企業のSDGs対応

新年度の最初の四半期は、政府関係の大きな動きがある季節でもあります。

CSR関連のネタでいえば、なんといってもSDGsです。CSR/ESG支援企業はもっと盛り上がっています。著名な経営学者のコンセプトもすごいですが、200カ国近くで批准され日本政府も本腰を入れて動いているとなれば、支援側のネタとしては最上級です。

ということで、政府が考えているSDGs対応の中で、企業に関係しそうなアワードと情報開示という視点でSDGsをまとめます。

表彰制度の設置案

■名称
ジャパンSDGsアワード

■目的
SDGs達成に向けた企業・団体等の取組を促し、オールジャパンの取組を推進するために、SDGs達成に資する優れた取組を行っている企業・団体等をSDGs推進本部として選定し表彰する

■表彰対象
・SDGs達成に資する優れた取組を行っている日本の企業・団体等。
・毎年5案件程度を選定し表彰。このうち特に優れた1案件を総理大臣によるSDGs推進本部長表彰、その他の4案件を官房長官及び外務大臣によるSDGs推進本部副本部長表彰とする。
・表彰式を実施

■選考基準
SDGs(複数のSDGsであることが望ましい)の達成に資するものであるか。
・「誰一人取り残さない」理念の下、脆弱な立場の人に焦点を当てているか。
・経済/社会/環境の相互関連性を重視しているか。
・セクターを超えたパートナーシップやイノベーティブな手法を活用しているか。
・取組の公表、評価、見直しを透明性をもって行っているか。

引用:「持続可能な開発目標(SDGs) の取組状況」(SDGs推進本部、2017年6月)

SDGs関連の情報開示をしていくなら、こういうアワードも射程範囲となるでしょう。まだ企画段階のようですが、アワードが仮に立ち消えしたとしても対応して損はない内容です。今から対応をしておきましょう。

SDGsの情報開示

企業サイドの情報開示としては、CSR報告書やサステナビリティ・レポートで、SDGsと事業のマッピングや関連情報がしやすいと思います。

すでにSDGsと今の事業との関連性を示し情報開示を行う企業が急激に増えています。ただマッピングとしては間違いないとは思いますが、169のターゲットに貢献できる話やエビデンスはほとんどの企業で示されていません。

特に問題となるのは統合報告書/統合レポートです。SDGsへの対応が、自社と社会の経済的成長にどこまで貢献できるかエビデンスを明示できない今、投資家が投資の意思決定に必要な情報になり得るのかというと、私は疑問を感じています。もちろん、簡単に解決できる話ではないので、解決にはそれなりのリソースを使う必要があるでしょう。想定読者が株主・投資家なのでサステナビリティにおけるトリプルボトムラインの軸を、どこにおくかで評価が変わってくるように思います。

そうなると、政府がSDGsのアワードを作ったり推奨したとしても、上場企業でもトップオブトップの一部の企業がリアクションするだけで、多くの日本の上場企業は、SDGsの価値に気づかずに2030年間際まで進んでしまう可能性もあります。SDGsへの戦略面での対応は当然なのですが、情報開示の側面はなかなか課題だらけのようです。

SDGsの政府対応

以下、政府関係機関などの動きです。SDGsとは関係なさそうだった官公庁でもよく取り上げられるようになりました。ここ最近のレポートなどをまとめます。

平成28年度「CSR研究会」報告 ―社会課題(SDGs等)解決に向けた取り組みと国際機関・政府・産業界の連携のあり方―

持続可能な開発目標推進円卓会議(第3回会合)の開催(結果)

平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書

「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」を策定しました-ESG・非財務情報開示と無形資産投資の促進-

持続可能な開発目標(SDGs)推進本部

第2回持続可能な開発目標(SDGs)推進特別分科会 議事録

まとめ

パブリックセクターやソーシャルセクターから広がり、今や企業サイドでもよく話題に上がるようになったSDGs。政府筋の積極的な対応により、今後も日本で広がることは間違いありません。

ただし、SDGsへの“本質的な意味”での貢献には、CSR活動やビジネス・インパクトの社会的インパクト評価を行い、どの事業がどれだけ影響を与えているのか開示する必要があります。

企業サイドでSDGs対応が盛り上がるのは喜ばしいのですが、本質を忘れてしまい“情報開示のためのSDGs対応”にならないようお気をつけください。

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