CSRと成果をあげるための効果測定の3つポイント

効果測定の意味とは

CSR活動の課題としてよく挙げられるのが「効果測定」です。統合報告なども含めて、CSR活動の経済的・社会的な成果を明確にする必要があり、活動を適切な形でモニタリングしなければなりません。それには活動の効果の見える化をしなければなりません。

経営学者のピーター・ドラッカーは「測定できないものは管理できない」と言いいましたがまさにその通りです。管理できないということは全てが対処療法で後手にまわるということであります。

私はCSR活動の効果測定はすべきだし、そもそも何かしらの指標がないと活動をマネジメントできないため、ぜひすべきだと言っています。しかし「手段の目的化」により、測定“さえ”できればよくて、計測された数値自体の意義や意味を正確に分析しない(できていない)ケースも増えてしまっている現状があります。

CSR活動のKGI/KPI設定に関するアドバイザリーをする機会をいただき感じていますが、最近は定量的な効果測定は各社かなり進んできました。問題は「その数字が何を指し示すのか」を誰がどのように分析するのか、ということです。これができないていない会社はまだまだ多いです。

というわけで本記事では、成果と効果測定に関する考え方を3つのポイントにしぼってまとめます。

1、結果と成果の差

そもそも、CSR活動において「成果・成功の定義」を明確にしている企業はどれくらいあるでしょうか。たとえば、CO2排出量の計測は比較的簡単ですが、その数字が現時点の経営戦略と比較してうまくいっているか、それともうまくいっていないかを、どのように判断しますか?エビデンスがあり事業との整合性があるCO2排出量ってどれくらいだか答えられますか?

勘違いしている方も多いので説明しますと「結果」と「成果」は別物です。結果とは「達成した事実そのもの/アウトプット」です。成果とは「事実を基にした相対評価/アウトカム」と考えると良いでしょう。結果の方向性が間違っていない限り、成果はポジティブなものになります。

ただデータとしてCO2排出量を測ったところでなんの意味もありません。それは結果であり、ただの数字情報でしかないからです。しかしその数字から法則性や事実および業務改善のヒントを見つけられることではじめて、データが価値を生むようになります。これらの背景と文脈を加えたものを、一般的に価値創造ストーリー(価値創造プロセス)といいます。これは社内事情とCSRの両面に詳しい人しかできない高度な業務です。

たとえば、CSRの成果とは、最終的なアウトカム/インパクトの「中長期的な企業価値の向上」のマイルストーンです。女性役員数でもCO2排出量でもなんの数字を目標にしてもいいけど、それが自社としてステークホルダーの価値向上にどう貢献しているか示してもらわないと意味がないです。つまり、たとえば「女性役員数が2人増えて3人になった」という結果だけではなく、その背景にあるストーリーがあって、3人に増えたことでどのようなビジネス・リターンが組織にあるのか、までを含めて開示をする必要があります。

この結果と成果を混同してしまったり、結果ばかりの羅列だったりする企業がまだまだあります。効果測定の4段階「インプット→アウトプット→アウトカム→インパクト」の基本的な概念を学んでおきましょう。

2、数字のとらえかた

とはいえ、私の言っているものはあるべき姿ではあることは間違いないですが、それを実践するとなると、かなり大変です。

ではどのように考えれば良いのかというと、成果とは、絶対的な数字ではなく相対的な数字でみるとわかりやすいということです。CSRの効果測定は原則的に「社会およびステークホルダーの変化」を定量化するのです。例えば、「CO2を1万トン削減しました!」よりも「昨年と比べてCO2を10%削減(1万トン削減)できました」というような具合です。CSRは定性的な成果というかプロセス評価も多く、すべてを定量化するのは難しいのですが、取り組みを始めてから「どれだけ変化があったか」を見ていくとその成果を定量化できるのです。

また、CSRには比べて良い数字とそうでないものがあります。それらは比較可能に見えて実は比較不可能な数字なのです。今のCO2排出量でいえば、製造業での1万トン削減と非製造業(IT企業など)の1万トン削減では、その意味合いは大きく変わります。これは、話が深いのでどこかでまとめて記事にします。

また、CSRではビジネスインパクトのサイズの課題があります。良い事例とされるCSR活動でも、組織全体ではなく、ある程度小規模なサイズ(組織単位)で行われることが多いので、当然最終的なインパクトも小ぶりで終わります。この一部の事例をもってして「〇〇〇〇株式会社のCSRは先進的である」とは本来は言えないのですが、現実的にはそうなっている節はあります。成果よりも見せ方にこだわっている事例です。

CSRは、因果関係が証明できず、成果がよくわからないということで、とにかくインプット(投下コスト)が重視されます。それは間違っていないのですが、コストを重視する以上アウトカム(成果)の最大化はあまり期待できません。成果が期待できるレベルのオペレーションをするのであれば、それなりにインプットをする必要がありますね。

たとえば、専任のCSR担当者を1人つけるとか。色々な企業を見てきましたが、兼任も含めて、担当者および責任者が決まっていない企業は、CSR活動が基本“他人事”です。会社として人的コストをさきたくないのはわかりますが、中途半端な活動で成果を求めるのはさすがに無理があります。

つまり何が言いたいかというと、事業規模や相対的にみて、適任者が責任をもってCSR活動の結果を分析すべきということです。だって“企業の社会的責任”に関する取り組みに、誰も責任を持たない(持てない)って、なんの冗談ですかって…いやこういう企業は結構ありますよ。

3、成果の時間軸

また、CSRの成果は時間軸で捉える必要があります。短期で業績に影響があると予想される課題対応も、長期的な視点でリスクマネジメントをする課題対応まで幅広いからです。

例えば「気候変動(環境課題対応)」は短期的な企業業績との関係性はほとんどないと思われますが、中長期的には事業継続に関わるリスクとなって顕在化し、企業業績への影響が予想できます。逆に「労働慣行」へのアプローチは、従業員のモチベーション向上等の短期的な成果にも貢献しえます。これにより企業業績への短期〜中期的のポジティブな影響も期待できます。

CSR/サステナビリティの定義を明文化するのはもちろんのこと、自社のCSR活動で最も重要な指標(成果)を決めることも重要です。理論上はマテリアリティのKGIとなると思いますがどうでしょうか。御社の日々のCSR活動は「いつまでに、どんなゴールを目指して」いるのでしょうか。ここで現実と将来の差を埋めることに価値があるわけです。

マテリアリティを決めているけど、実務的なCSR活動ではマテリアリティと関係なく行なっている企業は本当に多いです。「マテリアリティ関係ないじゃん!」と何度ツッコミをしたことか。心の中でね。

成果は測定すべきですが、その数値化された成果が企業価値向上に貢献しているとは限りません。つまり、経営的にはほぼ意味がない可能性も十分にあるということです。PDCAを考えるときには、目標と成果もセットで考えていると思います。そのときに、その施策が1年後なのか5年後なのか、成果が最大化できるであろうスパンを決めておかなければなりません。

まとめ

CSR/サステナビリティ経営の必要性は浸透してきましたが、成果が出せている企業はそう多くありません。持続的に経営上の成果を生み出せるCSR/サステナビリティへと、ステージアップが急務です。

CSRにおいて効果測定を行い、その施策が失敗なのか成功なのかを見極めなければなりません。そうでなければ「失敗の原因が特定できなければ、次に何をしたら失敗を回避できるのかがわからない。」「成功の原因が特定できなければ、次に何をしたら成功に貢献できるのかがわからない。」のようになってしまうのです。

CSR活動の行動に対する数値の良し悪しなどは小さな話で、本質的には、それらの数字からその施策の失敗や成功の原因を探ることこそが、ビジネスゴールになります。あくまでも数値はただの情報であり、重要なのは、その数字が何を語っているか読み取る分析能力が、今後のCSR担当者に求められる素質だと考えています。

残念ながら、効果測定はケースバイケースで絶対にこの指標とこの測定方法というものはありません。情報に振り回されないよう、きちんとマネジメントしていきましょう。

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