CSRにおけるエンゲージメントには広報が効く?

CSRエンゲージメント

CSRとエンゲージメント

中堅〜ベテランのCSR担当者と話をしていると、CSR活動がある程度進んだ企業で課題になるのは「マテリアリティ」と「エンゲージメント」だなと感じています。毎度、この話題が出てきます。

マテリアリティとは経営戦略にCSRを組込むプロセスであり、エンゲージメントとはステークホルダーとのコミュニケーションのことです。つまり、CSR活動を一通り行っている企業の次の課題は、「経営戦略」と「コミュニケーション」であるとも言えます。2000年代前半からCSR活動を積極的行なう企業においても、この2点を完璧にこなしている企業はありません。たしかに厄介な領域です。

ちなみに、呼び方は色々ありまして、一番多いのは「ステークホルダー・エンゲージメント」だと思いますが、「ステークホルダー・コミュニケーション」、「ステークホルダー・リレーション」という表現をする企業もあります。ほぼ同義語なので、CSR関係者は特に、ステークホルダー・エンゲージメントで統一すればよいでしょう。

というわけで、今回は2点の大きな課題のうちコミュニケーションのほうについて最新情報を交えながらまとめます。

広報視点のステークホルダー

では、その本来、企業の社内外コミュニケーションの軸となるべき広報の新しい動きを見てみましょう。

第2回 企業広報力調査』(企業広報戦略研究所、2016)によれば、「強化したい広報活動」のランキングは、1位「中長期的広報戦略・広報計画の作成」、2位「競合企業の広報戦略を分析し、対策をとる」、3位「ステークホルダー別に獲得した評価や戦略を設定する」となっています。
3位の「ステークホルダー別に獲得した評価や戦略を設定する」は、僕がよく言っている重要事項なので当ブログの読者はすでにご存知かと思いますが、広報でもこういうステークホルダー視点の話題が出てくるようになったんですね。

また調査では、「重要なステークホルダー」についての項目では、『前回調査と比較すると、「従業員とその家族」が14ポイントも上昇しています。背景として、「働き方改革」「ダイバーシティ」などの社会環境に加え、企業の海外進出、M&Aやホールディングス化などが、影響を与えた可能性が考えられます。』としています。
そして業務内容としては、『中でも上昇したのが「社内活性化」、「危機管理」、「CSR」となっており、企業の広報機能として社内向けの取り組み、従業員意識も含めたコミュニケーションについてもミッションが拡大する傾向がみられています。』とのこと。

つまり、ここ数年、CSRコミュニケーションだ、ステークホルダーエンゲージメントだと、CSR担当者がもちゃもちゃしていましたが、CSR的視点のエンゲージメントの重要性(必要性)に気付いた企業は(知っていたけど無視してた企業は)、広報部門もエンゲージメント促進のプレイヤーに加わっているということが言えます。

CSRエンゲージメント

CSRエンゲージメント

参照:電通PRの企業広報戦略研究所が 『第2回 企業広報力調査』結果を発表

重要なステークホルダーである従業員

では、上記の調査にもありましたし、僕もCSR担当者のヒアリングで感じている重要なステークホルダーである「従業員」のエンゲージメントについてまとめます。

フォーブス「あなたの会社の従業員エンゲージメント、下がっていませんか?」という記事では、従業員エンゲージメントを促す企業の戦略はあまりうまくいっていないという。そして、その調査において「回答者の大部分が同意した“従業員の満足度を高める要素”は6つある」としており興味深いので紹介します。

1、経営陣が組織をいい職場にするために熱心に取り組んでいるという確信
2、経営陣の指示を信頼している
3、会社が将来成功すると信じている
4、経営陣が人材こそ一番の資源と感じているという確信
5、その組織が出世と成長を遂げるのに適した場所であること
6、経営陣が将来、企業を成功に導いていくこと

6つのはポイントに注意するとしても別の課題もあります。従業員が増えれば増えるほど、通常は多様性が生まれるはずで、従業員の中でも大きく性別・年齢などでも差が出てくる。つまり、1つのエンゲージメント方法で課題解決することは不可能であるということです。ここは記事でも指摘されています。

同じステークホルダー(ここでは従業員)の中でも多様な人がいることを理解し、エンゲージメントの自然なグラデーションを壊さぬよう、丁寧なコミュニケーションが必要になるというわけ。

社内外のステークホルダーも同様で、は組織規模が大きくなればそれだけ幅広くなってきます。しかし、CSR報告書や統合報告書で、CSR情報(非財務情報)を伝えた気になってはいけません。特に上場会社はですが、企業は特定のステークホルダーごとに、エンゲージメントをしなければなりません。

コミュニケーションにおいては、CSR担当者はディレクションをする立場にまわり、広報をサポートするポジションにいたほうが、企業全体の費用対効果というか効果・成果はでやすいのかもしれません。

2010年代前半は「CSRコミュニケーション」と言っていましたが、これは企業視点での概念であるため、今後はより成果を求めて相手側の視点ということで「ステークホルダー・エンゲージメント」という表現が使われるようになるんでしょう。

まとめ

結論としては、僕が以前から言っている通り、今後のステークホルダーエンゲージメントのトレンドは間違いなく「ステークホルダー別の目標設定とアクション」です。問題は、社内のどの部署と統合思考のもと実践をするのか。強力なリーダーシップのある人がいないと、空中分解しそうです。

広報、IR、人事などの、様々な社内外のステークホルダーとコミュニケーションをする部署と連携をして、それぞれエンゲージメントしていきましょう。そうしたステークホルダーごとにカスタマイズしたコミュニケーションがエンゲージメントを生み、成果につながり、全体最適として企業価値向上につながっていくのです。

3R(PR/IR/CSR)部門の連携がCSRコミュニケーションには重要と言ってきましたが、従業員への施策も踏まえ「人事」(HR)を加えた4R(PR/IR/HR/CSR)の垣根を超えた業務フロー構築が、成果へつながるポイントなのかもしれません。そもそもコミュニケーション活動を含め、CSR活動はCSR関連部門が対応すればいいのではなく、旗振り役となり社内外にCSRを浸透させる役目がCSR担当者です。

ということは、結局まず企業がすべきことは「マテリアリティ」(重要項目特定→ステークホルダー特定)と「バウンダリー」(事業影響範囲の特定→ステークホルダー特定)の精査・見直しですね。一周してまたマテリアリティの話に戻り、非常に重要な概念だなと再認識したところで、今回は終わりとさせていただきます。

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筆者プロフィール安藤光展/CSRコンサルタント
1981年長野県生まれ。CSR/SDGs経営の専門家。著書は『創発型責任経営-新しいつながりの経営モデル』(日本経済新聞出版社、共著)ほか多数。日本最大級のCSR担当者コミュニティ「サスネット」主宰。

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安藤光展のプロフィール
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