コーズマーケティングの“不都合な真実”

物事には裏も表もあるものです。

今回は、コーズマーケティングについて、
その大きな壁(課題)を改めて振り返ってみましょう。

企業とNPO。

立場が違えど、方向は違えど、
共通する課題もあるのです。

3つの観点に絞り、解説していきます。

企業とNPOの共通の悩み

1、お金

NPOは無償で活動する組織ではありません。
社会問題なんて、簡単に解決できないから問題になっているのです。
活動には時間もお金(組織運営費)もかかります。

特にNPOには課題解決のための専門的なノウハウが必要で、
仕事に見合った人材にはそれなりの報酬が必要です。

しかし、報酬、事務所費、光熱費などの費用を、
寄付から捻出することはなかなか認められません。

以前、どこかの自治体が助成金をNPOに出していて、
「人件費等の組織運営費以外に使用すること」という条件があったとか。

つまり、企業活動においても、NPO活動においても、
社会的な課題の解決活動(社会貢献活動)に取組むことにおいて、
金銭を得ることは難しいという実情があるのが事実なのです。

これはよく聞く話し。

社会貢献で儲けちゃいけない、
黙って我慢してしろという“陰徳の美”の風習。

経費(人件費)ではなく、活動に使って欲しい、
というむちゃくちゃな、支援者の願望。

そんなの最初から無理なんですよ。
だって、NPOやCSR活動のほとんどはサービス業なのです。
人件費が運営資金利用がほとんどなのですから。

まぁ、だからこそ、NPO側から支援者へのコミュニケーションを、
もっと考えて実行する必要もあるのですけどね。

コーズマーケティングは「良き事で儲けちゃいけない論」と、
戦いながら前に進んでいく必要があるのです。

2、立場

これはコーズマーケティングを実施する上で重要な事。

寄付をもらうNPOはその専門的ノウハウを活かし活動をしようとする。
しかし、“お金”を出すのは企業。

ビジネスだけでなく、お金を出す方と貰う方は、出すほうに主導権があります。
そこで、企業はNPOに指示したり的外れな要求をすることになるのだけど、
だいたいうまくいかない。

なぜか。

企業は基本的に、社会貢献(社会的課題解決)の専門家ではないからです。

実際のアクションの設計はNPOに完全に任せた方がいい。
そして、その中で自社のスタッフを考えた方がいい。

この立場の差が、実施するにあたり大きな壁になるのです。
僕も経験あります。

だからこそ、僕らみたい人間が両者をつなぎ、
しっかりコーディネートしなければならないのかなと実感してます。

一般事業会社出身の方がNPOの代表だと、
問題が起きない例もたくさんあるんですけどね。

長年NPO経営をしていたり、事業会社での経験が少ないと、
このような立場の差を超えられないNPOもあるようです。

NPOは「お金だけ出して欲しい」、
企業は「ビジネスライクにして欲しい」。

お互いの立場に対して、
何かしらの不安を持つことも多いようです。

必読:クリエイティブな社会貢献とは何か?「もちかえる展覧会トークイベント」レポート(後編)

3、意識

米国での調査(Cone LLCの2010年調査)
・88%の消費者が、企業がそのマーケティングにおいて、コーズや社会問題にかかわることを良いことだと考えている
・85%の消費者が、自分たちが関心あるコーズを支持している商品や企業に対してより良いイメージを抱いている
・40%の消費者がコーズに関連しているという理由で特定商品を購買している

日本での調査(日経MJの2011年調査)
・93.5%…企業は社会貢献活動に取組むべき
・40.0%…商品を購入する際、社会貢献につながるブランドや商品であることを意識する

上記の調査結果のように、
コーズマーケティングはトータルで「良き事」との認識が多いです。

しかしながら、日本では東日本大震災以降、関心が高まるにつれて、
量より質を求めるというか、厳格さを求める志向も高まっています。

「企業は売上をあげるために消費者の善意を利用している」とか、
「実際に宣言通りの額を寄附しているかどうか怪しいものだ」との疑いも、
同時に増えているのです。

この、
「コースマーケティングは素晴らしいが、受け入れるとなると話しは別だよん」
っていう意識の壁が、実施の大きな壁となっているのです。

これはNPOにとっても企業にとっても大きな問題なんですよねぇ。

必読:クリエイティブな社会貢献とは何か?「もちかえる展覧会トークイベント」レポート(前編)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

コーズマーケティングは「企業、非営利組織、消費者」の三者の、
すべてに利益がなければなりません。

NPOだからとか、企業のCSR担当者だからではなく、
一つのプロジェクトを動かすメンバーなのであれば、
今回の3つの課題をクリアし、結果を出して欲しいものです。

さぁ、壁さえわかっていれば、あとは企画・実行あるのみです。
本稿が、あなたのCSRプランニングの参考になれば幸いです。

必読:[2012年版]今年のまとめ!CSR・コーズマーケティングの事例・記事12選
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