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CSR報告書におけるアウトプット/インパクトの考え方

CSR報告書のインパクト

先日「CSRモバイルサイト調査」という調査を行い大手企業400社のCSRウェブコンテンツをチェックしました。そこで感じたのはコンテンツの質が低い企業も多かったですが、そもそものCSR活動の「データ」の取り扱いに無頓着な企業が多かった印象があります。

データというのはファクト(事実)であったとしても、それが意味・意義のあるものであるとは限りません。たとえば「CO2排出を1万トン削減した」というデータがあったとしましょう。よほど間違った測定方法でなければ、この数字自体の信頼性はありそうです。しかし、これだけでは「去年より多いのか少ないのか」「同業他社よりすごいのか」「CO2排出削減で社会にどんなメリットがあるのか」などがまったくわかりません。

というわけで本記事では、CSR報告書におけるデータの考え方とアウトカム/インパクトについてまとめたいと思います。

CSRデータのインパクト

先ほどの例でいえば、世の中のほとんどの人は「1万トン削減」のインパクトの大きさを的確にイメージできないでしょう。数字は比較する対象があってこそ意味が生まれます。データはレポーティングにおいて重要ですが、それだけでは価値は高くありません。

この不明確な例をよく見るのが“活動報告としてのCSR報告書”です。「この1年で〇〇しました」という内容のレポーティングです。開示自体は良い事ですが、ステークホルダーの理解を促す良い表現とは言えません。この現状の数字だけの開示は、その情報の受け手となる読者がどう判断すればいいのかわからないものが大半です。うまくストーリーテリングからのコミュニケーションにつなげられればいいのですが、これがなかなか難しいのです。

基本的には「アウトプット」となる具体的なCSR活動が、「売上に貢献するのか」それとも「コスト削減に貢献するのか」という、二つの枠組みで考えると、成果のKPIが見えやすいです。

例えば「CO2排出の1万トン削減」は、どう考えても売上に直接貢献はしにくく、コスト削減に貢献するというのであれば「エネルギー使用コスト1,000万円削減」という成果になるとか。このあたりはどこかのタイミングで詳しく記事にまとめます。

CSRデータの意味

ちょっと別の視点で。数字というと「アウトプット」(CSR報告書を作った、など)ではなく「アウトカム」や「インパクト」(CSR報告書を作って配布した結果何が起きたか)が、昨今のレポーティングでは求められています。活動ではなく“成果は何か”を問われている、とも言えます。通常、この成果をもってして、CSRが企業価値向上に貢献した、CSRで社会価値創出をした、とします。

CSRの価値評価でいうと「インプット」の費用を換算してもあまり意味がありません。あくまで成果の「アウトカム」を測定しなければならないのです。例えば、社会貢献活動で「インプット:1億円、アウトカム:2億円」と「インプット:1億円、アウトカム:5億円」というインパクト評価があった場合、どちらもインプットは同じですがアウトカムから生じる社会的インパクト(最終成果)は大きく異なりますよね。

このインプットを中心としたCSR関連報告が日本企業では多いのですが、社会側からみてただの活動報告でしかないし、どんなに社会的に良いことをしてもあまり意味をなさない報告書になってしまいます。ステークホルダーからしたら「で、何があったの?」となりますね。

投資家から見ても同様でしょう。投資した金額を運用し増やしてくれる(リターンがある)と考えるから投資しているのに、「その活動インプットによってどんな価値を生み出したのか」を説明できていないと怒りますよね。これが、投資サイドの人がいう「企業価値」についての創出プロセスを明確にしろということなのです。

CSRデータ自体の価値

ただし非財務領域でも、データ開示だけでインパクトが出せる方法もなくはないです。

例えば、ステークホルダーでも学生(将来の従業員・顧客として)などは偏ったCSRデータを見ていると言われています。多くはワークライフバランスに関する項目ですが、たとえば「“育休が充実している”会社は、良い会社だ」と特定のデータだけで企業の組織評価を行う場合もあります。

こういう時は、ストーリーテリングなどのコンテクスト自体をコミュニケーションの軸にする方法はなくてもかまいません。良くも悪くも、要は「特徴的な成果をあげている企業が目立つ」ということです。「女性活躍推進レベルが業界トップ」とか「障害者雇用が国内トップクラス」など、CSRの総合評価が低くても特定カテゴリーで突き抜けている会社は「良い会社」というイメージがつきやすいのが事実です。

東洋経済新報社の岸本氏は、PR効果を高めるために特定カテゴリーに特化したCSR活動を「ピンポイントCSR」としています。(参照:「本当のホワイト企業の見つけ方」東洋経済新報社、2014)確かに、特徴的なCSR活動は、メディアや個人ブログ等でも事例として紹介しやすいですね。

ただし「対外的な評価」にフォーカスするがあまり、他のカテゴリーのCSR活動がおろそかになっては意味がありません。あくまでも、ステークホルダーが主役になる活動がCSRであり、評価機関やごく一部のステークホルダーのためにCSR活動があるわけではないからです。

特定のデータは、特定のステークホルダーに対しては訴求力があることはわかりますが、企業にとってステークホルダーは幅広くいて、特定のステークホルダー以外にマイナスな評価を受けてしまう可能性は否定できません。ピンポイントCSRは、あくまでも広報的な成果を目指すものと考え、基本的なCSR活動ができている企業が行うのが、ベストなのかもしれません。

まとめ

CSRコンサルタントの大きな役割として、企業のCSR活動の「データ」を「インパクト」に変える、もしくは、数字に意味を持たせる仕事なのかもしれません。

データとその付加価値をまとめたのが理想的なCSR報告です。特に読者のCSRリテラシーレベルが低くなるに従って、データそのものよりも付加価値の重要性が高くなります。専門家レベルでCSRの定義が異なるくらいなので、世の中の99%の人はCSRリテラシーなんて皆無だと思ったほうがいいのかもしれません。

企業が社会にどれほどのインパクトを出せているのか。それによって、CSR活動がビジネス価値にどこまで貢献できるかが変わってきます。そのあたりはをうまく形にできるよう、私もCSRコミュニケーションおよびステークホルダー・エンゲージメントの調査・分析をし、法人会員企業様を中心に、様々な情報提供をしていこうと思います。

御社では、CSR関連データをどのように開示し、どのようなステークホルダーの行動変容を生み出していますか?



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執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]