結局、戦略的なCSRは競争戦略として成り立つのですか?

CSRセミナー

戦略的なCSRは競争戦略として成り立つのか

「第二回東洋経済CSRセミナー」がありましたので、簡単なレポートを。

セミナーのテーマは、「競争戦略としてのCSR」です。はっきり難しい領域です。

僕も、CSRでマーケティングってできるんですか?みたいなのは、よく質問されます。で、ぼくはいつものようにこう答えます。「やり方次第です。」って。

だって、僕にとってはその質問は、「携帯電話売ったら儲かりますか?」と同じですから。CSRが業績貢献できる場合もありますし、そうでない場合もあります、と。

「共感マーケティング」とか「共創マーケティング」なんて呼ばれる領域でもあると思いますが、具体的にどんな点を改善すれば、CSRが競争戦略になるのか。今回のセミナーはそんなお話でした。

CSR専門家(CSR専門誌・CSR専門ウェブメディア)としても、重要な示唆がありました。

競争戦略としてのCSR

今回のセミナーのキースピーチは、CSR関係者ならよくご存知の、CSRコンサルティング会社イースクエア・創業者でもある、ピーター D.ピーダーセンさん。

テーマは「競争戦略としてのCSR」。企画打合せから参加させていただいておりますが、その段階でかなり興味深い内容でした。

ステークホルダーという概念は非常に重要。CSR専門家は、ステークホルダーなのか?ホットな議論(企業の耳の痛い話。)をすることで、リスクや課題の発見につながるはずだ。という話が興味深かったです。

こういう考えがあるからこそ、相対するような国際NGOをステークホルダーダイアログに招かない多くの日本企業はおかしいのかもね。身内だったり、第三者のCSR関係の偉い先生しか登場しませんからね。権威付け以外の意味は特にないんでしょう。

もう一つは、制約条件という考え方。

環境におけるリスクは、会社が直接的な環境の影響を受けるのではなく、環境関連の法や規制に事業活動が影響をうける、というわけです。これから制約条件。なるほど。

企業経営からすれば、CSRも制約条件かもね。日本ではあまり影響なくても国際的なCSRのルールに事業活動が影響を受ける。リスクマネジメントとも呼べるでしょう。

パネルディスカッション

パネリストは、引き続き、ピーター D.ピーダーセンさんと、加藤さん(株式会社ニューラル)、西村卓美さん(サンデン株式会社 総務本部 広報・CSRグループ)。モデレーターとして、岸本吉浩さん(東洋経済新報社『CSR企業総覧』編集長)。

CSR担当になって間もない西村さんの、現場の質問から、どうやって企業の競争戦略にCSRを組み込むのか、という話が中心でした。

僕が気になったのは、結局「トップの理解」がCSR活動を進める上で重要であるということ。世界でも日本でもCSR推進企業には、CSRに理解があり、積極的に推進するトップがいるということ。

CSR部にどんな素晴らしいエースがいようが、トップがダメならCSRは進まないのです。まぁ、これは、CSRに限った話ではないと思いますけどね。

で、トップはどういう時、CSRの重要性に気付くかというと、大きく2つのパターンしかありません。「危機」か「大義」を感じた時です。

不祥事を起こしてから、コンプライアンスとかガバナンスの価値を再認識したり、企業ミッションがしっかりしており、そもそも企業の社会性を理解していたとか。

メモ

以下は、箇条書きになりますが、セミナーのメモです。メモですが、結構グサッときます。

キースピーチ

CSRが企業価値を高めているのか、そこが問題。CSRのフレームワークでベンチマークしてみる。CSRのフレームワークでヘルスチェックをしてみる。

CSRをCSR部だけでする必要はない。世界では、CSRが企業の事業部門に入り込んでいる。CSRが管理課題になる。

ベーシックなCSRは、企業価値の向上につながらない。単発のイノベーションはサスティナブルではない。

CSRを、企業価値創造に何でもいいからつなげないと、経営者としては重要視できない。

競争優位の様々な要因・方法も飽和してきた。従来の競争優位戦略では、競争力を保てない時代になってきた。

CSRで経済力を高めるには、改善活動では難しい。まさに革新的なプログラムが必要。例えば、社内コンテストなど。革新は社内からでも社外からでも生まれる。

測定するツールを作らなければならない。最終的にはお客様が企業価値を決める。ステークホルダーも測定できるツールを。

パネルディスカッション

企業価値向上のために大義を果たせるのか?トップに大義を果たす“覚悟”があるのか。商品・サービスの価値だけではなく「価値観の提案」ができる企業が顧客に届けられるか。「価値観の提案」とは「ライフスタイルの提案」と同義語である。

お客様から「CSR関連評価」のアンケートにも対応している。ある意味、リスク対策。でもこれだけではダメ。BtoBの会社はCSRが難しい。リスクの話だけになってしまう。だから、GEは環境マーケティングをした。顧客は一番のステークホルダー。「ウチはCSRもしているし、リスクが少なく、取引しやすいでしょ?」みたいなアプローチもあるかも。ステークホルダー・エンゲージメント。

企業価値とは利益額だけではない。企業価値を再定義すること。企業価値の範囲を広げ、市場の変化にも対応すること。お客様や従業員にとっての価値を高めるということ。売上・利益・株価だけが企業価値ではない。

ユニリーバ。株主からの短期価値などの障壁となった、四半期の財務報告をやめた。短期利益を求める株主はいなくなった。長期保有の株主は増えた。トップのコミットだけ、事業環境を変えることはできる。企業はステークホルダーを選べる。どんな人たちと企業価値を作っていくかを明示すべき。

CSRそのものが、競争力を内在しているわけではない。CSRは競争力の根源であり、競争力となりうる事業を下支えする。

CSRに疲れている企業が多いのでは?リスク管理だけのCSRはワクワクしない。社内外のリソースを使い、インパクトを目指すべき。

CSRという言葉は最終的にいらない。エクセレントカンパニーになるために、何が必要かを考え実行するだけ。イノベーションの種は数が必要。CSR部は、もっと新規のアプローチをすべき。

社会貢献的な「社内アイディアコンテスト」はすべき。コンテストは基準が重要。CSR部はむしろCSRを進めるべきではなく、リソースを集める。基準は三つくらいが理想。「業績に貢献すること(利益貢献)、社会の役に立つこと(社会貢献)、ワクワクすること(動機貢献)」とか。

CSRという考えに、何でもツッコミがちになる日本企業が多いのではないのか?外部・内部のアイディアを集めて、イノベーション、新しい視点を取り入れることが重要。

経済合理性の中でCSRを考えるべき。今の経済システムがCSRを推進していない。では必要とされていないかというと、社会課題解決のニーズは無数にある。では、そのニーズを自社がどこまで拾えるのか?

次の時代では、必ずサスティナビリティの時代が経済システムの中に組み込まれる。資本主義の中で生まれた負の側面をかいけつできる、新しい資本主義が生まれる。もがきながらも、社会をサスティナビリティで構築しているのが、2010年代だと思う。まさに、今は過渡期である。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

この「CSRは競争力につながるのか」という課題(疑問)。僕自身の最近の考えは以下の記事にもまとめていますので、こちらも参考までに。

儲かるCSRや競争力のあるCSRは実現可能なのか
良いCSRとは、CSRが定義されマテリアリティを決めることかもしれない

今回のセミナー話は、結論、CSRは競争力につながりうる、という話。「なぜ、CSRに取組まなければならないのか」という命題の一つの答えでもあります。

また、僕が気になったのは、「測定ツール」の話。競争力という概念もそうなのですが、何をもって競争力とするか、何を軸にする必要があるのか。という点でした。

今回、改めて感じたのは、CSRの定義を改めてすべきなのかなということ。競争戦略と関係ないじゃんと言われそうですが、従来の日本の世間一般で解釈されているCSRで、競争戦略とはならないからです。

あと、「社会にも自社にも貢献するビジネスアイディアコンテスト」が、自社のCSR活動にイノベーションを起こすとしてましたが、先日取材に行ったソフトバンクさんのコンテストは、まさに先進的な取組みなのかもしれません。どの会社もやればいいのに。

今一度、リスクも制約も踏まえて、CSRに取組みましょう、と。それには、CSR活動での最重要項目ステークホルダーについてもちゃんと考えましょう。とは、トップの理解。これがすべて。CSR部がどうがんばろうと、会社の経営戦略にCSRが入らなければ、そもそもCSRが企業の戦略にはなり得ませんから。

第一回東洋経済CSRセミナー・レポート「現場経験者が語る、企業が社会貢献をすべき理由」



■  運営勉強会のご案内 ■
・国内最大級のCSR実務担当者限定の勉強会/交流会「サステナビリティ・トレンド・ネットワーク」
・完全現場主義のCSR企業評価について学ぶ研究会「サステナビリティ評価研究会」
・ソーシャルグッドなライターコミュニティ「Writers for Good」