経済合理性を説明(報告・コミュニケーション)できないとなると、それは「良いCSR」なのか、そして「良いCSR報告」なのか、という疑問だらけのものになってしまうでしょう。

もちろん、寄付などのフィランソロピー自体は素晴らしい社会貢献活動です。

統合報告書もCSR報告書もですが、「ステークホルダーの要求を満たし、信頼を構築できるツールか」という視点を、もっと日本企業は議論すべきなのかもしれません。

統合思考

統合報告でよく言われるのは、「統合思考」です。アニュアルレポートとCSR報告書を“統合”させるだけではなく、企業の中で事業の方向性など各部署や経営層と現場の意識も“統合”すべきだと。

僕も経験があるのですが、統合報告書やCSR報告書を作っている過程で、自社のコンセプトや考え方、取組がブラッシュアップされいくということがあります。つまり、統合報告書を制作することで、「これ作らなきゃいけないから、各部門との議論も進めなきゃ」みたいな流れになるのです。

報告書制作が、半強制的に統合思考を企業文化として作り上げられる、といったところでしょうか。考えてから走るより、考えながら走った方が、結果良いものができるというのはよくある話です。

極端な話、話が進みそうだったら、IR部とCSR部が“統合”しちゃえよ、と。部門としてわかれている以上、絶対にどこかでコミュニケーションの断絶は起きる。だったら、いくつかの企業であるように「IR・CSR・広報」の部門をまとめ「コーポレート・コミュニケーション部」を作るとか。

そこまでしないと、本当の意味で、統合思考、つまり部門ごとの情報発信ではなく、企業としての情報発信や文化形成にはならない、と。

つまり、今のCSR報告書や統合報告書は、単独の部署が主導する「部分最適」となっているのです。本来は企業全体としてのコーポレート・コミュニケーションであるべき、報告書類は「全体最適」であるべきなのです。ステークホルダーとコミュニケーションすべきなのは、「CSR部ー社会」ではなく「企業ー社会」という構図のはず。

そういった、マーケティング・コミュニケーション的な部分も含めて、統合報告書のクオリティの前に、会社の“思考”がどこまで構築できているかが、焦点となりそうです。

事例:SAP

ピーター・グラフは、SAPのChief Sustainability Officerです。2014年3月にカリフォルニアで開催されたWSJ ECO:nomicsカンファレンスで、財務と環境の実績を合わせてステークホルダー­に開示する統合報告の取り組みとITを活用したサスティナビリティの推進について解説­しました。

このあたりはとても参考になるかと思います。詳しい解説は、以下の記事が参考になりますのでどうぞ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

統合報告は、日本では統合報告書から盛り上がってきている印象がありますが、統合思考こそが、今の日本企業に必要なのかもしれませんね。グローバル企業やBtoB企業は、CSR報告書ではなく統合報告書に一直線って感じです。もちろん、メディア戦略としてCSR報告書を残す企業も中にはいると思いますけど。

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