CSR地域活性化

地方創生とCSR

CSRにおいて、地域コミュニティへの貢献という形で地域活性化に取り組む企業がたくさんあります。

主要ステークホルダーの一つでもある「地域社会」とは、NPOなどのコミュニティだけではなく、物理的なエリアを指すこともあります。

そういった時の文脈ですと、地域活性化の効果が「人口の増加」という焦点になったりしますが、極端な話、日本の人口が毎年数十万人減っている現在、特定地域の人口が増えるということは、他の地域の人口が減るということを意味します。

誰が悪いということはありませんが、地域間の競争の結果、住民を奪われた(?)地域はどうなってしまうのか…。なかなか難しい問題です。

では、地域経済の担い手である企業はCSRを含めて、地方創生や地域活性化にどのように取り組めば良いのか。事例をいくつかまとめならが考えてみましょう。

衰退した地方のインフラコスト

夕張市はかつて映画「幸せの黄色いハンカチ」でも有名な炭鉱の町として栄えた。閉山によって労働者たちが住んでいた団地はほとんどが空き家になったが、住人が1人でもいれば市は水道などのライフラインを維持しなくてはならない。
これに対し夕張市は「コンパクトシティ計画」を打ち出し実行中だ。広く分散している空き家の多い住宅を、市の中心に20年かけて集約。市役所や商店を一か所に集めることで市民は暮らしやすくなり、市は維持管理費を削減できる。
人口減少時代のモデル、夕張市「コンパクトシティ計画」 20年かけ住民集約実行中

地域の大きな課題が「インフラコスト」です。最寄り駅からかなり離れている数世帯のエリアのために電気・ガス・水道・下水をひかなければならない。例え1軒でも家があればそうせざるを得ません。状況にもよりますが、そのコストは数百万円から数千万円ともいわれています。100軒のために1,000万円のコストをかけるのと、1軒のために1,000万円のコストをかけるのはわけが違います。

本当に残念ですが、背に腹は変えられないので、資金力のない地域は、夕張のように引越を促したりしていき、住環境の整備をしていくことが必須です。

問題は企業がこのような状況の時にどうすべきか、ということ。答えはありませんが、どこまで、地域にコミットメントをするのかという点は明確にすべきでしょう。

この問題を社会資本という視点でまとめた『社会資本は、人口減と将来世代負担を考えよ 日本創成会議の提案に欠けている視点』という記事も興味深いのでぜひご一読を。

中小企業によるCRSV推進

CRSV(Creating and Realizing Shared Value)とは、米国の経営学者であるマイケル・ポーターが提唱した「CSV:Creating Shared Value(*)」という考え方を踏まえて、中小企業庁が「2014年版中小企業白書」において中小企業の経営概念として提示したものである。同調査においては、企業の社会性概念の変遷を整理するとともに、このCRSVを地域志向の新しい社会性概念として検討した。
地方創生を占う“CRSV”への取り組み

また、次々と新しい概念をぶちあげて・・・CSVとCSRとの差も明確ではないし、どうやって広めていくのでしょうか。でCRSV(Creating and Realizing Shared Value)は、

地域に根ざした中小企業・小規模事業者でなければ解決困難な地域課題解決への取組であると同時に、その取組により、地域課題を解決する中小企業・小規模事業者、その地域課題解決の恩恵を受ける地域住民が互いに支え合うことにより生まれる好循環に向けた取組

というような解釈をされており、地方創生の流れで、改めてソーシャルビジネスの重要性が認められてきているように感じています。大企業というよりは中小企業の経営概念としてまとめている所がまた興味深いですね。

ソーシャル・インパクト・ボンドと地域振興

ソーシャル・インパクト・ボンドとは、投資家(篤志家、財団等)から調達する資金をもとに、行政から委託を受けた民間事業者が行政サービスを提供し、事業の成果に応じて行政が投資家に資金を償還する仕組みである。主に予防的措置、早期介入の分野に向いた仕組みで、予防、介入しなければ将来的に発生したであろう行政支出の削減分が投資家への償還資金の原資となっている。
ソーシャル・インパクト・ボンドを活用した地域振興を考える

地方銀行のCSRとしての可能性もありますね。すでに横須賀などでソーシャルインパクトボンドを活用した取組みも始まっていて、日本全国で2015年内に様々なパイロットプログラムが実施されると聞いたことがあります。課題はあるものの、仕組みがうまくまわれば、地域の社会課題に二の足を踏んでいた地方自治体が一気に動く可能性があります。

企業は関係ないこと?と一見思うのですが、実は公文が、企業のR&DやCSRとしても実行し始めているみたいですよ。(参照:SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)調査事業が経産省委託事業として採択

上記引用記事もしっかりとしたレポートなので、興味があれば見ていただきたいですが、G8インパクト投資タスクフォースの「ソーシャルインパクトボンド(SIB)の紹介」という記事もわかりやすいので、ご参考までに。

このあたりは、かなり深い話もあるので、別途記事化してみます。

まとめ

結局、色々な情報をまとめて思うのは、企業のソーシャルビジネスの可能性についてもっと議論すべき、ということかな。

2011年以降、日本でのソーシャルビジネスというと東北の東日本大震災とどう絡めるか、という話題が多かったですが、その方向もありながら、今後は東北だけでなく日本各地の地方の市町村で、地元・企業(大手企業の支店を含む)を中心にどういう形で通常の事業活動結果を地域に還元できるかを考えるべき。

海外でのインクルーシブビジネス(BOPビジネス)だけがソーシャルビジネスではありませんから。

冒頭でも申し上げた通り、毎年、日本の人口が数十万人減っている現在、地域の人口が増えるということは、他の地域の人口が減るということを意味します。

地域コミュニティが盛り上がり、人口という指標以外で何かしら地域住民の満足度や経済が盛り上がればいいのですが、ソーシャルセクターの一部で盛り上がる地方移住を含めて、より議論される環境が必要なのかもしれません。規模の大小を問わず、「つながり」を双方が感じられる(=エンゲージメントしてる)状態を目指したいものです。

関連記事
注目される地方創生とCSR、企業の地域貢献は何を目指すべきか
衰退する地方都市で、企業はCSR活動による地域活性化に取組むべきなのか
原発の中で考えた、東日本大震災と企業の社会的責任