CSR/ESGにおける企業評価向上の課題は何か

企業評価をあげるコツとは

ごく一部をのぞき、時価総額の高い上場企業ではCSR/ESG企業評価をどうにかあげようと努力をしています。

もちろん、私も外部評価向上のコンサルティングで毎年複数社の企業を担当させていただくのですが、時価総額トップ500社程度は、ESG投資の情報開示圧力もあり今後もその対応に追われるでしょう。

問合せベースでは、第三者評価の依頼は急増しており、外部からどのようにみられているのかをみなさん気にしていると肌で感じています。

そこで本記事では、CSR/サステナビリティ企業評価を中心に、どうやったら企業評価を上げられるかという視点をまとめます。

企業評価とは

企業がCSR/ESGに関する情報を出さないというのは「出すと問題があるからできない」のか「やっていないからできない」のか、どちらかのパターンがほとんどですが、開示がないもしくは少ない企業はどちらにしてもネガティブに評価されます。つまり、質の向上の前にまず量を開示しなよ、ということです。

例えば、評価機関/専門家などは「定量情報」を好み、エンドユーザー/消費者などは「定性情報」を好む傾向があるようです。他には、ESG評価機関は「現状のESG対応状況」を評価して(成果を判断するため)、投資運用会社は「将来のESG対応状況」を評価する(運用パフォーマンスを高めるため)、という方向性が指摘されます。つまるところ、企業評価とは実際にどうなのかではなく、ステークホルダーからどう思われているかが可視化されたものにすぎません。

企業評価は大なり小なり“経済効果”を潜在的にもっています。第三者の企業評価をみて、何からしらの経済合理性を感じ意思決定を行うステークホルダーがいるからです。ESGでは投資判断の材料(の1つ)として、CSRでは組織の信頼性の証明として、ステークホルダーの意思決定に少なからず影響を及ぼしています。ですので、企業としては、とにかく外部評価を上げたいのです。多くの個人も、できるならば他人に良く評価されたいと思っているでしょうし、このあたりは感覚でご理解いただけると思います。

評価向上について

この10年近くCSR支援をさせていただいていますが、当然すべき「当たり前の活動が圧倒的にたりない」という現状が多くの企業で見受けられます。そしてその多くがCSRの外部評価の低い企業です。逆に評価が高い企業は、トップが本気を出してCSRを進めている企業です。そしてトップが「当たり前の活動を当たり前にやる」ことを推奨しています。CSR推進のノウハウが仮になくても、成果を出すための一番の近道がトップの理解と関わりと言えます。

CSR活動では、奇抜・特異な活動や成果を求められることは基本的になく、当たり前のレベルを引き上げていくことが、外部評価向上の一番のコツです。地道にただしハイレベルで継続するのです。そういった「活動→開示」のサイクルをできるだけ多く回してきた企業から評価されるようになるというか。身もふたもない話ですが。

つまり私が言いたいのは、CSR/ESG評価が日本でトップクラスの企業でも、まったくといっていいほど社内浸透ができていないとか、そんなレベルの企業が“いくつもある”という事実です。色々な方とお会いすると、色々な噂を聞きます(たいていネガティブなこと)。

すでにCSR活動を継続的に続け改善をしてきた企業であれば、情報開示のテクニカルな部分の調整だけで外部評価機関の評価獲得をできるのでしょうが、例えば、日経や東洋経済などの評価を見ても、それができるのは国内で100社未満ではないでしょうか。世の中の99.9%の企業では残念ながら、まだまだCSRは新しい概念なんですよね。

評価主体の多様化

企業評価をどう上げるか、には一定のテクニックがあるので上げようと思えば上げることはできます(ただし予算と時間がある場合)。しかし、活動の質が低ければ長期的に意味があるものにはなりません。開示テクニックがまだ一般化していないからいいものの、他の企業がみんな導入したら結局評価は伸びなくなりますから。

他に企業が知るべき動向は「評価主体の多様化」です。文字通り、企業のCSR/ESG的側面を評価する組織・団体が多様化しています。我々も3年前から企業のCSRウェブコンテンツの格付け(CSRコンテンツ充実度ランキング)を行なっていますが、政府でも民間でもアワードや格付けが増える一方です。

たとえば、最近は大手NGOが反企業キャンペーンを軸ではなく、シンクタンク化して企業評価や認証を行うようになってきています。イニシアティブ化する方向性もありますね。NPOの発信する企業情報はESG評価機関も評価項目に入れていると言われていますし、企業も無視しにくい存在になっています。

CSR企業評価とは、あらゆるステークホルダーの視点を統合して、第三者が企業価値を把握するものです。ですので、根本的な対応はステークホルダーとの接点を改善する、つまりステークホルダー・エンゲージメントをより積極的に行うことが求められます。

評価自体の課題1

さて、外部機関が企業評価を行うには、企業が定量的・定性的に、どのようなCSR活動をしているかが適切に行われていないと実施できません。そこで企業側は、適切に評価をしてもらえるよう、自社の取り組みをセルフチェックして開示する必要があります。いわゆる活動の効果測定(社会的インパクト評価)と開示です。ただCSR活動の効果測定はかなり難易度が高いです。

たとえば、社会貢献活動のように社会性が評価される活動評価には普遍的な評価メカニズムは存在しません。課題としては以下のようなものがあります。

・成果を金銭価値に換算する基準、成功か失敗かを判断する基準、などがないことによる「解釈の多義性」
・利害関係者ごとに評価対象の着目点が異なるという「多様なステークホルダーの視点」

企業はこれらの課題を認識しつつ、評価を賢く使いこなすポイントがあります。たとえば以下のような視点です。

(1)評価の対象を明確にする。事業を通じて取り組む社会課題(特性、範囲、規模)を明らかにし、事業が課題解決の達成手段として適切に設計されているかを確認する。
(2)事業の成果を「効果」ではなく「変化」としてとらえる。何が生産されたかよりも、何が・どんな期間で・どのように、変化したかを成果とする。
(3)測定や分析を実施するうえでは「設問」が重要。評価作業ではまず、評価を通じて何を知りたいか、結果をどう活用したいかを整理し、関心事項を絞り込む。

特に(2)の時間軸の考え方は、CSR活動を評価する上で非常に重要になります。例えば「気候変動(環境課題対応)」は短期的な企業業績との関係性はほとんどないと思われますが、長期的には事業継続に関わるリスクとなって顕在化し、企業業績への影響が予想できます。逆に「労働慣行」へのアプローチは、従業員のモチベーション向上等の短期的な成果にも貢献しえます。これにより企業業績への短期〜中期的のポジティブな影響も期待できます。

加えて、ボジティブな社会的インパクトを計測するのはいいですが、物事には必ず負の側面が存在し、ポジティブ面の評価だけでその活動が適正かどうかを見極めることはできないのではないか、という議論もあります。ですので、初期段階では社会的インパクト評価は第三者の専門家を交えて進めることをお勧めします。

評価自体の課題2

評価されるには、まずは自分で自分を評価しなければなりません。しかし、これも厄介な問題なのですが、成果は測定すべきですがその数値化された成果が企業価値向上に貢献しているとは限らないということがあります。つまり、効果測定しても活動自体が“あまり意味がない”可能性も十分にあるということです。

私はCSR活動の効果測定はすべきだし、そもそも何かしらの指標がないと活動をマネジメントできないため、ぜひすべきだと考えています。しかし測定できても計測された数値自体の意義や意味を正確に分析しない(できていない)ケースも増えてしまっている現状があります。

たとえば、女性活躍推進で「女性部長数を2015年比で10%増やす」が目標(KPI)の場合、それを宣言して達成すればよくなってしまいます。では「女性部長数を10%増やした」結果、企業やステークホルダーにはどんなメリットがあったでしょうか。女性部長が増えて、どれだけ多くのステークホルダーの課題が解決され、幸せになれたのでしょうか。

このように、手段の目的化といいますか、ステークホルダーの利益にほとんど貢献していない活動をしても、本来的には、そもそも効果測定をする意味がない、という現象もあります。これは大企業に多い課題です。現場的をたいして知らない上層部がKPIを作り始めると“ねじれ”が生まれるというか。このあたりは大きな課題ですので、別記事でいつかまとめます。当然、外部評価機関もこのあたりの事情を知っているので、評価項目にも色々と工夫をしているわけですね。

まとめ

本記事では、企業評価向上について、組織内の自己評価の課題、などについてまとめました。何をするにしても、ステークホルダーに評価されるって、なかなかシビアなことです。

論点が色々出てしまいましたが、CSR企業評価の品質向上のためには、我々評価機関側の評価フレームワークの洗練もですが、企業側の情報開示の質と量の、双方の動きがあってこそ成立するものです。活動だけに戦略性を求めるだけではなく、今後は情報開示についても戦略性を持っていただけると、より評価向上が期待できます。

当たり前の活動を継続すること。何か逆説的ではありますが、サステナブルな行動をすることで、サステナブルな会社になれるといいますか。CSRみたいなカテゴリでは一発逆転の施策は基本的にないので、地道で華やかではない泥臭い活動をどれだけ実施できたかで、その評価が変わる気がします。

ということで今日はこのあたりで。

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