CSR経営効果はない? 経営の未来を見つめる良書「世界の経営学者はいま何を考えているのか」

CSR経営効果

CSRは経営効果がない?

いやー、この本は面白かった。

かなり難しい経営理論を、わかりやすく解説してくれているし、CSRやCSVといった経営戦略の特定の理論に偏った人には特にオススメです。

「CSRの経営効果・経済効果は存在するのか?」という命題のヒントもあります。

経営学者は、マイケル・ポーター、ピータードラッカー、ハーバードビジネスレビューは読まないし、通用することもないと、言い切る所も気持ちよかったです。

ちなみに、僕は、ポーターやドラッカーのCSR関連の経営理論がキライとか、まったく参考にならないと言っているわけではありません。

企業経営は特定の理論だけで語れるものではありません。また本書で「ドラッカーの経営論は“名言であるが科学ではない”」としています。また「ポーターの競争戦略論は“競争をしないための”理論」としています。

パラドックスにまみれた表現のようですが、そういったことがロジカルに解説されています。

経営学の未来

企業経営に、経営学は役に立つのか。これはイエスでもありノーでもあるでしょう。

本書では、企業経営の良事例の紹介が沢山載っているのではなく、
あくまでも「経営学とはなんぞや」という視点で書かれています。

「理論と実証」の話しもありますが、
正直、実践に使えるものかどうかというと微妙な所です。

逆に、経営関連書籍をたくさん読んできたが、
結局、何が正解かわからない、という人にはとても面白い本となるでしょう。

で、CSV理論で経営の社会性を一気に引き上げたポーター教授でございますが、
本書にもあるとおり、“それだけ”で経営を語るのは乱暴だということです。

ドラッカーもポーターも「経営哲学(精神論)」を説いており、
科学ではないので、実践向きとは言えないという側面もあるとか。

企業の究極の経営戦略はなにかというと、
「持続的な競争優位」を獲得することであるとされています。
つまり、10年以上にわたって、高い業績を維持できる力のことであります。

CSVは確かにそういった側面もありますが、近年に研究によって、
CSVは非常に実行しにくくなっているという実証データが開示されています。
つまり企業間の競争が激しくなり、競争優位は保てなくなってきているということです。

また興味深いのですが、
「一時的な優位をくさりのように、断続的につなげて、トータルで高い業績を保つ」
ことのほうが多いということです。

CSVが良いか悪いかはともかく、実際の経営に関しては激しい浮き沈みがあり、
特にドラッカーの経営理論のような名言では経営を的確に舵取りできなのかなと。

ちなみに、経営において競争優位を保てている企業って何%だと思います?
アメリカのデータでは2%だそうです。たった2%。

CSVやCSRで競争優位戦略を!なんてCSRコンサルタントいますがクソですね。
現実には“それだけで”競争優位が保てるほど、世の中甘くないってことです。

CSVの未来は邂逅でしかないのか?

他にも興味深い事例・データが掲載されているのですが、
非常に興味深いのは、ミネソタ大学の教授である、
マイルズシェーバーの「マネジメント・サイエンス」(1998)という論文です。

彼の論文の趣旨は明快。
「経営戦略が業績に与える効果は限定的なものである」ということ。

ざっくりいえば、アメリカの2%の企業が成功したCSV理論を経営戦略として組み込んでも、
多くの企業においてはフィランソロピーにはなっても、経営効果はでないだろうということ。

ベンチマーク企業がCSRで成功していても、それはデータには出ない、
別の要因が大きく関係している可能性も大きく、自社でしても成功できるかは別問題だと。

例えば、「とにかく徹底的にパクる」という、
成功事例模倣戦略は一定期間では効果が出るかもしれませんが、
「持続的な競争優位」にはなりえないのかもしれません。

モデレーティング効果、内生性等の複雑に絡み合う要因を加味して判断しないと、
「CSRで業績が上がった!」というライバルのマネをしても成功する確立は低いでしょう。

CSRやCSVにおける経営効果を過大評価せず、真摯にビジネスに向き合う姿勢が、
堅実な戦略として、「持続的な競争優位」を生むのかもしれませんね。

とはいえ、「経営学」とは理論の一つであり、
優秀な企業は一般抽出された“経営学”に当てはまらないからこそ、
持続的な競争優位が保てるのではないかとか、
結局「重力」が地球にあることを知っているだけでは、
空は飛べないということと同じになってしまってはもったいない。

ドラッカーは経営学者ではなく“思想家”であるのは認めるが、
会社を経営することと、経営学の間には何が存在するのかという、
とてつもない大きな命題は特に解決せず…。

まぁ、僕からしたら、ポーター氏のCSV論も、
データがバリバリの科学かというと違う気もしますけど…。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

いやー、僕も勉強不足でした。
「モデレーティング効果、内生性」といた観点からCSRやCSVを考えたことがなかったです。
お恥ずかしいことです…。いや、多くのCSRコンサルタントもそうだと思うけど。

本当はもっと面白いデータを紹介したいのですが、
引用ではなく盗作になってしますのでこのへんで。

本書から学んだことは、「経営は複雑なり」ということ。
ただ一つの話題の理論だけを用いて、経営を判断することの愚かさを痛感しました。

CSR、CSVに興味のある人は、絶対読んだ方がよい良書でした。
今日から僕の中の「2013年のベスト1」になりました。

ビバ・英治出版。英治出版さん、ほんといい仕事するよなぁ。

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