|カテゴリ:マテリアリティ , 目標設定

CSRにおけるマテリアリティ特定とKGI/KPIについて

マテリアリティの特定方法

近年のCSRの概念の浸透により、一歩進んでCSRに戦略的/積極的に取り組もうという企業が増えています。

そこで皆さんの関心の的が「マテリアリティ」となるわけです。

しかし、このマテリアリティの特定・分析に関して、どうやら勘違いをしている方も多いようですので、改めて解説させていただこうと思います。

本記事では、特定プロセスの紹介と、今、世界でマテリアリティについて何が起こっているのか、という話をまとめます。

特定プロセス

マテリアリティの特定と、付随するKPI設定の特定プロセスは、簡単にまとめれば以下のような流れになります。これは規模・業種等によって左右されるものではありません。

また、これらのプロセスは「策定プロセスが明確になっている」「課題が明確に定義され優先順位がある」「ステークホルダー評価がある」などの過程をたどり策定されます。

■1、検討すべき課題の抽出
国内外の社会課題、国際的ガイドライン、企業の方針/経営計画、評価機関の評価項目、リスク、などから抽出。

■2、ヒアリング
各ステークホルダー(消費者、取引先、従業員、投資家、NPO、有識者など)から、優先的に取り組むべき課題をヒアリング。ステークホルダーごとの重要項目や会社への期待を抽出。並行して自社グループの主要事業会社ごとに重要項目を抽出。

■3、調整
「主要事業会社ごと」と「ステークホルダーごと」の重要項目をまとめる。

■4、マテリアリティ特定
社内承認を経て最終的なマテリアリティを決定する。

■5、KGIの抽出
マテリアリティ内のゴール(目標)を設定する

■6、KPIの抽出
KGIに関連する行動目標(KPI)を抽出。

■7、PDCAサイクル実施
社内承認を経て、最終的なKPIを決定する。KPIのPDCAサイクルに落とし込み改善活動を行う。

※マテリアリティ特定のコンサルティング業務実務ではもっと細かいプロセスとなりますが理解しやすいように簡略化しています。

マテリアリティの重要さ

CSR実務を行う上で「マテリアリティ特定」が重要なのはわかっているけど、決めたマテリアリティが正しいかどうかっていう“精査プロセスの確立”まで到達していない、という企業も多いです。

CSRコンサルティング会社に丸投げでも考えようとしているのであればいいのですが、ただ単に戦略構築に流れるのもよい傾向とは言えません。安易な戦略への傾倒が社会へのポジティブなインパクトを生み出すとは限らないからです。いわゆる「机上の空論」です。一部のCSV論ではこういった課題が顕在化しています。

例えば「人権」は昨今のCSRで非常に重要視されていますが、人権対応をマテリアリティに含んでいないグローバル企業もたくさんあるわけです。マテリアルな側面がなければ対応しなくていいのか。そんなことはありません。だったら、マテリアリティを決める意味があるのか、という話にも当然なります。

私はこの問題を「マテリアリティ全部問題」と言っていますが、マテリアリティの特定・分析はだから難しいのです。

それならば、国連などが世界的にマテリアリティを決めてしまえば良いと思う人もいると思います。しかし世界はそうなっていません。つまり「統一されたマテリアリティは決められないので“マテリアリティを決める方法”を決めた」というのが現状です。みなさんご存知のGRI/G4のマテリアリティの話はまさにこれです。

ステークホルダーの視点

またマテリアリティの特定プロセスでは「ステークホルダー・ダイアログ」が重視されますが、そもそも特定の企業に興味がないステークホルダーと話をしても、ほとんど成果を生み出せません。

だから最近は「ステークホルダー・ダイアログ」は流行っていないとも聞きます。私の実感値としてもそうです。企業に興味のない第三者意見をマテリアリティに反映してもよいのか。なかなか難しい話です。

ただマテリアリティは、CSRという超広大な概念における「経営者の自由裁量の余地」がオフィシャルに存在するという数少ないCSR戦略の一つです。社会におけるほとんどのことに対して企業に決定権はありませんが、マテリアリティの名の下に企業が社会との関わりを選べる、と言うこともできます。

つまり「マテリアリティ報告を行う組織」がマテリアリティを決めてよい、ということです。良いか悪いか別として、最悪、ステークホルダーの意思なしで企業サイドでマテリアリティは決めてもいいとなっています。

逆に、ステークホルダーにとってのマテリアリティは「特定の意思決定に影響を与えうる情報」ですよね。投資家であれば「投資判断に影響を与えうる情報」です。場合にもよりますが従業員であれば「転職をするかしないかの判断に影響しうる情報」などとなるかもしれません。これは「GRIスタンダード」でも出てくるマテリアリティの考え方です。

ちなみにIRフレームワークでのマテリアリティの定義は『組織の短、中、長期の価値創造能力に実質的な影響を与える事象に関する情報を開示する。』となっていて、GRIとは異なるので注意しましょう。価値創出と時間軸が中心概念です。

ISO26000などでは明確に定義されていますが、CSRとは「社会に及ぼす影響への責任」であり、CSR報告は「自社へのリスク・レポート」ではなく、自社の「社会へのリスク・レポート」なのであります。読者がステークホルダーなので当然ですね。これを理解していないCSR担当者や制作会社の方は結構います。

関連記事

マテリアリティ特定プロセス–国内の社会情勢を反映する意味
国家施策としてのCSR推進–国内のマテリアリティ動向
CSRにおけるマテリアリティの特定・分析に必要なWhyとは
CSRマテリアリティの特定と分析は42%の企業しかできていない
CSRのマテリアリティ設定・導入による考え方について

まとめ

今、マテリアリティ特定で支援させていただいている企業もいるので詳細は控えますが、まだ決めていない、もしくは今ブラッシュアップをお考えの企業は、早急に対応されたほうがよいと思います。

状況によっては1〜3年かかることもあるでしょうし、ある程度先を見据えて、行動していきましょう。動けないのであれば、現状分析の第三者評価くらいはいれたほうが良いと思います。

マテリアリティの先に素晴らしい社会が待っていると、ステークホルダーを信じさせていただきたいものです。社会が存在し続けてこそ(サスティナブルであればこそ)、自分たちが存在できるという前提を今一度思い出そうではありませんか。



執筆者:安藤 光展[→プロフィール詳細]

■CSRの現状分析で、お困りではありませんか?
CSR企業評価の専門家による「CSRウェブコンテンツ」および「CSR報告書」の第三者評価・分析プログラムを実施しています。CSR情報開示における課題抽出から解決案の提示までをサポートし、企業価値および外部評価機関の評価向上、ステークホルダー・エンゲージメントやUI/UXの向上、などのヒントが得られます。

>>第三者評価


csr