SDGsが企業の課題・問題として語られないのはなぜか

SDGsにおける企業の課題

日本のCSRクラスタでは相変わらずSDGsが大盛り上がりです。大手上場企業を中心にどんどん広がっているのは、各種開示情報で確認できています。

さて、特定の概念が急速に普及すると、余波として様々な歪みを生みます。最近では、見せかけだけのSDGs対応である「SDGsウォッシュ」が話題になることも多いですが、そもそもSDGsは、国や業界団体レベルでやっと対応できるくらいの大きな枠組みです。企業1社で「対応します!」とか開示を見ると、いやさすがに…と思ってしまいますし、成果を見ても、まぁそうだろうな、という感想しか出てきません。

ビジネスでは結果がすべてなのですが、CSR界隈では大きなことを“言ったもの勝ち”のような状態であることもあり、さらにいえば、SDGsに関する書籍・本や、アワード・ランキングなども、それを推奨するような趣旨のものが多く、啓蒙したいのはわかるけど、主語や成果が大きすぎるの考え方によりすぎるのは、ちょっとリスクかなとも最近は思っております。

というわけで、現時点で私が感じているSDGsに関する課題をまとめたいと思います。

グローバルイシューのSDGs

SDGsを含めたグローバルイシューに対するCSR活動ですが、成果からみれば企業1社が世界に貢献しようなんて“ちゃんちゃらおかしい”のです。御社1社で70億人が救えるのですか?と。そもそも企業がSDGsに対応しようとか傲慢でしかないのです。関係者はSDGsを神格化しすぎなのでは?と。(しなくていいとは言ってない)

猫も杓子もSDGsバッジということで全従業員着用を強制している会社もありますが、そういう会社に限って……まぁ、色々ありますよね。形から入ることは良いことですが、ほとんどの場合、そこで終わる(本質がハラオチしてないので進歩しない)ことも多く、なんとも言えない気持ちになります。

世界を席巻しているGAFAなんかは、各種CSR関連レポートでSDGsに言及しているでしょうか。少なくとも、日本法人の情報開示ではほぼ見たことがありません。政府や文化の差があるとはいえ、彼らはSDGsがあろうがなかろうが自分たちが思う“良き未来”に進んでいるだけですし、それはある種正しい企業姿勢の一つのように思います。

ただし、SDGs自体はものすごくよくできたフレームワークなので、企業が活用すべきなのは間違いないのです。だからこそ、妄想ばかり語っていないで、もっと現実と向き合ってどのように貢献できるか考えていきましょうよ。

相変わらずのSDGsウォッシュ

なぜ企業レベルでSDGs対応が難しいかというと、主語が大きすぎる点があるからです。SDGsはグローバルな概念であり、「全世界(200の国と地域)」とか「誰も置き去りにしない(70億人)」とか、企業がどうこうできるレベルをはるかに超えており、それだけを語っても何も始まらないという現実もあります。

世界とは言わなくても、主語として国とか環境とかダイバーシティなどとしても大きすぎます。そのために細かい現場の具体性が見えなくなってきています。

また、企業のSDGsへの対応で問題なのは、SDGsをゴールと認識している点があります。もちろん、文字どおりゴールの一つであることは間違いないのですが、御社は2030年で終わるわけではないですよね?一応2030年以降も続きますよね?だとすると、SDGsはゴールではあるけど、どちらかというと、2040〜2050年に向かうマイルストーン(中間目標)でしかないわけですね。それをSDGsに対応すれば万事良しとするから、本当にそれはサステナブルなのかとなるのです。御社がどう表現しようが構いませんが第三者からみたら確実に「SDGsウォッシュ」です。

当ブログのタイトルは「CSRのその先へ」ですが、まさに「SDGs(2030年)のその先へ」ですよ。SDGsは“すでに起こった未来”でしかありません。

取り組みたくないSDGs課題

たとえば、SDGsには、実際にビジネスとするには非常に難しいレベルのターゲットやインジケーターもあります。そんなターゲットに対する展開で「社会的価値は高いが儲からなさそうな事業」に5〜10年のコミットメントできますか?。「今儲かっている事業がSDGsにマイナスに働く可能性がある」とわかったとき、その数百〜数千億円の売上を捨てる勇気がありますか?と。

「SDGs対応=CSR活動」って本当にそうでしょうか。日本国内で行なっている、御社のそのCSR活動は、SDGsの169項目のターゲットや232項目のインジケーターの、どこにどれくらい貢献できるかわかった上での発言ですよね?

また、SDGsって結局「人(人権)」の話なのです。これはターゲットやインジケーターの内容やスローガン(誰も置き去りにしない)を知っている人は理解していますが、マーケティング手法としか見ない人には、なかなか見えてこない視点のようです。

SDGsには積極的な企業も、経営トップや現場の従業員ひとりひとりが、CSR/サステナビリティを「リスクと機会」として深刻に考えている(危機感をもって対応をしている)わけではありません。ですので「SDGsが“起点”になるビジネス」は、大いにありえますが「SDGsに“貢献”するビジネス」は、正直微妙なところではあります。言ったもの勝ちな世界ではなく、論理的で倫理的なビジネスモデルの構築をしていきたいところです。

また、ビジネスを第一義とすると、ビジネスになりにくい課題はそのまま放置されることになってしまいます。経済合理性を追求した結果が現代の課題だらけの社会なはずなのに、SDGsの良い流れをまたビジネスありきに戻すことは良いことなのでしょうか。それでは今までとなんら変わらないのではないでしょうか。あくまで社会的価値創出が軸にあって、その副次的効果として経済性を求めるのが本質的なアプローチでしょう。

このやりたい(儲かりそうなことしかしない)ことだけ行うことは「チェリーピッキング」といわれ、嫌われるもとなのでお気をつけください。

SDGsとCSV

SDGsは重要な項目ばかりですが、本当に社会からのニーズを顕在化したものなのでしょうか。よく言われるのは、社会的要請も多いカテゴリである、文化保全・震災復興、LGBT対応の充実、宗教の自由、などの詳細はSDGsにはなく、ビジネス的には、例えばサプライチェーンにおける社会的責任の項目は、それこそSDGsコンパスでも、古くはISO26000から、CSRの本丸とさえいわれる活動のはずですが、SDGsのターゲットには明記されていません。SDGsが企業専用のフレームワークではないとはいえ、社会からの要請とかけ離れている部分があるのも事実。このギャップをどのように理解し実践していくかに、今後の注目が集まることでしょう。

ここ数年、SDGsの研修やワークショップが花盛りです。これ自体はとても良いことで、企業サイドも外部専門組織からどんどん知識を中に入れていくべきです。で、問題は、そこで多くのアクションが終わってしまうことです。多くの企業が、研修をして“思考停止”になっているように思います。社員個人の意識を上げる重要性はわかるのですが、それと同時並行、もしくはそれより先に組織としてのSDGs対応を決めなければなりません。

CSVが盛り上がり始めた時も、CSV関係のセミナーがとてもたくさんありましたが、5年以上たった今、日本の企業に深く浸透したと言えるでしょうか。少なくとも上場企業と未上場大手の4,000社強はすべての会社がCSVをしていますでしょうか(それはSDGsにも言えますが)。特定のコンセプトが盛り上がっても、それは身内ネタとしての「コップの中の嵐」や「裸の王様」である可能性もありますので注意しましょう。

SDGsの基本概念

私は、各企業が、もしSDGsに取り組むならば「誰も置き去りにしない(leave no one behind)」というキーワードにこそ、真剣に向き合うべきだと思うのです。

SDGsの最も大切なメッセージはこのコンセプトです。これはフィランソロピー的な発想だけではなく、たとえば、BtoCメーカーならば、自社の商品を買うことができない人はどこの誰なのか、欲しくても買えない人にはどうしたら買っていただけるのか、などと考えることもできます。当然、その商品・サービス自体が、社会的・環境的負荷が低く、顧客の課題解決に貢献し(ステークホルダー満足度の向上)につながることが前提にはなりますが、そういった考え方もでてくるわけです。

昨今のSDGsの事業マッピングがよくないのは、それが「後付け」だからです。アウトサイドインが重要だとあれほどSDGsで言われているのに、なぜそれができないのか、ということです。最近は「SDGsビジネス」「SDGs経営」とか、SDGsのポジティブな面ばかりが語られますが、企業にとってSDGsに取り組むリスクやコストを正確に算出できているのでしょうか。

SDGsは全世界における全体最適のツールです。企業ごとの部分最適では使いにくい側面があるのは事実です。SDGsに個別企業が部分最適でなところで活動をするだけで、日本そして世界は良くなるのでしょうか。このあたりは課題も多いと思いますので、そんな時こそ原点となるコンセプトに立ち返りましょう。

SDGs自体のニーズ

根本的なツッコミを一つさせてもらうと、SDGsは、企業やステークホルダーの多くの人々に求められているものなのでしょうか。

人間には「損失回避傾向」という認知バイアスがあるため、利益よりも損失の方をはるかに重要視する傾向があり、短期の利益貢献がほとんどないCSR活動は、今まで経営者の理解が得られにくかった、というのは皆さん周知のところです。たしかに「御社にはコスト増だが、社会全体が豊かになるのだからCSRを受け入れろ」といわれても、多くの経営者は納得できないでしょう。人間はどんなに論理的に正しいことを言われても、損をする可能性が高ければ説得されないものです。

残念ながら、現実社会においては何が公正で誠実で正義であるかは、論理ではなくステークホルダーの利害と感情で決まることがほとんどです。例えば、SDGsのように、どれだけ国際的な正義で誰も否定できないようなことでも、です。SDGs対応の難しいところは、SDGsが国際的な絶対正義であり、各個人は肯定できなくても否定することは絶対にできない点にあります。「社会が良くなってあなたが損することはないですよね?」といわれたら100%の人が同意するでしょうが、その“社会が良くなる”ことに自身のコストをかける(損失)ことになれば、多くの人は「総論賛成・各論反対」の態度を示すことになるでしょう。自分の損失の上になりたつ社会正義には現実問題として賛同はしにくいものです。

もう一つの対応の課題は「課題同士の干渉」です。「17の目標のうちどれに取り組むべきか?」の議論を進める一方で改めて念頭に置かねばならないのは、SDGsに含まれる個別のゴールが相互に影響し合う「イシューリンケージ(課題の相互連携)」があるということです。

イシューリンケージによって問題となるのは、企業が個別の社会課題の解決を追求することで別の社会課題に負の影響を及ぼす、いわゆる”あちらを立てればこちらが立たず”の状況を生み出す点です。例えば、電気自動車の販売でエコ(SDG13:気候変動対策)に貢献していても、その部品製造の原材料調達で児童労働が行われていれば公正な労働(SDG8:ディーセントワーク)に反することになり、結果的にSDGウォッシングになってしまいます。SDGsでは企業単体の活動はどうでもよく、バリューチェーン(サプライチェーン)全体で、どこまでSDGsに対応できるかが、社会的インパクトと課題の本質的な解決に貢献できます。

膨大なSDGsの対応費用

SDGsは、達成に向けて約年間7兆ドルの費用がかかるけど、約年間12兆ドルのマーケットを生み出す可能性があるという趣旨の調査があります。これらはほぼオフォシャルな数字です。しかしながら、いろんな進捗報告みても「SDGsがあったから生まれた市場」がそんなにあるようには思えません。あったとしても、もともとあったCSR的マーケティングのマーケットでしょう。それこそ、CSVの話だと思います。もっと言ってしまえば“こじつけ”と言われる類のものも多分に含まれます。これを「取らぬ狸の皮算用」といいます。

加えて、今まで年1兆ドル強は資金投資がされていたようですが、それでも5兆ドル以上たりません。12兆ドルで儲けた分、世界がまわしてくれるのでしょうか?そんな余裕のある国や企業はあったかなぁ……。

ロジック自体には問題ありません。企業には「壮大なマーケットがSDGsによって生まれる」といって、ソーシャルセクターやパブリクセクターには「企業のリソースがどんどん投入されるぜ!」とする2面性です。もちろん、市場規模の試算を出した会社のビジネス立ち位置を考えれば、煽る目的も多分にあるのが現状だと思いますが、それを信じるのはSDGs推進支援をする会社だけですよ、と。

SDGsの経済合理性

CSRを広い目で見たら一部の経営学者の弊害という気もするんですね。「経営学的に正しい(≒経済合理性のある)」ことが自動的に、CSRとしても社会全体としても、幸福に導いてくれると思い込んでいるところがあるように見えます。当然経営学者も人間で、見えていない事象や当てはまらない例外もたくさん見逃している可能性も高いです。そもそも経済合理性を追求した結果、今の社会問題だらけの世界になっているわけで、CSVで世界が救えると考えるのは(考え方は重要ですが)、ちょっとおこがましいのではないか、とすら思います。

CSVやSDGsの機会的側面も重要なのですが、そこに注力するがあまりコーポレートガバナンスがおろそかになったりしてますよね。現実問題としてCSR評価の非常に高い車メーカーや航空大手なんかが複数社不祥事起こしてメディアを賑わしてますよね。あういうのをみると、いろいろと思うことがあるのは私だけではないはずです。

SDGsで儲かっても、支出がそれ以上になれば、企業としてサステナブルに対応できるわけではないです。このあたりも夢ばかり見ていないで、現実に向き合うべきです。CSR活動に経済合理性を求めてはいけないことはなく、むしろ難しくとも追求すべきだと思いますが、「自社の利益=経済合理性がある」とする事例も多く、結局、社会的インパクトの総量を第一義に考えないと、ただの新規ビジネスになってしまう危険性があることも理解しておくべきでしょう。

CSRで儲けようとすることを、諦めてはいけない。難しくとも必ずその道はあると信じていくしかありませんね。

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SDGsに関しては、本・書籍の読書メモも含めて、いろいろな記事に様々な視点をまとめています。ご興味ある方はぜひチェックしてみてください。

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まとめ

SDGsの問題・課題をまとめようと思ったら、壮大な愚痴になってしまいました。申し訳ありません。一部感情的な表現もありますが、あながち間違いではないと思っていますので、ご容赦ください。

まだまだSDGsではたくさんの課題がありますが、SDGsのネガティブな課題を誰も発信しないので(オルタナさんあたりはさすがちゃんとしてます)それも問題な気もしますが、ただし、SDGsの課題を適切に認識できさえすればあとはそれを解決するだけです。

今の政府の“キャラクター推し”のSDGsのPR方法もどうかと思いますが(ピコ太郎、キティちゃん、トーマス、など)、私自身はSDGsは推進派で、知人よりレインボーバッヂを購入するような人間でございます。2030年は私はまだ40代のため、かなり切実にSDGsの達成を望んでいるし、そうなるよう全力で支援をしていきたいと考えています。私は娘がいますが、彼女が大きくなった時、社会に絶望してほしくないので、今よりもよい社会作りに貢献できたらとおもっています。

2020年がゴールとなっているターゲットもありますが、一歩ずつ進んでいきましょう!



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