ソーシャルビジネスの最前線

今回の読書メモは「3つのゼロの世界–貧困0、失業0、CO2排出0」(ムハマド・ユヌス、早川書房)です。

泣く子も黙る、ノーベル平和賞受賞者でグラミン銀行創設者のユヌス氏の最新翻訳書です。ユヌス氏は「ソーシャルビジネスの父」と呼ばれる、まさに“本業でCSR”をもっとも体現するする一人であります。

さて、本書は、いつもどおりのユヌス氏の本、とも言えますし最新のオピニオンが組まれた内容、ともいえます。誰も知らない話が書いてあるというよりは、全般的にユヌス氏の視点で世界経済の課題と解決策がまとめられています。改めて、ソーシャルビジネスの定義をアップデートしたような内容、というと伝わるでしょうか。

CSR担当者に不足しがちな、ビジネスよりの論理、自身のソーシャルマインド、世界的な経済の流れと企業動向に関する知識、などが本書から学べると思います。

ちなみに、今では世界中から注目されるユヌス氏ですが、最初にグラミン銀行を立ち上げマイクロクレジットというツールを使ったのは1976年です。ノーベル平和賞受賞は2006年ですので、40年近くがんばってきた結果です。

半年〜1年程度のCSR活動の成果で、チマチマ・グチグチいってないで、大手企業も少なくとも10年くらい先をみてビジネスをしていただきたいなぁ、と感じた今日この頃です。

CSR担当者はもちろん、大手企業の経営企画やマーケティングに関わる方におすすめです。

3つのゼロの世界

「ソーシャル・ビジネス」、「起業家の精神」、「金融システムの再設計」の3つを追求すれば、貧困0・失業0・二酸化炭素排出0の「3つのゼロの世界」は実現できる。ユーグレナや九州大学など、日本の諸団体との提携事業も多数紹介。分断と危機の時代を乗り越えるヒントがここにある。

「ムハマド・ユヌスは、あくまで一つの村を救おうとしただけだった。しかしその活動が、どういうわけか世界を変えることになった」
――バラク・オバマ(前アメリカ大統領。ノーベル平和賞受賞)